本文へジャンプ

シリーズ 「施設」で育った私
第1回 漂流する施設出身の若者たち

この放送回の番組まるごとテキストを掲載しています

  • 2014年7月1日(火曜)再放送2014年7月8日(火曜)

出演者
サヘル・ローズさん(タレント、女優、キャスター)
西澤 哲さん(山梨県立大学教授)

シリーズ 「施設」で育った私  第1回 漂流する施設出身の若者たち の番組概要を見る

漂流する施設出身の若者たち

(VTR)

なぜ私には親がいないの?
私の居場所はどこにあるの?
シリーズ「施設」で育った私。
親の離婚や、病気、虐待。
さまざまな事情で親と離れて、児童養護施設などで育つ子どもたち。
心の傷を抱えたまま大人になった時、さまざまな壁にぶつかり、自立に苦しむ人が後を絶ちません。

施設を出てホームレスになった若者。

取材者:自分の居場所ってどこだって思います?

ホームレス:それがあったらそこにいると思います。

留置場に居場所を求めた若者。

若者:(犯罪を)やってはないけどやったと言って留置場に入って寝られるし、ご飯食べれるしと思って。

風俗店で働くしかなかった女性。

女性:なんでこの世に私が生れてきたんだろう?
なんで私を産んだのって。

どんな環境に育っても、安心して暮らせる社会を造るには、何が必要なのか。

高橋:本当につながっている人、本当に信頼出来る人はそばにいるしさ。

シリーズ「施設」で育った私。
今日から3日間にわたって考えます。

(VTR終了。スタジオでのトーク)

山田:こんばんは、「ハートネットTV」です。
虐待や離婚、病気などの理由で親と暮らせない子どもたちは、今、全国でおよそ4万6,000人います。その子どもたちが安心して社会に巣立ち、自立していくためには何が必要なのか。3日間にわたって考えていきます。

虐待などで親と暮らせない子どもをまず保護するのは、児童相談所と呼ばれる行政機関です。児童相談所は保護した子どもの状況に応じて、児童養護施設などの施設や里親などに委託します。
こうして社会で子どもを育てる仕組みを社会的養護といいます。
子どもたちは原則18歳になると、施設などを出て進学や就職など、社会へと自立していきます。
ところが、この施設を巣立った人たちの多くが、その後、生活に行き詰まっているという実態が明らかになってきました。
まずは、その現状からご覧頂きます。

(VTR)

ホームレスの人たちを支援している現場で、最近、ある不安が広がっています。
ホームレス状態に陥る若者たちの中に、施設で育った人が増えているのです。

副田:彼も非常に若い男性ですけども中学校時代、児童(養護)施設に入っていた人間ですね。

この千葉県市川市のNPOには、生活に行き詰まった施設出身の若者が、何人も相談に訪れています。

副田:家族があって、相談できる相手がいればここまできていないのかもしれないですね。

2年前、このNPOの支援で生活保護につながった30歳の女性です。
父親から暴力を受け、小学4年生の時に保護されて児童養護施設に入りました。
中学を卒業後、一度は家に戻りましたが再び虐待を受け、逃げ出しました。
しかし、どこにも居場所は見つかりませんでした。

女性:親からの許可がないと、アパートにしても寮にしても身分証明書が、保証人になってくれる人はいないと無理だからと。

そんな時、声をかけられたのが、住み込みで働けるスナックや風俗店でした。
生きていくために、ほかの選択肢はありませんでした。

女性:生活するためには結局お客さんがつかなければ、正直なところ本当のことをいうとホームレス状態。
お客さんと短い時間でも一緒にいるところが私の憩い場みたいな。

「私は何のために生きているのか」。
女性は次第に精神的に追い詰められていきました。

女性:何回か本当に死にたいという気持ちが大きかったんで、本当に死ぬ場所を探し求めていた。
自分が家にいても居場所がないし、求める場所も本当になくて、なんでこの世に私が生まれてきたんだろうって気持ちが多くって、なんで私を産んだのって。

施設を出て間もなく路上生活に陥った男性もいます。

剛司:こんなんで寝てましたよ。ここで。

取材者:どんなふうに?
ここは人道りが少ないですよね?

剛司:夜はおまわりさんぐらいしか来ないです。

取材者:声かけられるの?

剛司:あります。何回もあります。

取材者:そういうときはなんて答える?

剛司:仕事してません、プータローです、家ありませんって。

男性は幼い時に母親を亡くし、父親も病気がちだったため、小学2年生の時から児童養護施設で育ちました。
二十歳で施設を出ると、印刷関係の会社に就職。
しかし、人間関係につまずきすぐに退職します。
家賃が払えなくなり、アパートを退去。
頼れる家族や親戚はなく、すがる思いで育った施設に連絡を取りました。

剛司:卒園生だから手を貸しません。ま、大変なんで施設も。

取材者:自分が育ったというかいたところだから。

剛司:事実、相談はできるけれども、アドバイスはするけれども、直接手を貸さないと。

取材者:でも本当は頼りたい?

剛司:頼るのは悪いと思っているから、そうなっているんだと思います。

取材者:家族だったらまた違うかな?

剛司:まず、家族っていうのがよくわからないんです。

住む場所はなく路上生活を続ける中で、食べる物にも困った男性はついに万引きをして逮捕されました。
その後、男性はNPOの支援を受けて路上生活から脱出。

剛司:さっくり行ってきます。

スタッフ:いってらっしゃい。頑張って!

現在は生活保護を受けながら、独り暮らしのお年寄りに食事を届けるサービスを手伝っています。

剛司:おはよう、起きてる?弁当持ってきた。

取材者:自分の居場所ってどこだと思います?

剛司:ま、それがあったらそこにいると思います。
わからないから、いろいろとふらふらしていると思うんです。

(VTR終了。スタジオでのトーク)

山田:スタジオには女優・タレントのサヘル・ローズさんと、山梨県立大学教授の西澤哲さんにお越し頂きました。

一同:よろしくお願いします。

山田:サヘルさんはイラン出身で4歳の時に両親を亡くされて孤児院で育ちまして、その後養母に引き取られて日本にやって来るんですが、経済的に苦しい生活が続いて、一時は公園で寝泊まりするホームレス状態にも至ったと。
今は女優・タレントとして活躍しながら、児童養護施設も訪問していらっしゃるんですね。

サヘル:そうですね。

山田:今のVTR、サヘルさんにはどういうふうに映りました?

サヘル:すごく心が痛くなる言葉がいくつもあって。
「居場所がない」というのもそうですし、あと「家族というものがよくわからない」。「なぜ生まれてきたんだろう」という、 同じ人間としてこの世に命を授かったのに、なぜこういう思いをしなきゃいけないんだろうというのをすごく見て、心が痛みました。
やっぱり公園での生活も、自分も経験しているのもあるんですけれど。
私は養母と里親と一緒に生活をしていた時期があったんですが、屋根がなかったり、壁がないというその不安の中での一時的な生活でもすごく怖かったですし。
でも、居場所がないからそこで生活をせざるをえない。
彼の気持ちを考えると、本当は扉を開けて「ただいま」って言ったら「お帰り」っていう、その温かみのある家族が本当はいて…いるべきじゃないですか。

山田:そうですね。

サヘル:でも、それがいなくて帰る場所がないという。
居場所というのは帰る場所もそうだけれども、心を置く場所、その心の居場所すらないんだなというふうにすごく感じて、心が痛みました。

山田:こういうふうに社会に出て、さまざまな困難にぶつかる若者たちというのは、実際多いんでしょうか?

西澤:そうですね。とても多いんだろうと思ってるんですが、実はそこをちゃんと捉まえられてない。
彼らがどのような生活をしているのか。施設出たあと。
そういったところの追跡ができてないというのが、正直なところです。
追跡調査がないんですが、我々は養護施設に関係している関係者たちは、そういうふうな女の子の場合の性風俗店の就労であるとか、あるいは男の子の場合は路上生活とか、反社会勢力に入っているというような状況も含めて、非常に危惧をしています。

山田:その辺りのデータがありますので、ご紹介します。
施設を出た人たちのその後が分かる調査というのは非常に少ないんですけれども、東京都が4年前に行った実態調査です。
例えば進路の問題です。
施設出身の人の最終学歴を見ますと、およそ4分の1が中学卒。6割が高校卒。大学や短大卒は僅か6.6%なんですね。
一方で、東京都全体の大学などの進学率を見ますと65%。
明らかに差がある訳です。
働いている人の収入を今度は見てみますと、月収15万円未満がおよそ半数。
20万円未満の人が8割を占めています。
正社員ではなくて、非正規雇用で働いている人の割合が多い事も分かっています。
更に、生活保護を受けている人の割合も東京都全体に比べて、施設出身の人はおよそ4倍高いという数字になっています。
これだけ見てもかなり差があるなと感じますが。

西澤:この調査については1つ留意しておかなければいけないのは、調査対象になっている人たちのうちで 調査回答を得たのが2割程度。2割弱というような。
つまりあとの80%以上の人たちは、調査に回答しないという人もいたと思いますけれども、多くは今実際にどうしているか連絡がつかないといったような実態が、この背後にあるという事ですよね。

山田:といいますと、実態はもしかしたらもっと悪い状況かもしれないと?

サヘル:社会に出て、やりたい事も多分たくさんあるのに、そこのスタートラインに立てないというのはすごく歯がゆいですよね。

山田:このように困難を抱えがちな施設出身の若者たちに、どう支援していったらいいのか。
東京都内のある相談所を取材しました。

(VTR)

児童養護施設などで育った人たちを、専門に支援している「ゆずりは」。
施設の職員をしていた高橋亜美さんが、4年前に立ち上げた相談所です。
この日は両親の離婚が原因で施設で育ち、今も心の傷に苦しむ女性が訪れていました。

高橋:病院、最近は…。

女性:自律神経の問題じゃないかっていわれたんですけど。

女性:無理しないというか、本当につながっている人、本当に信頼できる人はそばにいるしさ。

「ゆずりは」に相談を寄せる人は年間およそ200人。
家賃が払えない。
望まぬ妊娠をしたが、中絶するお金がない。
生活に困窮したり、トラブルに巻き込まれるなど、内容は多岐にわたります。
「ゆずりは」では、弁護士や医師、行政などと密に連携。
相談の内容に合わせて専門家につなぎます。
相談者の多くは子どもの頃親から十分な愛情を受けられず、心に深い傷を負っています。

忍:おじゃましまーす。

渡辺忍さん、36歳。
おととしの暮れ、住む家もなく、所持金僅か30円の状態で駆け込んできました。

スタッフ:2000円返済したということで。

忍:はーい。全然減らないね。

スタッフ:ゆくゆくはこれがゼロになるように!

忍:はい。

自立した生活を取り戻すためのサポートが続いています。
渡辺さんは小学2年生の時に両親が離婚。
その後、一緒に暮らしていた母親の行方が分からなくなり、児童養護施設で育ちました。
アルバイトでこつこつと学費を貯め、大学進学を目指す、頑張り屋の子どもだったといいます。

佐藤:忍くんは真ん中にいます。

スタッフ:やりたいことがあったんですかね。

佐藤:やりたいことが見つけたいって。
だいたい高校を出たら就職なんだけど、学校へ行って、自分のやりたいこと見つけたいという話をしてましたね。

18歳で施設を出る時の渡辺さんの思いがつづられていました。
「あっという間の10年。とても早かった。いつの間にか僕も社会に出て、大人の仲間入りをする。いろいろと不安がある。がんばるぞ!!」。
渡辺さんは見事、第1志望の大学に合格。
学費と生活費を稼ぐため、飲食店で毎日7時間働きながら、大学に通う生活が始まりました。
積み重なっていく疲労。
大学2年のある日、渡辺さんはふと目にしたパチンコ店に立ち寄ります。
生活費を少しでも増やしたい。そんな誘惑にかられたのです。

忍:現実逃避みたいな感じです、ずっと。
そのギャンブルでなんとか金を工面しようと、仕事しながらも、勝ってなんとか貯まればいいかなと思ったんですよ。

しかし、思うようにはいきませんでした。
負けた分を取り戻そうと焦るあまり、貯金や奨学金をつぎ込み家賃も滞納するようになりました。
大学は中退。アパートを出て、公園でホームレス生活を送るしかありませんでした。
僅かな所持金も底をつき、渡辺さんは最後の手段と思って自分が育った施設に連絡。
「ゆずりは」につないでもらったのです。

高橋:もう疲れたというのと、これ以上こういう生活は続けられないっていう判断をしたんだと思います。

「ゆずりは」はすぐに連携する弁護士に相談し、渡辺さんが抱えていた借金や滞納金を整理。
同時に安心して生活できる住まいを確保。
地元の不動産屋と交渉して、事務所のそばに安く部屋を借りました。

忍:ジャーと掃除機はゆずりはから借りました。

取材者:居心地は?

忍:いいです。

特に心配だったのは渡辺さんのお金の管理です。
再びパチンコにのめり込んでしまわないか、一緒に家計簿をつけて見守る事にしました。

高橋:仕事は働けてやっているんだけど、お金のやりくりがうまくできなくて、最終的にホームレスの状態になってしまったということがあったので、生活を立て直していくためにも、お金のところはちょっと一緒にやっていこうというとことはそもそもの支援というところで。

今、渡辺さんは日給7,000円の派遣の仕事を見つけ、地道に自立への道を歩もうとしています。
しかし、パチンコはなかなかやめ切れずにいました。

高橋:たとえば1万6000円。食費として渡したお金を数日でたぶん1日で使ってしまったっていうところで。

不安定な派遣の仕事。
経済的な不安から、早く蓄えを作りたいとつい足が向いてしまうのです。
「このままでは「ゆずりは」の人たちにも見放されてしまう」
渡辺さんは、家族のように無条件に頼れる人がいない事に、不安を募らせていました。

忍:ただこの先どうなるんだろうっていう。
ここはとりあえず助けてくれてるところ。
あとはもう自分でなんとかしていかないと先に進まないですよね。

この日、「ゆずりは」を訪ねた渡辺さん。
どうしようもなく不安な気持ちをぶつけました。

忍:亜美さんは自分の娘とか息子とかに対していうのはどうゆうあれで接しています?
仕事でやっているのは実際血がつながっていない、やっぱりそこらへんで感情というか気持ちの入り方ってちょっと違ってくると思うんですよ。

高橋:全部一緒ではないと思うよ、やっぱり自分の子どもと。
だけど私がこれだけは言えるのは、自分のこどもは愛おしい。
「ゆずりは」で出会ってきた忍くんももちろん愛おしい。
それは絶対うそはない。

忍:ここぞっていう時は最大限の愛情を注ぐでしょ。
もうここはもう娘のピンチだっていう時には。

高橋:それはもちろんやるし、誰のときでもやるよ、いつも私たちも十分に忍くんが求めるときに100%対応のできるとは全く思わないから不足感を感じさせて申し訳ない部分もある、でもここぞという時はやるよ。

たとえ親から愛情を受けられなくても、本気で向き合ってくれる人はいる。そう気付いた渡辺さん。

高橋:ありがとね。はい、おやすみ!

忍:おやすみなさい。

高橋:明日もよろしく!

忍:そういうふうに接してもらいたかった。
小さい頃からそういうのがいえなかった状況だからと思う。
36とかでそのぐらいになっていつまでも親に相談するとかって、世間体にしてみてもそんなにないと思うんですよ。

高橋:ずっと子供時代にさかのぼっての、親のもとで暮らせなかったとか、お父さんお母さんと一緒に普通の家庭のように生活したかったとか、いろんな思い、いろんな満たされなさのことがやっぱり根底にあってそこにいきつくわけだから、そこの要因となるものを、忍くん以上に理解しないとわかってないと、本人はそうじゃないといったりするし、わかってないと、よりそったり応援したりとか、こういうことがあるからやっぱり繰り返してしまうんだと根気よくつきあえないと思うんですね。

5日後。朝5時に起きて仕事に向かう、渡辺さんの姿がありました。

忍:亜美さんに会ってやってくれていることを対して裏切っちゃいけないなという思いは結構強い。
見放さないでくれていたみたいな、それこそ死に物狂いでやりますという気持ちでいますから。

(VTR終了。スタジオでのトーク)

サヘル:渡辺さんのおっしゃった「血のつながり」だったり、「見放さないでいてくれた」というその言葉、すごく心に突き刺さります。
私は7歳の時に今のお母さんと出会って、養子縁組みが成立して、私は血のつながりがない彼女が自分の娘のように愛情を注いでくれてるんですけれども、やっぱり施設で育っているためその施設の中でいた時って正直、名前で呼んでもらう事もそんなになかったですし。
本当は親がもともといた人間としては、誰かに頭をなでてもらいたかったり、だっこしてもらいたい事って、すごく愛情が欲しいんですけれども。
でも働いてらっしゃる方もやっぱり、1人の大人が多くの子どもたちの面倒を見ていたりする事もあるので、愛情が均等に回るかといったらそうでもないんですね。
そうすると、正直だんだんと愛情に飢えてしまう自分がいるのが分かるんですよ。
その中で生活していくと、ついてきてしまう癖もたくさんあって。
例えば物を見たりするとどこかに隠してしまったりとか、ご飯が出ると、お菓子が出ると、ほかのおねえちゃんたちにとられないように自分でポケットに入れて、夜こっそり食べてしまったりだとか。
それを今のお母さんが私を引き取った時に、それをやってしまうんですよね。
その時に優しく彼女は私に持ってる癖とか体についてしまったそういうものを、全部一個ずつ直してくれた。
それはやっぱり、愛情があったからだと思うんですけれども。
確かに36歳の大人ではあるんですけれども、どこかで自分の中にまだ大人になりきれていない子どもがいるんだろうなと。

山田:そこをね、「ゆずりは」の高橋さんに受け止めてもらって、その時にしっかり自分の気持ちをぶつける場所があるというのはね。

サヘル:それはやっぱり、高橋さんが目と目を見て「ちゃんと見てるんだよ」というのを、示してあげたからだと思うんですよね。

西澤:やっぱり乳幼児期大事な大人、まあ親であったりそうでない場合もありますけど、その子どもに愛情を注ぎますよね。
そうする大人の目を通して、自分というのは何なのかみたいなのを見いだしていく。
それが思春期のアイデンティティーとかまでつながっていくんですよね。
だからこういう虐待受けたり、養護施設で暮らしている子どもたちっていうのは、そういうふうな部分が基本的に足りてない。
だから自立というのはいろんな自立がありますけども、経済的だとか職業的だとか。
でも 根本にある精神的自立というのは、大事にされて愛される、そういった依存欲求が十分に満足されることから始まっていくんだと思うんですね。
それが欠けているという部分が、よく今の渡辺さんの語りから見て取る事ができましたね。

山田:でも、渡辺さん自身は自分が愛情が足りていないという事を客観的にも分かっている。

西澤:だから、分かってるからこそ苦しいんでしょうね。

山田:というのは?

西澤:自分が36として、社会的にはこうであらねばならないというのは分かってる。
だけど心の中にある、子どもがそれを許してくれない。
そういう事が分かってるので、とてもとても苦しい状況に置かれているんだと思いますよ。

山田:自分の中でいろんな、その場その場での葛藤があるんでしょうね。

西澤:だから依存欲求、愛情欲求が満たされてない。
恐らくパチンコ…ギャンブル依存ですよね。 ご本人は生活費をなんとかするためだとおっしゃってますけど、根底には依存欲求の問題があるんじゃないかなと思います。

サヘル:寂しさなんだなってすごく思いますね。

山田:あと施設出身の人たち、社会に出て問題にぶつかりやすいと。
ほかの何か理由というのがあるんでしょうか?

西澤:ごくごく単純に言って、一般家庭である程度適切に養育を受けた人たちであっても、今18歳っていうのは自立の年齢ではないですよね。
こういうふうな社会的養護というのは、児童福祉法の壁で18歳未満までしかケアしないと。
そうなると、18歳になったらもう、あなたは全部これから自分でやりなさいよみたいな、極めて残酷な状況に置かれる事になる訳ですよね。
その時に帰る場所がない、あるいは頼る場所がないという辺りから、性風俗店やストリート、路上生活にという事になってしまっているというのが実態ですね。

山田:なかなかそうなると自立というのは、難しいんでしょうかね?

サヘル:頼れる人がいなかったり、寄り添って下さる方がいないと。なかなかないので大変です。

山田:そうなると、自分が育った出身の施設を頼れるんじゃないかと思いながら、実際は頼れていないという現状をどう見たらいいんでしょうか?

西澤:制度的にはアフターケア事業というのが、それぞれ児童養護施設には課せられてますけども、実態としては今、本当に虐待を受けて大変な問題、精神的問題、行動上の問題を抱えた子どもたちが、たくさん入ってくる施設で特に慢性的な人手不足、人員不足ですし。
今、現に目の前にいる子どものケアだけで手いっぱいというのが実情だろうと思いますね。

山田:そういうしわ寄せの中で、子どもたちの生きづらさにつながってしまっているというのがね。これなんとかしないと。

サヘル:そうですね。
「ゆずりは」みたいな場所がもっと たくさんあったら、本当はいいんですけれどもね。

山田:さあ、明日ですが、ある児童養護施設で始まった子どもたちを支える取り組みをご紹介します。
今日はどうもありがとうございました。

2人:ありがとうございました。

カレンダーにもどる