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小さな命へのまなざし 14歳の俳人 小林凜

この放送回の番組まるごとテキストを掲載しています

  • 2015年12月15日(火曜)再放送2015年12月22日(月曜)

小林 凜さん (俳人)
日野原 重明さん(医師)
声の出演(日野原さんの手紙朗読):阪 脩さん
ナレーション(ウーパールーパー):Chikoさん

小さな命へのまなざし 14歳の俳人 小林凜 の番組概要を見る

(VTR)

満月や
地球のかけら
輝いて

木枯らしを
知らずたゆたう
ウーパーよ


ふわ~
これはウーパールーパーのぼくを詠んだ俳句。
つくったのは僕の飼い主。
生き物が大好きな14歳の俳人。
小林凜(こばやしりん)。

手の平に
小さな命
春の使者

小林:すごい小さいじゃないですか 虫って。でもそれがそんな細い、足も細くて体も小さいそんな生き物が、そんなんが、その一歩踏み出して生きて歩いているって事がすごい不思議で感動して。

ぼくは凜のことならなんでも知っている。
944グラムで生まれた凜。
体が弱く、いじめにもあった。
でもかなしいときもうれしいときも俳句があった。

尺取虫
一尺二尺
歩み行く


いじめられて学校を休んでいます。
道で尺取虫に出会いました。
人生あせらずゆっくり行こうと思いました。

小林:もう、俳句を作るってことがそのときの僕の唯一の喜びだったんです。もう俳句がもう光りって感じでした。

凜の俳句はたくさんの人から愛されているんだ。
104歳の医師、日野原重明さん。

小林:まあ凜君に会わなければ俳句なんかやってなかったですから。
104歳の僕はね、そのひらめきにぼくはこう、おっと。

小林:え、ついた。
おお。

秋の蝶
我が手離れて
己が道


小さな命へのまなざし
14歳の俳人 小林凜

(VTR)

凜は、おかあさんが仕事にいっている昼間、おばあちゃんと過ごしている。

祖母:できあがり?

小林:完成です。

祖母:おいしそうですね。
きょう朝日俳壇や。

2人が毎週楽しみにしていることがある。
それは俳句の投稿欄。

祖母:これなんて読むの?よう読まん。

小林:「生きていくことが仕事だ敬老日」

祖母:分かる?

小林:うん。

祖母:おばあちゃんや。
「生きていくことが仕事だ敬老日」。
それでいいねんな。おばあちゃんも。

凜は中学2年生。
でも学校に通っていない。
小学5年生のとき不登校になった。
中学校は通い始めて2ヶ月で行けなくなった。

取材者:学校に行きたいなって気持ちはあるの?

小林:たぶん嫌な思い出増やしに行くだけですね。

取材者:凜君はどういう学校やったらいきたいと思う?

小林:あんまりそんなに多くないかもしれませんけど、その平和そうないじめだとか、殴られるとかがない、先生も普通にいい人でっていうかんじの平和な学校ですね。
殴り合いも凄かったんですけど、もう死ねとかあほとか女子も男子も誰彼かまわず言ってましたね。

いじめられ
行きたし行けぬ
春の雨
(凜11歳)

小林:学校に行ってると何か知識を得るというより、逆に得るものが無いというか、逆に奪われていってるって感覚でした。

凜を力づけてくれるのは生き物たち。

小林:えらいおとなしいな。
えらいおとなしいな。

取材者:すごいやん。

小林:休んでるみたいです。よっぽどどっか遠いところから飛んできたんでしょうね。
で、あそこにも一応クモがいるんですよ。えらいでかい巣はってるな。これたぶん虫じゃ無くてもうごみしかかかってない。ガリガリですよ。
これメスなんですけど本当はもっと太いんです。
で、むこうでなんかやってるのがオスです。ま、特に何もしませんけどね人間には。

凜は自然の中で過ごすのが大好き。

小林:人間以外のなんか平和な存在に囲まれてるって感じですかね。僕にとってですけど。
いたたたた。
僕より小さな生き物でもこんなに立派に生きてるんだと思って。
一歩踏み出して生きて歩いていることが不思議で感動して。

蟷螂(とうろう)や
鎌下ろすなよ
吾は味方

蟻(あり)の道
ゆく先何が
あるのやら

冬の蜘蛛(くも)
助けていつか
銀の糸


5歳で始めた俳句は800を超えた。

熟れざくろ
割れて
魂解き放つ

取材者:お出迎えしなくちゃ・・・・
お帰りなさーいー。

小林:ただいまー。

凜のお母さんは学校の先生をしている。

祖母:あ、おつかれさん。

母親:ただいま帰りました。
どこまでできたん?

お母さんは毎日勉強の計画を作ってくれる。

母親:これできた?社会科。
朝何作った?

小林:フレンチトースト。

母親:フレンチトースト。
学校に本人が行ってないので教科書に沿った勉強の内容になるように計画を立ててやるようにっておいていってます。

お母さんは、いつも凜のことを一番に考えている。
予定より3ヶ月早く944gで生まれた。

母親:命がまず持つか3日まって下さいと言われて。
あのベッドの上で1日たった2日たった3日たったって本当にもう数えて。
祈ってるしかできなくて。うーん。

凜は、がんばった。
一生懸命生きた。

母親:でもこの子ね、本当にミルクをはかない子だったんですよ。
体に入ってきた栄養は全て吸収してやるぞみたいなぐらいのかんじで。
この子の生きる力、生きようとする力だったのかもしれないです。

凜は一歩一歩、自分の力で前に進んでいる。

母親:学校でいじめられて辛いことがあっても、もうとにかく学校にいってなくてもいいし、そんな学校で経験できることができてなくても、家にいて私のそばで元気でいて笑ってくれてたらもうそれでいいって。

(VTR)

祖母:秘密兵器。

小林:これでもちょっとまだ危ないんですよ。

去年、お母さんより背が高くなった。

小林:香辛料が全部行き届くように混ぜたらふたをします。それでここでCMを入れて。

母親:はいじゃあCM。

祖母:いただきます。シェフの力作。いかがでしょうか?
凜ちゃん?

小林:極上の逸品。

祖母:もう一回言って。

小林:極上の逸品。

凜が、たくさんの落ち葉をひろって帰ってきた。

小林:今作ったばっかりなんですけど「いろかたちみなそれぞれの落ち葉かな」
落ち葉には色んな色や形があって人もそれと同じように個性があるってこと。

俳句の仲間に送るんだって。
その相手は104歳の日野原重明さん。
98歳で俳句を始めたんだって。
文通をはじめてもう4年になる。

先生
今日散歩道で
落ち葉を拾いました。

一枚一枚全部異なる美しさです。

お目にかかる時は変色しているかもしれませんが、我が町の落ち葉をお送りします。

小林:すみません。お願いします。

おじさん:はい、どうも。ありがとうございます。

2人はこれまで40通以上手紙を交わしてきた。
去年、織物教室に通い始めた凜。
日野原さんの誕生日に手作りのマフラーを贈った。

凜君
君からもらった「さをり織り」を私の首に巻きました。
私は乗馬クラブに行き生まれて初めて馬に乗りました。
青空を仰ぐとガッツポーズをしたくなる。

凜は、学校でのいじめのことも手紙に書いた。

忘れないでいて欲しいことがあります。
うれしいときだけが”きみ”ではありませんよ。
どんなときの自分も大事にすること。
生まれてきたことは、それだけで素晴らしいことです。
「君たちの
使える時間
それがいのち」

この秋、凜は日野原さんの自宅に招かれた。

母親:緊張してるの?

日野原夫人:はーい。ようこそいらっしゃいました。どうぞ~。

母親:先生こんにちは。

日野原:ああいらっしゃいしばらくですね。君はずいぶん背が高くなったんでね。きょう一番先にしたいことはね。
あなたの身長はかりますから。ここへきて。ちょっとここへ来て。

日野原夫人:いいですか?足を閉じた方がいいんじゃない?ぐうっとね。
胸をはってー背中をのばして下さい。
はい、パパも縮みましたね。
163.8。で、先生が158.5です。5.5cmの差があります。

日野原:これから君はますますのびるね。きっと背がのびるよ。
そこに座ってごらん。
これツインベンチっていって好きな人が一緒にここに座って、座る椅子なんですよね。
紅葉してますけどこれはハナミズキ、それからあそこにざくろがいっこありますね。
それで横にある木は百年以上の古い。
私の家内の実家からよった。とちのき。
まっすぐにある高い木ありますね。
この紅葉しているあれがずうっと夕方にはたくさん落ちてくるんですよね。
君から紅葉した葉っぱをはさんで私の手紙の中にいつか送ってくれたんですが、
これを見ているといくらでも俳句が出てくるように思うんですよね。
「凜君よ空高くのびし、竹の如(ごと)」
ずっとこれから君の身長は1年の間にのびて、竹の青竹がのびるようになる。
もう一度空見てごらんなさい。
日本晴れっていうんですけど、本当の秋晴れね。今日は。
そして、君がますます青竹のごとくずうっと背が伸びていく。
その姿を見るとねえ、僕もずっと元気に生き続けたいという気持ちがありますね。
君のこれからの。君をおっかけて。
君は104歳の僕と出会って、そして俳句の世界に一緒にですね、生きることはこれまた最高じゃないでしょうか。

2日後、日野原さんへ俳句を詠んだ。

実ざくろや
百四の師と
背くらべ

小林:生きていることで・・・うーん。
生きていれば自分のことを分かって助けてくれる人がきっと見つかるって。
向こうまで。

母親:向こう?小学校?小学校までいっても・・・。

この日の散歩。
いつもと違う場所に向かった。

母親:珍しいねここまで来るの。どこまで行きますか?

小林:最近まったくこなかったんであれからどうなったかなと思って。
でもすごい平和になってますね。まあ日曜日だからそりゃそうなんですけどね。誰もいないから。

母親:ただいま。

祖母:おかえりまっくらでしょ。

母親:凜が向こうまで行きたいって。

祖母:すみちゃんお帰り。ご飯あげようね。
すみちゃんの茶碗はどこかな?

だんじり祭。
凜は毎年、遠くから眺めているだけだった。
でも今年は違った。
会いたい人がいた。

取材者:小6のときはけっこう遊んでたの?みんなで?

小林:こういうの見ると懐かしいようなってくる。みんなでよく虫とりしたんです。
もう2,3年会ってないんじゃないでしょうか。

会いたいのは、小学校の時の同級生。
いじめにあっていたときも一緒に遊んでくれた。
あ、友達を見つけた。

御輿軍団:また今年みたいな祭りずっと皆一緒にやろうや~
おお~そーりゃーそーりゃー

小林:久しぶり。

友達:元気?久しぶりやな。最近何やってるん?

小林:最近?俳句よんだり本も読んでる。

友達:元気やな。

小林:また遊びに来てな。

友達:また行くわ。

母親:長いこと会ってない。

小林:卒業以来よりも長いやんな。ずっと前にクラスが分かれてそれっきりやったよな。

友達:体操やってる。

友人が一本あげるよと言って冷えたジュースを僕にくれた。
僕は喜んで「ありがとう」と言った。

だんじりや
皆の青春
乗せて曳く

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