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【取材日記】 父と娘の再出発

2013年04月26日(金)

虐待によって引き離された親子は、その後どうやってやり直していくのか。

4月某日、大阪で、かつてネグレクト(育児放棄)によって娘を保護され、
今再び一緒に暮らし始めている男性と会いました。



こんにちは、PD1号です。
今回は、一度はネグレクト(育児放棄)によって子どもと引き離されたものの、
再び一緒に暮らし始めている男性に話をうかがいました。

男性の名はみやさん、47歳。
7年前、事情があって、みやさん一人で娘2人を育てることになりました。
当時娘は4歳と6歳。突如始まった父子家庭の生活。
子育てとは何をどうやったらいいのか、全く分からなかったといいます。

育児って何?っていう感じで・・・。
ただそばにおればいいだけやないんやって。


miyasan.jpg
今では娘のために毎朝弁当を作る日々

 

 

小学校に入る前の子どもを置いて平気で仕事に出ていたというみやさん。
お父さんがいない間、娘はふらふらと外を出歩き、たびたび警察に保護されました。
最終的に児童相談所に保護され、施設に入所することになったのです。


突然子どもを連れ去られたと感じたみやさんは、
児童相談所に強く抗議して子どもを返せと訴えたといいます。
しかし、何度言っても今のままでは帰せないと言われ先に進みません。


一体どうしたら子どもと暮らせるのか?


あきらめて担当者にたずねたところ、
1年間に及ぶ「家族再統合プラン」を示されました。
最初は会うこともできず、子どもがどこにいるかも教えてもらえないが、
経過を見て3カ月ぐらいから子どもとの面会を開始。
それが2~3回うまくいけばちょっとした散歩など外出ができるように。
6か月こえたら子どもが一時的に家に帰ってくる「一時帰宅」。
10か月を過ぎたら子どもが家に泊まる「外泊」ができる。


このプランを先に進める条件として参加するように言われたのが、
このブログで前にも紹介した「男親塾」。
虐待した父親たちが自らの過去と向き合うグループミーティングでした。


男親塾に参加してカードに「ハンコ」を押してもらうのが
子どもと面会できる条件だったため、
最初はただハンコをもらいに行っていたというみやさん。
同じような経験のある人たちと話すうちに気持ちが変化したといいます。


これまで全部自分の都合でやっとったって気づいたんです。
自分の都合が悪いと子どもを怒り、
機嫌がいいと「よし買い物に行こう」と連れ出したり。
子どもの目線で見るってことをしてへんかったことに気付いたんですよね。


その後、1年間のプランを順調にこなしたみやさんは、
翌年、無事に再び2人の娘と一緒に暮らし始めました。
ワンルームの狭い部屋から引っ越し、
それまでなかった洗濯機を買い、家庭用品をそろえての再出発でした。


それから6年。この4月、上の娘が中学校に入学。
給食がないため、毎朝娘のために弁当を作る毎日だといいます。


子どもと一緒に成長していけばいいと思って。
親をするのは、初めての経験なわけだから。
娘が保護された時は、“父親の赤ちゃん”だったのかな。
この6年で、小学生中学生、高校生ぐらいにはなったかな。
この先も娘と一緒に大きくなれればと思うよ。
どんなにダメな親でもちょっとずつ変われるんやってこといいたいね。


虐待した親と被害を受けた子どもが再び一緒に暮らすのは、
みやさんのようにうまくいくケースばかりではないのが現実です。
変われる親も、変われない親もいるかもしれません。


でも、そういうチャンスが与えられる場は、
とても大事ではないかと感じました。


もちろんその一番の目的は、親の都合よりも、
「その子にとって何が一番幸せなのか」
であることを忘れてはいけないと思いますが。

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みやさんが娘さんとの「家族再統合」の際に参加した
「男親塾」という虐待してしまった親たちのグループミーティングについて、
5月6日(月)放送の番組でご紹介する予定です。

ハートネットTV シリーズ子どもの虐待 どう救うのか?
「第1回 深刻化する虐待 児童相談所はいま」
5月6日(月) Eテレ 夜8時

 

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