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シリーズ 「施設」で育った私
第2回 “巣立ち”を支える児童養護施設の試み

この放送回の番組まるごとテキストを掲載しています

  • 2014年7月2日(水曜)再放送2014年7月9日(水曜)

出演者
サヘル・ローズさん(タレント、女優、キャスター)
西澤 哲さん(山梨県立大学教授)
語り
河野 多紀さん

シリーズ 「施設」で育った私  第2回 “巣立ち”を支える児童養護施設の試み の番組概要を見る

(VTR)

親の離婚や、病気、虐待。
さまざまな事情で親と離れ、児童養護施設などで育つ子どもたち。
心の傷を抱えたまま大人になった時、さまざまな壁にぶつかり、自立に苦しむ人が後を絶ちません。

(児童養護施設出身の女性)

女性:なんで、この世に私が生まれてきたんだろう。
なんで私を産んだの?

親から支援を受けられず、一人自立を求められる子どもたちをどう支えるのか。
その一つの試みが、施設を出たあとも進学や就職・生活の相談に乗る「コーディネーター」。

更に、共同生活の場を提供し、子どもたちが孤立しないようにするサポート。

「シリーズ“施設”で育った私」。

第2回は、子どもたちの独り立ちを支える児童養護施設の取り組みについて考えていきます。

(スタジオ)

山田:こんばんは。「ハートネットTV」です。
今日は、まず皆さんに聞いて頂きたい作文があります。
ある児童養護施設で生活する、高校1年生の女の子が書いた作文です。

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私は記憶があるところからずっと、この学園(施設)で生活をしてきました。
私はこの学園が大好きです。
それでも、あと3年後にはこの学園を退園しなくてはいけません。
それはとても怖いことです。
ここにいれば、温かいご飯を食べることができて、お風呂にも入れて、寝る場所があります。
ここを退園して、私はそんな生活ができるところに行けるのか不安です。
小さいころは、退園したあとはみんな幸せになれると思っていました。
それでも、大きくなるにつれてそんな期待は外れて、学園を出たあと、みんな苦労して生活しているという話ばかり聞くようになりました。
もともとみんな大人の理由でここにきたのに、子どもが苦しまなくてはいけないのはおかしいと、腹も立ちます。
それでも、あと3年でここを出なくてはいけません。

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サヘル:胸が締めつけられるって、こういう事を言うんだなって思います。
あと3年でここを出なければならないという…。
「出なければならない」、普通だったら「出たい」と思うはず。
施設から出て、家庭とか、もっと幸せな未来を描くものだと私は思っていたんですけれども、そうではない現状、今の子たちがそういう事を感じてるんだという、すごくリアルな心の叫びのように感じますね。

山田:西澤さんはどう感じましたか?

西澤:やはり一番胸に刺さるのは、大人の理由でここに来させられて、文章ではそうではないですが、「追い出される」という、強いられた自立というか、そういうものに対する子どもたちの無力感だとか、怒りというのが伝わってくる気がします。

山田:第1回の放送では、18歳以降に児童養護施設を出て、進学や就職など自立をしていく段階で、深刻な問題に陥っている現状を見てきました。
今日第2回では、そうした現状に対して、児童養護施設が始めた支援の取り組みを見ていきます。
まず最初に見るのは、東京都の取り組みです。
自立に向けた支援を専門に行う職員を施設に配置して、巣立っていく子どもたちを手厚くサポートしていこうとしています。

過酷な仕事と進学の両立

(VTR)

関東地方の短期大学に通うユカさん、19歳です。
両親から繰り返し虐待を受けたため、中学3年生の時から児童養護施設で暮らしてきました。
去年高校を卒業し、施設を退所。
将来は、自分と同じ境遇の子どもを支えたいと、保育を学んでいます。

ユカ:自分が4年間、児童養護施設に住んでて、それを恩返しをしたいという気持ちがすごい大きいから、将来の夢は児童養護施設の職員になりたいなというのを今は思ってる。

施設を出た今も、両親を頼る事ができないユカさん。
学費は奨学金で賄っていますが、生活費を稼ぐために早朝から2つのアルバイトを掛け持ちしています。
それでも、自分でアパートを借りる余裕はなく、交際する男性の家に身を寄せています。

(Q ひと月働いてどれくらい?)

ユカ:10万いかないぐらいです。
大学いくためにもお金必要だし、これから自分の将来のためにもお金が必要だから、お金を少しでも稼いで、夜学校終わった後も働きたいって気持ちはあるんですけど、そこまでやったら多分本当に体壊して病院送りになりそうな感じなんで、自分の手元に保険証も持ってないんで。

実はユカさんは、施設を出たあと、一度虐待を受けた両親のもとへ帰りました。
「家に戻ってきてほしい」と言われたからです。
しかし、両親の態度は以前と変わりませんでした。
毎日のように続く、言葉の暴力。
更に、預金通帳を取り上げられ、将来のために高校時代からアルバイトでためた120万円全てを抜き取られました。

(預金通帳を指さしながら)

ユカ:給料が入ったのはこれだけど、また、4日後に引き出されて。

(Q いくら引き出されてるの?)

ユカ:約11万入ったら11万抜かれて。

「このままでは人生が駄目になってしまう。」
ユカさんは家を飛び出し、交際相手のもとに逃げ込んだのです。

施設から“巣立ち”を支える 自立支援コーディネーター

ユカさんが育った東京都の児童養護施設です。

(職員室を訪ねるユカさん)

ユカ:鈴木さん!

困った事があると、いつもここを訪れます。
出迎えたのは「自立支援コーディネーター」の鈴木章浩(あきひろ)さん。
子どもたちの自立を支える専門の職員で、ユカさんが施設にいた時から、進学など将来の相談に乗ってくれました。

この日ユカさんには、どうしても聞いてもらいたい事がありました。

鈴木:何心配してんの?

ユカ:私ここ最近ずっと「出てけ」って(彼氏に)言われてます。
私がいるせいでストレスがたまってるわけよ、彼は。
それでよくケンカする。

鈴木:ケンカする。

ユカ:ガチでケンカする。
そう、世話になっちゃってるし。
向こう(彼氏)が家の主導権もってるから。

鈴木:そうでしょ。

ユカ:だから、私は何もさからえないから。

鈴木:今の関係はあまりよろしくないから。

ユカ:本当にちょっともうね、だるい。

鈴木:でしょ?
でも何かで、そうやってケンカして、別れちゃったらどうする?
どこ行くの?

ユカ:それなんですよ。

「交際相手に追い出されたら、住まいを失ってしまう。」
心配した鈴木さんは、まずユカさんが学費や生活費をどうやりくりしているのか確認する事にしました。

鈴木:7万円は彼に出してもらって、生きてるわけですよ。

ユカ:はい、そうですねー。

交際相手から経済的に自立するにはどんな方法があるのか。
ユカさんと一緒に考えます。

鈴木:学校の近くで(家)借りて、一人暮らししたらどうなる?

ユカ:計算したんだよ。
計算して、ああ無理だってなった。
私一人暮らしできないよ。っていったの。

鈴木:でも、色々シミュレーションしてみようか、今度。

新たに使える奨学金を探すなど、生活を安定させるための手段を一緒に探していく事になりました。

(Q 鈴木さんというのは、今の生活の中でどういう存在かな?)

ユカ:相談相手であり、いちばんよき理解者。
だから何でも話し合える人。
ちっちゃなことでもたくさん話せる。
だから安心がすごいある。

鈴木:じゃあまた。気を付けてね~。

ユカ:うん。

鈴木:また連絡して、俺も連絡するけど。

ユカ:うん、オッケー。
じゃあまた。

鈴木:またね、気を付けてね。

ユカ:ばいばい。

鈴木:ばいばい~。

「自立支援コーディネーター」は、東京都が全国に先駆けて2年前に立ち上げた、新たな試みです。
施設を出たあと、生活に行き詰まる子どもが相次いでいたためでした。
就職や進学、一人暮らしをするためのアパートや奨学金の手続きなど、社会に出ていくためのあらゆるサポートをします。

これから施設を巣立つ子の支援も大切な仕事

鈴木さんが、最近、自立に向けて支援を始めた子どもがいます。
高校3年生のケンタさん。
来年春には進学し、施設を出て1人暮らしを始める予定です。

(出かけるケンタさん)

子ども:いってらっしゃいませだって。

ケンタ:いってらっしゃい。

子ども:いってらっしゃい。

ケンタ:はい。

子ども:気をつけてね。

ケンタさんは、幼い頃に両親が離婚。
引き取った母親は病気で働けず、4歳から施設で育ちました。
10年以上にわたって集団生活を送ってきましたが、今後は一人で生きていかなければなりません。

ケンタさんのために、鈴木さんは1人暮らしの練習をする機会を作りました。
仲間と別れ、1週間、施設の離れにあるワンルームで自炊をします。
買い物や料理、お金のやりくり。
親がいれば自然に学べる基本的な事を、施設で育つ子どもの多くは知る機会がありません。

(Q 今日これで買っていくら?)

ケンタ:1200いくらか、予算オーバー。

(Q 予算はいくらなの?)

ケンタ:予算はだいたい一日の3食分で、1050円ぐらい。
自分で学費も払わなきゃいけないから、無駄遣いできない。

いつも大勢の人に囲まれて暮らしてきたケンタさん。
1人きりで過ごす事にも慣れていません。

ケンタ:ああ…なんかこんな部屋にずっといたら「うつ」になりそうすね。
(口笛)
うーん、一人暮らししたら、本当にこんな感じになるのかね。

鈴木:鈴木です、入りますよ~。
お邪魔しまーす。

自立支援コーディネーターの鈴木さんが訪ねてきました。

(棚の野菜を指さして)

鈴木:これ今日買ってきたの?

ケンタ:そう、買いだめしてるから。

鈴木:何か高いなと思ったものある?

ケンタ:グラノーラ高かった。
とりあえずなんか朝・・・。

鈴木:朝はこれにするの?

ケンタ:コーンフレーク的な。

鈴木:俺も朝(グラノーラだよ)。

困っている事がないか、何気ない会話を交わしながら様子を見守ります。

鈴木:また見にくるね。
頑張って下さい。
まだね、2日目だからね。

1週間後。
アルバイトから帰宅し、夕飯作りに取り組むケンタさん。
残っていた食材をやりくりして、手際よく3品を調理しました。

ケンタ:帰ってきて30分くらいで飯できたの、最速かもしれない。
料理のペース、冷蔵庫の中のものの使い回し、一番できるようになったっていう自信がある。
一人暮らし始めて、そこは自信もってやってける気はします。

鈴木さんには、支援を通してケンタさんに伝えたい事があります。
それは、「この先も困った時にはいつでも自分を頼ってほしい」という事です。

鈴木:自分は一人じゃないっていうこと、をわかってもらうっていうんですかね。
ちゃんと見てる人いるよというか。
支える人がきちんといるよっていうことを伝えたいですね。

「巣立ち」を支えるには

(スタジオ)

山田:今VTRにもありました、「自立支援コーディネーター」というのは、施設に暮らす子どもの世話をする職員とは別に、このように独立して置かれている職です。
子どもの退所が近づくと、就職や進学などのサポートを(子どもの生活の世話を担当する)職員と一緒に行ったり、奨学金の手続きなどを行うなどして、少しずつこの施設にいる中で関わりを深めていきます。
更に、退所したあとも生活の相談に乗ってくれたり、ハローワークなど外部の支援機関につないでくれたりすると。

西澤:自立支援コーディネーター制度というのは東京都だけの制度なんですが、全国化すればいいなと思っていますが、やはり子どもたちを支えていく制度としては、アフターケア事業はあるんだけれども、実態としてそれがなかなか実現できてなかった部分を補うという意味で、意味のある制度だと思います。
ただ一つには、今も(VTRの)鈴木さんが施設で自立を目前に控えた子どもと密に関係をとっていくという事で、施設にいる間から関係性をとっておくというのがとても大事だろうと思います。
ただ一つ思うのは、今こういうふうな制度が必要になってくるのは、根本的に言って施設の子どもたちの生活支援をしている専門職であるケアワーカー(子どもたちの施設での生活を世話する職員)というのが十分に配置されてないからで、本来だとその人たちが継続して自立後もアフターケアができるというのが本来は望ましいんだろうと思いますけどね。

山田:サヘルさん。いろんな大人が関わる。これは大事だと思うんですが、ただ、子どもたちにとっては誰でも大人だったらいい訳ではない…。

サヘル:子どもって、やっぱり大人が思ってる以上にすごく見ているし、分かるんですよね。
業務的にこなそうとしてる人がいたら、それは見てすぐに分かるし、もうその人には心を開かないものなんですよね。
だけど、ファイル上の私たちじゃなくて生身の私たちをちゃんと目で見て、その人の瞳に自分が映ったって感じた瞬間、その人をすごく信頼できるんですよ。
その1対1の関係になれたって感じた、それが一番大切だと思うんですよね。
ただこなしてしまっては駄目だと思うんですよ。

山田:VTRのユカさんもそうでしょうね。
鈴木さんに対して、この人だったら言えるって…。

サヘル:…だと思います。
おにいちゃんのような目で見ていたし、フランクにしゃべっていたのがすごくいい関係性だなと思えたんです。
鈴木さんもそれを受け止める、一人一人ちゃんと目を見て話を聞いてあげてるのが、私はすごく身近な存在で、すてきだと思いました。

山田:一方で、施設を出た子どもたちの生活を支える場を作ってサポートしようという取り組みを行っている施設があります。
通常、児童養護施設を出たあとは、多くの子どもたちは就職や進学でもこのように(写真・上)一人で生活をしていくんですが、東京都にある児童養護施設「希望の家」では、施設と一人の間に、このように(写真・下)安心して生活できる「中間的な場」を設けて独り立ちを助けていこうという支援を行っています。

「緩やかな巣立ち」をサポート

(VTR)

児童養護施設を退所した子どもたちの生活をサポートする「あやめホーム」です。

(台所の女の子たち)

女子A:ねえ、今日朝起こしてくれたのに。

女子B:寝てたでしょう。

女子A:うん、今日学校休んだ。

女子B:だと思ったもん。
今起きたっていったから。
絶対行かなかったなって思って。

女子A:見て見て!うちの明日の弁当。

女子B:おかず無いじゃん。

女子A:作るのだるくなっちゃった。
チャーハン。

現在、大学や専門学校に通う4人の学生が、アルバイトをしながら共同生活を送っています。
ここでは生活費の負担を減らすため、家賃は無料。
施設の使わなくなった空き部屋を提供しています。
そして、子どもたちに困った事があれば、いつでも施設の職員が訪問し、相談に乗る体制になっています。

施設を出た途端、社会の荒波に放り出すのではなく、「一人でやっていける力がつくまで支える環境」を用意したのです。

(社会福祉法人 共生会 
 児童養護施設「希望の家」理事長 福島一雄さん)

福島:基本的にはやはりいずれ一人で生活していかなきゃいけないというところでは、ある期間のモラトリアム(猶予)みたいなもんなんです。
依存をしていって、初めて精神的にも自立ができるわけで、支えられてるとか、期待されてるとか、心配されているという人がいることの方が、ちゃんと自立していくんじゃないですかね。

一人暮らしでの挫折 アヤさんの事例

この春入居した、アヤさんです。
施設を出たのは去年3月。
一度は一人暮らしをしながら大学に通いましたが、うまくいきませんでした。
施設にいた時は、何事もそつなくこなし、職員の誰もがしっかり者だと安心していたアヤさん。
しかし、一人暮らしは想像以上に戸惑う事ばかりでした。

アヤ:なんかいろいろなんか手紙とかくるし、これをどうすればいいのかとか。

(Q 手紙?)

アヤ:公共料金の集金みたいなのがきて、これどうすればいいのかなとか色々よくわからなくなって大変だって思いましたね。
なんか電気とか水道とかはわかったけど、国民健康保険とかなんか、そういうのもよくわかんない、見たことないし。

更に、アヤさんを追い詰めたのが「孤独」でした。
ちょっとしたトラブルも一人で抱え込んでしまい、誰にも相談できなかったと言います。

アヤ:友達がサークルの新歓(新入生歓迎会)にいかないっていったのに(その)友達は違う友達といってて、それを聞いて、なんかもう、友達となんかそんな感じになったし…。
今までだったら誰かいたけど、今はもう、そんとき一人しかいなかったし家に。

(Q 自分だけ?)

アヤ:うん、中学とか高校で思っても(施設の)職員がいたから、「なんで休んだ?どうしたの?」とかも言われるけど、自分が連絡してこなかったら向こう(施設の職員)だってわかんないし。
そういう悩み言うのとか、あんまそういうの得意じゃなかった。

部屋に引きこもり、大学にも通えなくなったアヤさん。
結局、退学せざるをえませんでした。

その後、アヤさんはなんとか施設の職員に相談。
「あやめホーム」に移りました。

女子:おかえり。

アヤ:やばい超疲れた!

今は介護福祉士を目指し、新たに専門学校に通い始めています。

アヤ:疲れた、足痛いよもう…。

女子:なにも食べてないの?

アヤ:うん。なんか今日やばかった色々。
検便忘れたんだ~。

(Q みそ汁いつも作ってあげてんの?)

女子:いや、なんかあったらあげようかっていう。
かわいそうだから、ご飯あげる。

同じ経験をしてきた仲間と支え合いながら、再び自立への道を歩んでいます。

女子:絶対うまいよ、これ。

アヤ:サンキュー!
あ~あっつい!

アヤ:誰かがいるっていうのが大きいです。
話したら誰かが答えてくれるみたいな、それがいい。
いやー、なんかすごくストレスの発散にもなるし、なんかしかも逆に違う人の意見きいたりして、こういう考え方もあるんだなって、学べたりとかもするし。
気分転換とかにもなるし。
ここの子に言えば、一緒に頑張ろうみたいな感じになるから、頑張れます。

自立支援 今後の課題

(スタジオ)

サヘル:話したら誰かが答えてくれるっていう、その気持ち、すごく分かります。
…というのも自分も施設を出て、今まで共同でみんなで生活をしていたので、夜眠る時に音がないというのが慣れなくて、眠れなかったんです。

山田:音があるのが当たり前の生活だったんですね。

サヘル:そうなんですよ。
今でもラジオかテレビはつけっ放しで寝てしまう。
音がないと眠れない。
彼女の、もう一回みんながいる、一人じゃできない寂しさ、孤独感というのはすごくよく理解できます。
でも、この施設、逆に戻ってこういう所で一緒に生活をする事が果たしていいのだろうかというのも、私、最後、自分の中で考えてしまいました。

西澤:とりあえず、18歳で今までの生活はなし、これから自分で自立しなさいという、残酷な状況に追い込まれる子どもたちに対して、社会との間をつなぐ中間的な場所を提供しましょう、というのは一歩前進だと思うんですね。
ただ、やっぱり問題なのは、今おっしゃったように、この子たちってやっぱり幼少期の体験とか、幼い頃の体験から、自分というものの核が出来てないんですね。
普通、それは親との関係の中で自分というものの核を作っていくんですが、残念ながらそれが出来てない子が多いので、VTRの中で福島先生が「依存を通じて自立」というふうにおっしゃった、依存が自立に結び付くような、そういった精神的な支援というのが必要になると思います。

山田:施設を出た若者たちというのはつまずきやすい状況にある中で、西澤さんはどんなサポートが一番大事だと思います?

西澤:自立っていうのは、今の法的な側面から言うと、児童福祉法は18歳までだからって、パッとそこで切っちゃいますよね。
だけど、本当の自立っていうのは、ある意味徐々に自分を支えてくれていた親なり養育者、養父母さん、そういう方から徐々に離れていくというようなプロセスだと思うんですよね。
そうするとアメリカなんかでも、アメリカって割と自立を早くしようという傾向あるんですけど、それでも18ぐらいから始まった自立へのプロセスが大体完成するのは28歳ぐらいだといわれてるんです。

山田:28ですか。

西澤:その間に、行きつ戻りつしながら、それぞれがいろんな課題を抱えながら、それをクリアーしていくのを周りがサポートすると…。

サヘル:私は今28なので言われてすごく…。

西澤:そろそろ自立。

サヘル:そうですね。
何か分かるような気がします。

西澤:やはり彼らが緩やかに離陸していく。
それを支えるようなソーシャルワーカーなり、今、現には東京都で自立支援コーディネーターがありますが、ああいったものをもっと拡充させるとか、そういうものに対してもっと公的資金を社会的資本を投入していって、養護施設の子どもたちがそのあとも支援を受けられるような、そういう体制作りというのはやっぱり必要だと思いますけどね。

山田:そうした施設を出た若者たちの自立に向けて何が必要なのか、明日も引き続き考えていきます。

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