本文へジャンプ

シリーズ 依存症 第1回 治療・支援への長い道のり

この放送回の番組まるごとテキストを掲載しています

  • 2014年11月11日(火曜)再放送2014年11月18日(火曜)

出演者
東 ちづるさん(女優)
月乃 光司さん(「こわれものの祭典」代表)
上岡 陽江さん(「ダルク女性ハウス」代表)
松本 俊彦さん(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
ナレーション
河野 多紀さん

シリーズ 依存症 第1回 治療・支援への長い道のり の番組概要を見る

深刻化する依存症

やめたいのにやめられない。
社会が生きづらさを増す中、依存症に苦しむ人が増えています。
今年6月、厚生労働省が公表したデータによれば、アルコール依存症の患者は、推計で100万人を突破。

男性:最初の一杯飲んじゃうと、もう止まらない。
常に飲み続けてないと、自分を保てないような、なんかこう不安と恐れがものすごい襲ってきて。

ギャンブル依存の疑いがある人は、536万人に上っています。

インターネットに依存する人も急増。
その数は400万人を超えると見られています。

危険ドラッグによる事件や事故も相次ぎ、依存を巡る問題が社会を大きく揺るがしています。

一方で、治療や支援を受けている人は、ごくわずかです。
依存症に対する偏見や誤った理解が、回復をはばんでいます。

(買い物依存に悩んできた女性)

女性:やばいと思ったけれども、意志の問題だと思ってたんですね。

取材者:相談に行こうと思ったりとか、そういうことはなかったですか?

女性:なかったです。医療機関、とは全然考えもひらめきもしませんでした。

「シリーズ依存症」。
第1回は、治療や支援につながる事ができていない実態と、その背景を見つめます。

(VTR終了。スタジオでトーク。)

山田:こんばんは。「ハートネットTV」です。
今週は、アルコール関連問題啓発週間です。
そこで、今日から2日間にわたってアルコール依存症を中心に、依存症について考えていきます。
第1回は、依存症の問題が深刻化する一方で、苦しんでいる人が治療や支援に結び付いていないという現状について。
そして第2回は、どうしたら依存症から回復できるのかについて考えていきます。
ご一緒して頂くのは、女優の東ちづるさんです。
よろしくお願いします。

東:よろしくお願い致します。

山田:東さんは、お父様がアルコール依存症だったそうですよね。

東:そうですそうです。
父本人が47歳の時に体調を崩して、アルコール依存症と診断をされて、もちろんドクターストップ。
本人もやめたい、でもやめられない、家族もやめてほしい、やめられないっていう…。
本人はもちろんね、家族も大変でした。もう15年間、入退院を繰り返しましたね。

山田:ちょっとこういう数字があるんです。ご覧下さい。
アルコール依存症の場合なんですが、今年発表された厚生労働省の研究班の、最新の調査なんです。
全国の患者数は推計で109万人。
一方で、現在治療中の人は8万人。
ですから、治療が必要なのに受けていない人が多い、ということが分かるんですよね。

東:少ないですね。
回復できるのに、治療法があるのに、っていっても、うちも無知で治療は受けられなかったんですけどね。

山田:そういった現状についてお伝えしていきたいと思います。
一体何が、治療・支援につながるのをはばんでいるのか。
アルコール依存症の、ある男性の事例から見ていきます。

何が“治療”をはばむのか

(VTR)

大手電機メーカーで、エンジニアとして働いている、笹井健次(ささい・けんじ)さんです。
かつて、アルコール依存症に苦しむ生活を送っていました。
しかし、治療を始めたのは、自らの異変に気付いてから10年近くも後のことでした。

健次さんが異常な飲み方をするようになったのは、20代の後半。
飲み屋を何軒もはしごし、朝までお酒を飲み続けることも珍しくありませんでした。

健次:最初の一杯飲んじゃうと、もう止まらないっていう感じがあって。
酒が入れば入るほど、どんどん加速していって、何かもう酒が無くなる、飲めなくなることが、ちょっとした恐怖感というか。
常に飲み続けてないと自分を保てないような、何かこう不安と恐れがものすごく襲ってきて。

30歳を過ぎた頃には、お酒が切れると手が震えるようになりました。
典型的なアルコール依存症の症状です。
そんな時、会社の健康保険組合からある冊子が配られました。
そこには、アルコール依存症かどうかをチェックするリストがあり、思い当たる項目がいくつも見つかりました。

しかし、健次さんは見て見ぬふりをしました。
自分がアルコール依存症だと認めることに、強い抵抗感があったからです。

健次:(アルコール依存症は、)屋外で生活をしてたり、電車の駅とか公園のベンチで寝泊まりしているような感じで、常に酒瓶を抱えているような、何かそんなイメージがあって。
人間のクズがなるものだというふうに思ってて、俺はクズじゃないと。
大学も出てるし、サラリーマンやってるし、家族も持ってるし、俺は違うと思って否認してました。
それを認めてしまうと、自分は本当に最低の人間になってしまうと思ってたので、とてもじゃないけど認める訳にはいかない、という感覚でした。

そんな健次さんに、家族は翻弄されました。
妻の理美(さとみ)さんです。
酔いつぶれた健次さんを店まで迎えに行くこともしばしばでした。

理美:近所の人から言われるのが一番嫌だったんです。
「お宅の旦那さあ」とか言って「あそこでね、飲み屋で、すごい暴れてはいないけどすごかったよ」みたいな噂が聞かれたり、っていうか聞いたりして。

しかし、健次さんがアルコール依存症かもしれないと疑ったことは、全くなかったといいます。

取材者:どこかに相談しようとか、行こうとか思ったことはなかったですか?

理美:ないです。

取材者:それはなぜですか?

理美:う~ん何でかなあ?
病気だと思っていなかったので。
お酒がひどい人というのは、それはお酒を飲み過ぎただけなんだって、私は勝手に思ってて、病気とは全然関係ないものだと思ってて、だから依存症っていう言葉を聞いても、全然違うんだなって思ってたんだと思います。

アルコール問題を抱える人の家族を対象にした調査によれば、家族が問題に気付いた時の本人の平均年齢は、41.8歳。
その後、病院などに初めて相談した時の年齢は、47.2歳でした。
異常を認識してから、5年以上もかかっていました。
その理由としては、「どこに相談したらいいのか分からなかった」という答えが7割近くを占め、健次さんのように「アルコール依存症に対する偏見があった」という回答も4割を超えました。
※出典:アルコール・薬物問題を持つ人の家族の実態とニーズに関する調査 2008年

健次さんがようやく治療につながったのは、36歳の時。
通勤途中に交通事故に巻き込まれ、病院に運び込まれたことがきっかけでした。
飲酒に伴うさまざまな異常を自覚してから、10年近くが過ぎていました。

“治療”への長い道のり

(VTR終了。スタジオでトーク。)

東:何か身につまされるというか。
まるでうちの家族を見ているような。
あの…病気という発想がないんですよね。
アルコール依存症は病気です、っていうふうにだんだん、こう浸透してきた時にも、病気という美しい言い方に変えてくれてるんじゃないかと思ったぐらいなんですよね。

山田:では、なぜ治療や支援につながることができないのか。
スタジオには、自らも依存症を経験して、現在は依存症をはじめとする、さまざまな生きづらさを抱える人たちをサポートしているお二人にお越し頂きました。
VTRご覧になってどんなことを感じましたか?

(「こわれものの祭典」代表 月乃 光司さん)

月乃:いや、やっぱりすごく共感することが多くて、健次さんですけれども。
健次さんが最後、交通事故を起こすことによって治療につながったみたいなお話だったんですけど、私がまあ治療につながったのが、私はちょっとメンタルにうつ症状とかいろいろあって、自殺未遂をして病院に担ぎ込まれたんですよね。
でも入院した当時は、診断して、どうもアルコールに問題があるからっていうことで、アルコール病棟っていうとこに移されたんですけど、なかなか自分が病気だとは認められなくて。
そんなことが、すごくあったような気がします。

山田:どういう心境だったんですか?なぜそう?

月乃:やっぱり「アル中」っていう言葉と、そのネガティブなドラマに出てくる何かありますよね?
ステレオタイプの、酔っ払って暴力振るう粗暴なお父さんみたいなイメージと、自分が違うっていうことで、やっぱりアルコール依存症じゃないっていうか…と思いたかったですね、すごく。

東:やっぱり何か恥ずかしいというか、人格を否定されるような感じになっちゃうこともね。

月乃:そうですね。

山田:上岡さんいかがですか?

(「ダルク女性ハウス」代表 上岡 陽江さん)

上岡:私は、アルコール依存の治療って始めたのは26歳の時だったんだけれども、それに至るまでね、実はね、5年かかってる。
だからね、21歳の時に既にもうどうにもならない状態で、それはやっぱり恥とかすごくあった。
女だし。例えばね、これで今、私、子どもがいるから、今だったらね、女だし母だし妻だしとかっていうと、もう本当に依存症なんてありえないっていうふうに、まあそのころ思ってたし。
私はね、社会から落ちたと思ってたからね、そのころ。

山田:社会から落ちた。

上岡:うん本当に。
もう自分の人生は全部終わったって思った。

山田:では、ここからは依存症の問題に詳しい、精神科医の松本俊彦さんにも加わって頂きます。
よろしくお願いします。

松本:よろしくお願いします。

山田:治療や支援につながるまで時間がかかるっていうことって、これはどういったことが問題になってくるんでしょうか?

松本:まあ、その時間のかかる前に、そもそも依存症って何なのかって話なんですが、先ほど「これが病気だったと分からなかった」って意見がありますが、やっぱりこれは病気なんですね。
アルコールというのは、れっきとした依存性薬物で、そういう意味では覚せい剤なんかとも変わらない、脳みそに影響を与えるものです。
特に、生きるのがしんどい人にとっては、それを少し楽にさせてくれたり、生きやすくしてくれたりする効果があります。
しかしながら、依存性薬物なので、脳内の「報酬系」というですね、神経細胞のネットワークがあるんですね。
そこの所を完全に支配してしまって、もう本人の意志ではどうにもできないような飲酒行動を引き起こします。

山田:報酬系っていうのはどういう?

松本:要するに、お酒を摂取すると、それによって脳内麻薬が出たりとかして、すごく楽になるんです。
で、何て言うかな?つらいことがあると、報酬系の脳内麻薬を出して、楽になりたいっていうのが、どんどんどんどん学習されていっちゃうんですね。
で、これはもう、意志や根性ではどうにもできない訳です。
お酒の問題を持ち始めた人たちは、みんな実はひそかにそのことを問題と思って、なんとかコントロールしようと頑張ります。
今日は1杯だけにしようとか、焼酎の瓶に一生懸命マジックで線を書いたりとか、自分自身に誓ったりとか。
でもやっぱり、1杯飲んじゃうと駄目なんですね。
全く飲まないっていうことはできるんだけれども、1杯飲んじゃうと、必ずもうコントロールがきかなくなってしまう。

東:それは依存症になってしまったらですよね?

松本:そうですね。
先ほど、5年っていう数字が出てましたけれども、時間が長くなると何が生じるかというと、もちろん本人の職業的なキャリアが非常に損なわれるのも事実です。
身体的な健康もそうです。
でも、それだけではなくって、家族の方も、だんだんと自分たちが何か問題があるからこの人はお酒を飲むんじゃないかって、自分を責め始めちゃうと、今度家族がうつになったり精神状態がおかしくなります。
そして家族が精神状態がおかしくなると、不思議なことに、依存症はますます元気になるんですよ。

山田:どういうことですか?

松本:ますます本人の飲酒行動がひどくなる傾向があるんですね。
そうすると、家族も恥ずかしい気持ちになってきて、自分を責め始めているから相談しにくくなるんですね。
そういう意味では、いわば依存症は伝染性があるというか、周りの人を巻き込みながら病気が進行していく、そういう意味での恐ろしさはあるなと感じています。

東:私はもう実家を出ていたんですけど、母から毎日電話で「お父さんがこんな感じなのよ」って聞いていたんですね。
で、聞くと、母自身が過食になっていたんですよ。

山田:お母様が?

東:そうです。
だからもう、あなたも危ないから離れてちょうだいって。
断酒会に入ってもらって、離れてちょうだいって。
(でも母は)そんなことは、かわいそうでできないのっていうね。
もう本当に何ですかね、このじれったいというか。

上岡:本当つらいよね、家族は一番つらいですよね。

山田:どうしたら、早く治療や支援に結び付くことができるのか、ですけども。

松本:まずは、もう本当、国民全部、一般の方たちが、この依存症ということを正しく理解してほしいなと思います。
それは恥ずかしいことではなくって、例えばアルコールに関して言えば、お酒をたしなんでいる人、もう誰ひとりとして無縁な病気ではないんだということを理解してもらいたいなと思いますし、併せて、相談先とかをどんどんどんどん啓発していく必要があるんだろうなと。
とにかく伝えたいのは、叱責とか罰を与えたりとか、こういったことで解決する病気ではない問題ではない。
やっぱり、さまざまな治療や支援が必要な病気であるっていうことを周知することが大事だと思います。

山田:ここまでなかなか治療や支援につながれない実態を見てきましたが、最近ではこうした問題を更に深刻化させる事態が起きています。
背景にあるのは依存の多様化です。
ネット依存や買い物依存など、新たな依存の問題が次々に生まれている中で、治療法の確立や支援体制の整備が追いついていないという現状があります。その実態を取材しました。

多様化する依存症とその課題

横浜市内で、毎週開かれている集まりがあります。

司会:時間になりましたので、ミーティングを始めます。

顔をそろえたのは、さまざまな依存に苦しむなど、生きづらさを抱えた人たち。
この自助グループで、悩みや苦しみを分かち合い、共に回復を目指しています。

男性:ギャンブル依存症のリュウです。
今日もこうやってパチンコのティッシュをもらった時に、頭から離れなくなってしまって、お金があればパチンコに行って、お金がなくなれば借金をしたり、ホント繰り返してばっかいて。

女性:自傷行為が止まらなかったり、買い物が一時エスカレートしたりしてたんですけれども、人生がホントにどうにもならなくなってしまって。

買い物やインターネット、自傷行為など、依存の対象はあらゆる分野に広がっています。
どこに相談したらよいのか分からず、ここにたどりついたメンバーも少なくありません。

ゆり子:自分が買い物でしでかした借金のことや自己破産のことは、誰にも言えないと思って生きていました。

2年前からこのグループに参加している、ゆり子さん(仮名)です。
10年以上にわたって、誰からの支援も受けられないまま、買い物依存と格闘してきました。

ゆり子さんが買い物にのめり込むようになったのは、地方から上京したことがきっかけでした。
高校を卒業してすぐに都内の信用金庫で働き始めました。
初めて目にする東京の町並み。
ゆり子さんの目には、道行く人たちが皆洗練されているように映りました。

ゆり子:ほんとに周りの人たちキラキラしていて、自分がそれに比べて劣っているってホントに思ってしまって。
誰が見ても田舎者って。臭いまで出てるんじゃないかっていうくらい田舎者まるだしだったので、それをカバーできるのは着てるものとか持ち物しかないのかなっていう感じで。

ゆり子さんは、高価な洋服やバッグを次々と買うようになりました。
あっという間に借金が膨らみ、支払いが追いつかなくなりました。
それでも、買い物をやめることはできませんでした。

周囲の期待に応えようと、幼い頃からずっと自分を押し殺して生きてきたゆり子さん。
その生きづらさを、買い物で紛らわすようになっていたのです。

ゆり子:私は人の気持ちとか人の感情を優先してしまって、自分の感情を後回しにしてしまうんですね。
自分だけが我慢すればいいっていうのを心のどこかで感じていて、ほしかったものを手に入れた時ってスキッとするというかスカッとする気持ちがあるので、そこの部分でいろんなことに向き合わなくてすんでしまってたのかな。

依存の対象が多様化する中、支援体制の整備は追いついていません。
買い物依存をはじめ、診断基準すら確立されていないものも少なくありません。
このため、対応できる医療機関は数えるほどしかないのが実情です。

ゆり子さんが買い物依存に陥ってから10年余り。
ようやく、共に支え合うことができる仲間たちと出会いました。
悩みを分かち合うことで、ゆり子さんは少しずつ回復に向かっています。

ゆり子:自助グループにつながって、同じ苦しみを持っている仲間に出会えて、自分が恥ずかしいと思って誰にも話せないと思っていたような話を、こうやって分かち合わせてもらって、分かるよって言ってもらえて、毎週こうやって顔を合わせられる仲間がいるっていう、本当に幸せなところに今いるんだなっていうふうに思います。

このグループを立ち上げた、佐藤しのぶさんです。
新たな依存が次々に生まれる中、支援からこぼれ落ちた人たちの受け皿を増やしていく必要があると考えています。

佐藤:日本全国各地に行くと、県に施設なんかないから本当に遠くの県の所に行ったり、グループもわざわざほかの県の向こうの隣の県のグループに行ったりとかという話は聞いているので、まだまだ少ないと思うんですよね。
こういう場所に来ると、だんだん家族がよくなったり自分がよくなったりということが分かってきたので、これからもっともっと増えていくと、みんなが集まれる場所が増えるといいなと思っているんですけど。

多様化がもたらす課題

(VTR終了。スタジオでトーク。)

東:お酒ですとかは、摂取する、体内に入れるから、ああそうなるのかなと思いますけど、ギャンブルとか買い物って、本当に意志というか精神論で片づけられてしまいそうですよね。

山田:そういう方は、身近でいろんな方サポートされていていらっしゃいますか?

上岡:私はやっぱり女性の仲間たちが多いので、女性の仲間たちの中には気分障害とかがあって、梅雨時とか調子が悪くなったりするような友達が、何となくお家から出なくなって動けないの。ネットにはまっちゃって、買い物をたくさんしちゃうみたいな。
するとあっと気付くと、今簡単にお金って借りられちゃうので、もう気付くと…1か月引きこもったら、30万とかの借金が出来ちゃって、っていうようなことが昔よりも簡単にできるようになって。
その問題が起きた時に、どう解決するのかの情報が全然出てないみたいな。
バランスが悪い気がすごくする。

東:月乃さんの活動仲間さんにもね、結構いらっしゃいますよね。

月乃:私、生きづらさ系のイベントみたいのやってるんですけど、お客さんでやっぱり圧倒的に多いのが、自傷される方ですね。
自傷しない方が本当にいいと思いますけど、やっぱり依存で常習的に、でも生きる上でそうせざるえない。それが依存に至ってるような若い人が多いっていうのが、すごくもう圧倒的な現実ですよね。
それが現在の社会的要因と重なるのかどうか分からないけど、私はね、やっぱりもう圧倒的に独りぼっちで孤独で寂しくて、それでもう本当に生きづらくて生きられなくて、もう生きる上でお酒を飲めばその孤独感から癒やされる、薬のめば癒やされるっていうか、それがやっぱり生きるために薬、お酒、そして自傷をせざるえなかった私と、そういう人が周りに多いっていうのはすごく感じています。

山田:本当にいろんな依存症のタイプがあって。
ですから、例えばアルコール依存症だったらこの先生という訳にはいかず、もういろんな専門家も必要になってきますし、サポートがね。

東:そうですよね。

松本:まず買い物とかギャンブルとかあるいはインターネット、自傷、これざっくり言っちゃうと「行動の依存症」ですよね。
実はまだ行動の依存症については、これが果たして全く依存症と同じなのかどうかということは研究段階でもあって、まだはっきりしたことはないし、医療機関の中でも、アルコール薬物依存依存症のように、保険がきく適用病名にもなっていないという現実はあるんですよ。
ただ、実際相談に来る方たちはそういう問題を持ってる方がいるということ。
それから、通常の場合、ギャンブルや買い物自体に、普通は我々依存性を感じないんだけれども、ある種の生きづらさをずっと抱えて生きてきた人たちがある情況になった時に、それをすることによって一時的につらい気持ちから目をそむけたり、つらい気持ちに蓋をしたり、あるいはちょっとだけ一時的に自尊心が上がって、ちょっとだけその瞬間自分が好きになったり。
これがもう、強力な報酬効果になって、依存症と全く同じ状態になるってことは、臨床的にもよくあることですし、先ほど脳内の報酬系って言いましたよね。実は、この行動の依存症も、脳内の報酬系が関係していることが非常に分かってきたんですよ。
そういう意味では、これも一つの病気だと思いますし、また治療においても、アルコール薬物の依存症と同じように、自助グループであるとか、あるいはアルコール薬物の依存症によく使ってる心理療法が非常に有効だったりするという意味では、共通点があるので、今後更にこの研究を深めていって、このアルコールとか薬物とか縦割りじゃなくって、生きづらさをひとまずその場しのぎするために、ある行動や物質を摂取したらコントロールがきかなくなっちゃった、こういう人たちをサポートしていく体制を作っていくことが必要なんだろうなというふうに思っています。

山田:支援の手が足りていないのではないかという、何か現場から実感ってありますか?

月乃:すごい偏見があって、私地方の新潟在住なんですけれども、施設が立ち上がろうってする時に、まあ近隣の人のお気持ちも分かりますけれども、どうしてもこういう場所が出来るっていうと、薬物依存症の場が出来るっていうと、周りの近隣の人が反対される。
そのお気持ちも、それは偏見から基づいてよく分かるんですけど。
そういう感じで、場所自体がまず置きにくいみたいな、それはすごく感じますね。

松本:やっぱり、一般の人たちの偏見がより強まっちゃってる感じがありますよね。
それからあと、専門的な支援者医療関係の支援者の方も、依存症関係の問題に苦手意識を持っている人が非常に多いですね。

山田:苦手意識?

松本:そうですね。
やっぱり診たくないっていう。
まあしんどい問題っていうこともありますし、あとやっぱり、何て言うのかな?人間って、自分の思いどおりにならないことに耐えるの、苦手なんでしょうね。
それはご家族もそうだし、援助者もそうなんだろうなって思います。
でもやっぱり、我々はそういったことに耐えられるようになっていかなきゃいかんとは思っていますが。

東:根気のいる治療というか。

松本:そうですね。はい。

山田:まだまだ社会としても、これ大きな問題だって捉えてないのかもしれません。

東:…というような気がしますね。
どこか社会全体的にごく一部の特別な人の病で、自分は大丈夫っていう他人事って。
実は、身近にはね、いると思いますけど。

山田:今日は、依存症を巡る現状と課題について見てきました。
明日は、依存症から回復していくためにはどうすればいいのか考えていきます。
今日はどうもありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

カレンダーにもどる