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シリーズ 日本で暮らす外国人
第2回 外国人高齢化の現場から

この放送回の番組まるごとテキストを掲載しています

  • 2014年11月5日(水曜)再放送2014年11月12日(水曜)

出演者
毛受 敏浩さん(公益財団法人日本国際交流センター 執行理事)

シリーズ 日本で暮らす外国人 第2回 外国人高齢化の現場から の番組概要を見る

外国人高齢化の現場から

(VTR)

施設職員:おはようございます。

高齢者:おはようございます。

神戸市にあるデイサービスの施設。
昼間介護が必要なお年寄りを預かっています。
実はここ、利用者のほとんどが外国人です。

在日韓国人
女性:
14歳で日本来て、子どものときに、仕事しに来たで。
人間一生生きるの大変や。

ベトナム人女性:ここはみんながいるから楽しい。
家ではひとりぼっちだし。

今、日本に暮らす外国人は200万人以上。
その中で高齢化が始まっています。
言葉や習慣の違いに戸惑うスタッフ。

施設職員:シャワーってなんていうんやろ。シャワー。
お風呂入るん、だめ、シャワー。

介護の現場では対応を迫られています。
第2回は高齢化と向き合う現場からの報告です。

(VTR終了。スタジオでのトーク)

山田:こんばんは。「ハートネットTV」です。
今、超高齢社会を迎えた日本では人手不足が深刻な問題になり、外国人受け入れの議論が活発になってきています。
しかし、そもそも日本社会は彼らとともに働き、暮らしていく準備ができているのでしょうか。
これは日本にいる外国人のうち、65歳以上の高齢者の数を表したグラフです。
現在およそ14万5,000人。
このように年々増えてきているのが分かります。
最も多いのは戦前戦中来日した韓国、朝鮮人。
更に日系ブラジル人、ペルー人や、中国にルーツを持つ人たちなどです。
高齢化の問題は日本人だけの問題ではありません。

多文化対応型デイサービス

(VTR)

神戸市長田区にあるデイサービス「ハナの会」です。
利用者のほとんどは韓国、朝鮮の人たち。
中国やベトナムにルーツを持つ利用者もいます。
ここでは外国人が過ごすためにさまざまな工夫をしています。
この日のお昼は韓国料理。
それぞれの国の料理を提供しています。

在日韓国人
女性:
どないしますの?
あ、カムサハムニダ。
そりゃ楽しみや。
うちら待ってんのや、(デイサービスの)日が来るまでな。
こんなええとこないで!

職員:たたみ。

一同:たたみ。

職員:たたみ。

一同:たたみ。

職員:はい、次。

利用者:から・・・い。からい。・・・未来。

職員:はい。

ここでは週に一度日本語の教室も開かれています。
戦争で教育を受けられなかった人や、高齢になって日本へ来た人が多いからです。
どんな国の人にも開かれた全国でも珍しい施設です。

在日韓国人
女性:
「アリラン コゲロ ノモカンダ♪」
チョター!(いいぞー!)

外国にルーツもつ人の高齢化

港町・神戸。
多くの外国人が暮らし、およそ4万2,000人が在留しています。
中でも長田区は外国人の割合が多い町です。
戦後、靴の産地として発展してきた長田区。
その産業を支えた人たちの中にはたくさんの外国人がいました。
その多くは戦時中朝鮮半島から来た人々や、ベトナム戦争の混乱から逃れてきた難民でした。
時がたち、高齢化の波は今外国人にも押し寄せています。
デイサービスを運営するNPO法人です。
設立のきっかけは阪神大震災。
家を失い、生活に困窮する外国人を支援してきました。
中でも韓国、朝鮮の高齢者の孤立は深刻でした。
そこで交流会を開いたのがデイサービスの始まりでした。

NPO法人
理事長:
逆説的なんですけどね、「困った事はないですか?」って言ったら「何も困ってない」って言います。
外国人の高齢者は自分たちに何かが社会が何かを供給してくれるとか、自分たちの事を考えて 何かをやってもらえるなんていうのは本当思ってないですよね。
鉄のドア一枚閉めたら一日誰とも話さないっていうね。
それは非常に高齢者にとっては厳しい環境ですよね。
ですから「ハナの会」(デイサービス)っていうもののスタートはそこから来てますよね。

孤立しがちな外国人高齢者の居場所作り

今年9月に通い始めたベトナム人のトラン・ティ・チャットさん、86歳です。
20年前に日本に移り住みました。

チャットさん:ここはみんながいるから楽しい。
家ではひとりぼっちだし。

チャットさんは66歳の時、難民として先に来ていた娘を頼って 来日しました。
日本へ来てからは夫と靴の内職をし、生計を立ててきたといいます。
しかし2年前に夫をがんで亡くし、独り暮らしになりました。
離れて暮らす娘は自分の仕事で精いっぱい。
そばにいる事ができません。

チャットさん:寂しくて怖くて。ここではひとりぼっち。
心細いよ。たまらないよ。

日本語が分からないチャットさん。
外出して道に迷い、自宅に戻れなくなった事もあったといいます。
家に籠もりがちになり、誰とも会わずに過ごす事が多くなっていました。
チャットさんが元気を取り戻すきっかけとなったのは、NPOが誘った、ベトナム人向けの交流会でした。

職員:ベトナム語であいさつしましょう。
みなさんベトナム人だから。
シンチャオ!(こんにちは)

ベトナム語が通じる安心感。
チャットさんは要支援の認定を受けデイサービスに通うようになりました。

参加者:いただきまーす。

職員:ちょっと今日張り切って作りました。

参加者:おいしい。ベトナム料理は恋しいけど、一人暮らしだと普段作らないからね。

職員:これからも毎月みなさん来てくださいね。

ベトナムの高齢者のサービスも、他の日本の方と同じように受けさせたいという思いがあって。
ベトナムの高齢者の人、だいたいは介護に対するの抵抗がすごいあって。
で、寝たきりやないと介護じゃないと思うのあるねんけど、実際は予防介護とかもあるし、実際に今の健康は、ここ通うことによって下がらない、維持できることは知ってもらいたいですね。

チャットさんは今週に2回のデイサービスを何よりも楽しみにしています。
この日は初めての遠足。

チャットさん:このピンクはきれいね。
このバラは匂いがない。

職員:においはあんまりないねんて。

利用者:摘んでいいの?

職員:だめですよ。

施設で出会った友達と一緒に楽しい時間を過ごしました。

職員:「ここ連れてきてくれてありがとう」だって。

2人:ありがとー。

職員:そうやなかったらチャンスないって。

利用者:きれい~。

職員:いい思い出ができた?

チャットさん:もちろん!全てが素敵でよかったよ。
花もたくさんあって、本当に…もう帰りたくないわ。

全員(歌):♪みんなここに集まろう
人生は楽しく気楽に
人生最後まで楽しく生きよう
明日みんなで会いましょう
明日みんなで会いましょう

高齢化の現状 孤立・支援制度ないまま老いる外国人

(VTR終了。スタジオでのトーク)

山田:スタジオには昨日に引き続き、日本に暮らす外国人の現状に詳しい毛受敏浩さんです。
よろしくお願いします。

毛受:よろしくお願いします。

山田:外国人の高齢化の問題、どのようにご覧になりましたか?

毛受:そうですね。外国人の人たちというとこれまではですね、労働者としての見方が強かったと思うんですけれども彼らも当たり前なんですが一人の人間ですので生活者として家族を持ち、そしてだんだん高齢化していくという存在であるという事を改めて感じたと思うんですね。

山田:今の映像で今、映っていますがベトナム人のチャットさん。
「心細くてたまらない」という話もしていました。
どうしても孤立しがちだという現状があって、それにはどういう背景があるんでしょうか?

毛受:それぞれの外国人の人たちっていうのは国ごとにコミュニティを作って、その中で生活共同体のような形で生活されてらっしゃる方が多いと思うんですね。
ただ、問題は日本社会と完全に切り離されたような形でコミュニティが出来てしまうと。
どちらかと言うと今まで外国人の方々は日本社会の中で差別を受けてきた方々も多くてですね、そういう人たちはどちらかと言うと日本社会から退いて、日本の社会と没交渉の中で暮らしてきたと。
そういう方々が高齢化して、日本語もできずに困ってらっしゃるというところもあると思うんです。
それはやっぱり本来あるべき姿ではなくて、日本の社会に根づきながら最終的に高齢化していくというのが、本来目指すべき社会じゃないかなと、方向じゃないかなというふうに思いますね。

山田:外国人の高齢者が孤立する中で、地域として何かやれる事というのはないんでしょうか?

毛受:アメリカで私自身がNPOを訪問した時に経験した例なんですけれども。
外国人移民の高齢者の人たち、家の中で閉じ籠もりがちな人たち病気がちな人たちに対して食事を提供するというNPOありまして。
食事を一般のボランティアの人たちが、サラリーマンの人たちが朝食を届ける、お昼を届けるという事をしてるんですね。
それが彼らにとってはなかなか日頃接する機会のない社会との接点になってるんですね。
外国人の人たちの問題だから外国人のコミュニティが面倒見ればいいんだという事ではなくて、日本人の市民の人たちもその問題に関わって交流をしていくというような事も日本ではできればいいんじゃないかなというふうに思いますね。

山田:その中で公的な制度につながるという…これも大きな…外国の方たちにとっては意味があると思うんです。

毛受:ええ。外国人の高齢者の方で実は生活保護を受けてらっしゃる方が比較的多いんですけれども。
それは年金が外国人の人たちが受けれるという事が1982年まではなかったという事でその後は加入できるようになったんですけれども、受給期間がないと。
十分ないという事で、外国人の方が入れないとそういう方もたくさんいらっしゃるんですね。
ですから日本の社会として外国人の人たちをしっかり受け止めるシステムが今まで十分なかったので、その結果社会の中で弱者になってしまっている外国人の方が多いという事をやっぱり認識しておく必要があるというふうに思いますね。

山田:更に外国人の高齢者も年を取るごとに病気になったり、要介護度が増していったりします。
その中で24時間介護が必要になった時、今の日本の介護現場はどう支えていくのか。
ある取り組みをご覧頂きます。

多文化対応型グループホームで暮らす高齢者

(VTR)

神戸市長田区にあるグループホーム。
この施設では24時間介護が必要な外国人のお年寄りを積極的に受け入れています。
入居者18人のうち8人が韓国や中国、ベトナムにルーツがある人たちです。
10月。ある入居者が施設に戻ってきました。
中国系ベトナム人の何・兆林さん、79歳です。
足の持病が悪化したため入院していたのです。

何さんの娘:ただいま戻りました。

職員:あら、何さん、ニーハオマ?(元気だった?)
何さんおかえり~。

脳梗塞も患い、右半身にまひがあるため2年前からこの施設で暮らしています。
今ではここが第2の我が家です。

何さんの娘:今、この位置に座ってほっとしましたね。

職員:謝謝你!おかえりおかえり!帰ってきたね!良かったね。

この施設では外国語を話せるスタッフを置いています。
何さんはベトナム語と中国語は理解できますが、日本語はほとんど分かりません。
また、脳梗塞の後遺症で言葉がうまく出ないため、健康状態は慎重に聞き取る必要があります。

職員:こっち側の指は、ものつかむとしびれるんだよね?こっち側はまだ使えるよね?
爪が長いから切ろうか。

体調管理には何さんの母国語でのやり取りが欠かせません。
しかし、言葉が分かる人が24時間常駐するのは難しいのが現実です。
そのために用意したのが、このノート。

職員:何さん、どっち?有り?OK。
足、足、痛い?
ちょっと痛いんか。

体調を確認する質問事項を何さんが分かる中国語で書き出しました。
小さな体調の変化が命に関わる事もある介護の現場。
こうした工夫を重ねています。

職員:1個1個が積み重ねやから。1個1個情報は、どのスタッフにも。
引き出しもいっぱいできてきたと思います。
みんなうちのスタッフは分かろうと努力はしてると思いますね。

安心して過ごせる場所にしたい

異国の地で老後を過ごす何さん。
日本へ来たのは33年前の事です。
ベトナム戦争による混乱を逃れ家族4人で神戸に移り住みました。
家族を養うために早朝から深夜まで中華料理店で働き続けました。
立ち仕事の無理がたたり20年前、足の血流が悪くなる病気を患いました。

何さんの娘:医者からは「仕事を辞めるのが一番治療になる」って言われたんですけども、それ以外の仕事もないので、それからも20年ぐらい頑張ってずっと。
仕事してたのでだんだんやっぱり足が悪化してきてるんですけども。
自分が本当に高校の時なんかは何も考えず友達と遊んだりしてるその時間も父親は私たちのために働いてね、苦労してたんだなと思うと何か 情けなくなりましたね。
それからはもう父親の老後の事は大事にしたいなと思いましたね。

3年前、何さんは脳梗塞を患い介護が必要になりました。
娘の美容さんは自宅で見たいと考えましたが、働きながら2人の子どもを育てていたため断念。
何さんは日本人が入る通常の施設に入所する事になりました。
しかし、そこでは言葉が通じないため、体の不調を訴えてもうまく伝わりませんでした。
その度に娘の美容さんが駆けつけなければなりませんでした。
安心して暮らせる場所はあるのか。
思い悩んでいた時に届いたのが、このダイレクトメール。
言葉の分かるスタッフがいると知り、入居を決めたのです。

2年前の開設以来、多くの外国人を受け入れてきたこの施設。
命にも関わる事柄をどう正確に伝えるのか、頭を悩ませる事も少なくありません。
この日は何さんの主治医が診療に訪れました。

医師:痛い?痛そう?ここは?ここ大丈夫か?

持病の足の傷は悪化し、細菌に感染しやすい状態。
高熱が出れば命に関わる危険もあります。

職員:一番風呂に入れた方がいいですか?

医師:シャワーがいいですね。

職員:本人さんお風呂大好きなんでね。
中でがりがりされるんですよ、お風呂の中で。

医師:あんまりジャポン(浴槽に入る)っていうのはよくないでしょうけどね。

職員:それがうまく伝わらないんですよ。

入浴日の明日はベトナム語ができる職員がいません。
どう説明するのか。

職員:「お風呂入りますか」はあるけど、「シャワーにしましょ」っていうのがないわ。
シャワーって何ていうんやろ?

思いついたのはスマートフォンの翻訳アプリ。

職員:「今日は、シャワーになります」
「しょうが」やって出た。私滑舌悪い。
これしゃべって!「今日はシャワーになります」って。

別の職員:「今日は、シャワーになります」

職員:いけた、いけた、いけた。
「沐浴」(もくよく)や!

別の職員:「沐」じゃないでしょ、これ。

職員:「沐」っていうか、何かほら。

別の職員:これ、合うてるかどうか分かんないですけど。

翌朝。何さんの入浴の時間です。

職員:何さん今日、お風呂、先生、ノー、シャワー…シャワー、お風呂入るん、ダメ。シャワー。OK?

スタッフの問いかけに、何さんが小さくうなずきました。
日本で年老いていく外国人をどうケアしていくのか。
今も手探りの介護が続いています。

職員:何さん、何がしたいんやろうなって思う。
何してるときが幸せなんやろう。
一緒にできることをしていこうねって話はよくしますね。
何さんが、ここにきてよかったと思える介護をしたいなって。

「外国人高齢化」から日本が考えるべきこと

(VTR終了。スタジオでのトーク)

山田:毛受さん、どうご覧になりました?

毛受:そうですね。外国人の高齢者のケアというのは日本人も外国人も関係なく、やはり尊厳のある生活というか、それをある程度保証しなければならないと。
これからこういう方々が増えてくるとするとですね、言葉の問題だけじゃなくて恐らく文化の問題、いろんな問題があるんだと思うんですね。
今のケースっていうのはまだ本当にこれから大きくなる問題の一番最初というところだと思うんですね。
こういうところでいろんな経験を積んで、それが今後はいろんな経験の中からそれをシェアをしていくようなシステムを作っていくという事も必要だというふうに思います。はい。

山田:今の映像から私たち日本人がどのようにして対応していったらいいのか考えるべき事、たくさんあると思うんですけれども。

毛受:外国人の人っていうのは人間である訳ですよね。
ですから生活者として教育も受け、家庭を持ちう、そして高齢化していくと。
そういうライフサイクルがあるんだと思います。
そのライフサイクルごとに彼らの必要なニーズっていうのが出てくる訳ですね。
それに対して日本の社会としてどういうふうに対応していくかという事が、今まで十分あんまり考えてこられなかったと思うんですね。
これから日本が人手不足の中で外国人の人たちをもし本当に本格的に受け入れていくんであれば、それはやっぱり日本にいれば豊かな生活ができて安心して暮らせるというようなやっぱりルートを作ってあげると。
彼らと一緒に生活していくという事を本格的に考える時期に今来てるんだと思うんですね。

山田:今日はどうもありがとうございました。

毛受:ありがとうございました。

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