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シリーズ 子どもの虐待 第5回 完璧な子育てなんてない ―育児漫画家・高野優さん―

この放送回の番組まるごとテキストを掲載しています

  • 2013年5月20日(月曜)再放送2013年5月27日(月曜)

出演者
山田 賢治キャスター (司会)
高野 優さん (育児漫画家・絵本作家)

シリーズ 子どもの虐待 第5回 完璧な子育てなんてない ―育児漫画家・高野優さん― の番組概要を見る

「漫画を通して子育てに悩む親を救いたい」

増え続ける子どもへの虐待。全国の児童相談所に寄せられる相談は年間およそ6万件。過去最多を記録しています。

番組のカキコミには、育児のストレスや孤独から虐待と隣り合わせにいる親の苦悩が、次々と寄せられました。

「怒鳴ったり、叩いたりを繰り返してきました。 私はなんてひどい母親なんだろう」

「ママ友もいない中、24時間パニックの乳飲み子を、仕事が忙しい主人のいない中、毎日が『地獄』でした」

漫画を通して子育てに悩む親を救いたいと、活動を続けている人がいます。3人の娘を持つ高野 優さんです。

子どもの頃、両親から言葉の暴力を受けていたという高野さん。その傷を抱えながら子育てに奮闘する様子を綴った漫画は、親たちから絶大な人気を得ています。

高野:私がすごくつらかったでんす、子育て中に。人に頼ったり甘えたりしてきたことがなかったので、全部自分で抱えちゃったんですね。

今、高野さんが力を入れているのが、講演活動です。

高野:夜、頭抱えて泣いちゃったときもあったんですが、無駄じゃなかったなって。

ユーモア溢れる漫画を交えながら語る子育てトークで、会場はいつも笑いと涙に包まれます。

親が子どもに手を上げてしまわないためにはどうすればいいのか。
育児漫画家の高野さんと共に考えていきます。

山田:ハートネットTVです。5月は「子どもの虐待 どう救うのか?」と題しまして、シリーズでお伝えしていますが、今日が5回目です。虐待の手前でどうやったら踏みとどまることができるのか、親の立場から考えていきます。
ゲストをご紹介します。育児漫画家の高野 優さんです。高野さんはご自身の育児体験をもとに、全国で講演活動をされていますが、虐待はどんな印象がありますか。

高野:講演会の仕事をさせていただくようになって12年が経つんですが、お母さん方の声で「つい叩いちゃう」、「つい怒鳴っちゃう」という声が多くなっているような気がします。

山田:今日は虐待の問題を考えるのに当たって、実際に子育ての悩みを抱えている方、かつてつらい育児を経験してこられた方々に集まっていただきました。
まずは高野さん、ご自身も子育てに悩んでいた。今も?

高野:(頭を抱える仕草をしながら)今も、こんな感じ(笑)

山田:ということで、高野さんの生い立ちも含めまして、講演と同じスタイルで漫画を描きながらお話していただきます。

(高野さんのミニ講演)

高野:私の子どもの頃の話を少しさせてください。よくあるパターンと言われてしまえばそれまでなんですが、できのいい姉が6歳上にいるんです。そして、親から言うとできの悪い妹、これが私です、こんな感じの野生の猿みたいな。
親が「お姉ちゃんはすごい、何でもできる、さすがだ」、「それに比べて、どうしてお前は何もできないんだ。これもできない、あれもできないの」って。最初こそニコニコ笑ってはいたものの、子どもって親しかいないんですね。一番身近な親にずっと言われ続けると、どんどん萎縮しちゃって、自分の居場所がわからなくなってしまったんです。いろいろな刃のような言葉をずっと言われ続けていたんですね。
大人になって思うのが、叩く、殴るという虐待だと身体にあざが残る、言葉の虐待だとあざが残らない代わりに、胸の奥にすごく重い刃が残るんじゃないかなって。
そして私が一番恐れていたのは、虐待の連鎖です。実際に自分が親になったときに、やっぱり長女に対して、口うるさくガミガミ言うようになった時期があったんです。長女がちょうど2歳だったんですが、保育園の先生から「最近どうしたんでしょう、ちょっと目に力がないみたいですよ」って言われたんです。子どもを見ると、それまでは生き生きとして、いつも歌ったり踊ったり、陽気な娘だったんですが、私が口うるさく言うことによって、どんよりし出したんです。
そのとき、下の子の発達が遅くてリハビリに通っていたんですね。そうすると生活のすべてが下の子中心になってしまうんです。それで上の子に我慢をさせてしまうことも多くて、かといって生活も変えられない。どうしたらいいかわからなかったんです。
リハビリ中の娘と部屋で2人きり、困っていたある日のことなんです。いまだに忘れられないことがあって。私が、つい子どもの前で泣いてしまったんですね。子どもの前で泣くなんてダメなことは百も承知なんです。
ボロボロ泣いてしまったとき、次女は肘しか動かなかったんですが、肘だけで私のもとまで一生懸命やってきたんですね。そして温かくて小さくて柔らかい手で、私の手と膝を2回叩いたんです。ニッコリと笑って手を叩いてきた瞬間に、「何を迷っていたんだろう、私は今まで」って。虐待の連鎖に怯えていたことも確かだけれども、子どもはここに確かにいる。自分のことを選んできてくれたかもしれない子どもがここにいる、そして私のもとにやってきてくれる。この笑顔、他に求めるものは何もないなって思ったんですね。
長女に対する小さいこと、それこそ箸の上げ下ろしから鉛筆の持ち方とか、しつけとしては大事なんだけれど、それより大事なことがたくさんあるなって。
私はこの子を守るために、この子に会うために、この子を育てるために、この子を愛情たっぷりに育てて巣立たせるために、私は今いるのかなと思ったんです。それから、子どもに対する接し方も違った自分がいたんですね。だから今日はそれを伝えられたらいいなと思います。

山田:ありがとうございました。

(一同、拍手)

山田:永須(えいす)さん、真っ先に泣いていましたね。

(永須千晶さん 2児の母。保育士の経験があり“子育てのプロ”とみられがち。育児に完璧を求めてしまう)

永須:まったく一緒だなと思って。子育てって、お母さんって本当に孤独。頼れないから。私は地方出身で、閉ざされた世界で子育てしてきたから、すごく気持ちがわかる。

(仁野栄里香さん 1児の母)

仁野:うちの子もリハビリに通っていて、発達が遅いんです。リハビリに通う大変さもあるし、他の子と比べてしまうこともある。それがさらに自分を孤独にさせるっていう気持ちがわかります。

高野:比べちゃダメってわかっているんだけれど、やっぱり比べちゃうよね。

育児の孤独

~虐待の背景には親のどんな悩みがあるのでしょうか? ここからは、スタジオのみなさんに書いてもらったアンケートをもとに考えていきます。最初のテーマは「育児の孤独」です~

山田:「夫の転勤で見ず知らずの土地へ。友達も親戚もなく携帯もネットもなく、子どもと引きこもった。子どもの泣き声が自分を否定しているようで、イライラして叩いたり怒鳴ったり、部屋に閉じ込めたりして。そんな自分は親失格と責めた」

以前、子育てについて相談できる人もいなくて、子どもを叩いてしまった、ということですが、なぜだったんでしょう?

(柳谷和美さん 3児の母。長男が9か月の頃泣きやまない息子をたたき「母親失格」と悩み続けた)

柳谷:今、長男が21歳なので21年前、子どもがどうして泣くのかとか、そんな知識もまったくないまま、流れるように親になって。「ワーン」って泣かれると、泣きやませることに必死になってしまって。でも、抱っこしても揺らしても泣きやまないし、「何が気に入らないのよ! もう、いい加減にしてよ!」って。私をいじめているみたいに思っちゃって、だんだんおかしくなってきて、「もう、泣かんといて!」みたいな感じで、バンッと叩いて。
誰かに助けてほしいんだけど、「助けて」と言ってもいけない、お母さんなんだから子どもをあやせて当たり前と思ってたので、それができない自分は「ダメな人間だ」ってすごく責めてました。だから家に引きこもるしか……。

高野:わかる。私も子どもをあやしても泣きやまないから、自分も泣いて、2人で号泣して。下の階の人から、棒か何かで「ドンッ」って天井を突かれたことがあって。家でも泣けない。
一日中誰とも喋らなくて、大人と喋りたくてコンビニに行って「お釣りです」って渡されただけで、大人と会話した気分に。

柳谷:私もお肉屋さんと喋りたくて、10円がコロッて転がったから、「活きのいい10円ですね」って言ったら、知らん顔して去って。「えー! 喋ってー!」みたいな。

高野:あの孤独さはなんだろう。ものすごく孤独なんです。

(徳倉康之さん 2児の父。共働きのため長男が4か月のときに育児休暇を取得。育児の難しさを実感)

徳倉:僕、長男が生後4か月から1歳までの8か月間、育児休業を取得して。最初の2か月は、「何の修行だろう」と。何をしても泣き止まない。お腹が空いているのか、母が恋しいのか、外に行きたいのか、眠いのか、オムツ換えてほしいのか、まったくわからない。本当におっしゃったみたいに2日間大人と喋ってない、みたいな。宅配便が来て、「ハンコです」「ありがとうございます」って、大人の会話はそれしか成立しなかった時期とかあって。育児ノイローゼになる女性の気持ちというのは、僕も体験して、まさにそうだなと思いました。

山田:泣いて何か主張しているんですけど、わからないですからね。

高野:以前、臨床心理士の先生に聞いたお話で、すごく印象に残っている話があるんです。 お母さんがいますよね、「怒り」というのは、実は「困り」だと聞いたことがあって、すごく深いなと思ったんです。もしかしたら、虐待をしちゃう、手を上げてしまう、なじってしまう人は、怒っているんではなく、困っている人。
本当に、乳幼児を育てているお母さんお父さんは、いっぱいいっぱいだと思うので、今は甘える時期、頼る時期だって割り切って、ヘルプを求めるのもいいんじゃないかと思うんです。

~子育てがつらくて、いっぱいいっぱいなときは、周りの人に甘えて思い切って助けを求めよう。きっと誰かが手を差し伸べてくれるはずだから~

理想の育児がプレッシャーに

山田:親がイライラしてしまう背景として、育児の孤立、または孤独が原因ではないかと考えてきましたが、他にアンケートで「理想の育児に縛られること」を理由に上げる方もいらっしゃいました。

「幼児教育の仕事をしていたため、どうしても育児のプレッシャーを感じてしまう。そのために子どもにもつらく厳しく接してしまい、冷静になったときに、申し訳なくなり、泣けてくる」 

これは、永須さんですね。

永須:「プロでしょ」っていう周りの視線とか、「悩みないでしょう」とか「いいわね」とか、一言一言がグサグサと刺さってきて。仕事は仕事だけれど、母親業はみんなと一緒だから、一緒に見て欲しい。そういう視線があるから、娘にできなくて当たり前ってわかっていても、「なんでできないの? なんでこれができないの?」って厳しく出て。暴言の数々もあって親失格だし、幼児教育をしている葛藤もあって、本当に子どもには申し訳ない。

(吉岡杉子さん 3児の母。元幼稚園の教員。第一子が生まれたとき育児書に頼り小さなことでも不安になった)

吉岡:私も幼稚園の教師をしていたんだけれど、やっぱり「こうじゃなきゃいけない、こうしなきゃいけない」と思って。長男と接したときに、すごくしんどくなって「やれない……」って。泣かれるたびに「どうしてどうして?」と思ったり、熱が出るんじゃないかとか、いろいろ思って、育児書を片手に一生懸命見ていたんです。でも、いっぱいいっぱいになって、自分が。「この子に私が合わせよう」と思ったんです。それで、子どもに合わせていくと、楽になりました。

(吉田大樹さん 3児の父。シングルファーザー歴3年。子どもの自主性を尊重するよう心がけている)

吉田:子どもに「こうなって欲しい」っていう気持ちはあるんだけれど。親が何でもかんでもやりなさいって、ドリルを渡して「やりなさい」って言うんじゃなくて、子どもが「友達にお手紙を書きたい」、「お手紙を書きたいから字を覚えなければいけない」って、自分の「したい」という気持ちが湧き出てくるんですね。それは、親からすれば苦々しい思いをするときもあるけれど、耐えて待たなきゃいけない。それも親の仕事かなって思います。

高野:完璧な子育てというのは存在しないんですね。不思議なのが、私もそういうところがあったんですが、お母さんになったら急に「優等生にならなきゃいけない」って思うんですね。でも、「ちょいちょい、よく考えてみて? 小学校のとき、中学校のときにどうだった?」って言ったら、私は全然ダメな子どもだったんです。なんで母親になった途端に「頑張らなきゃいけない」って思うのかと、ふと気づいたんです。
それで、「今まで何を目指していたんだろう」って。子育てってトライアスロンみたいで、ずっと先が長い。「いつまで私は理想を追い求めているんだろう」って思ったときに、疲れちゃって、完璧なことは無理だなって。
極端な話なんですけれど、清潔な環境があって、安心して眠れるような場所とおいしいご飯があれば、子どもはそれでいいんじゃないかな。なんで過度に色んなことを求めちゃうんだろうって、自分自身を振り返る機会を持つといいのかなと思います。

~挨拶ができなくても、お箸をちゃんと持てなくても大丈夫。子どもが育つ力はとても大きいもの。子どもを信じて温かく成長を見守ろう~

虐待の連鎖

山田:虐待の連鎖、これも虐待につながる一因になっているかもしれないということで、アンケートでも心配をする声がたくさんありました。

「幼い頃に、父から殴る蹴るなどがあり、私自身も長女が2歳から3歳の頃に、おねしょや飲み物、みそ汁などをこぼされたときに激しく顔を叩いてしまい、鼻血が出て我に返ったことがありました。後で、これが虐待の連鎖だと知りました」

このアンケートを書いてくださったのは、上野さん。

(上野佳子さん 3児の母。父親から虐待経験あり。子どもに虐待が連鎖することに不安を抱き続けてきた)

上野:「父のようになりたくない」と心に決めて結婚、そして出産を迎えたんですが、結局は繰り返している自分に、もう唖然としてしまった現実がありました。

山田:これはお父さんにされたことが、ご自身の行動につながったって思ってるんですか?

上野:やっぱり愛されてるっていう自信、記憶が父に対してはないので、どう我が子に接して愛してあげたらいいか、理屈ではわかるんですけど、実際子どもと向き合うと、どう関わっていいのかわからない、ということが数多くありました。
今3人の子どもがいまして、長女に対してが一番ひどくて、中1からこの4月まで不登校だったんです。幼少期の虐待が心に影響を及ぼしていたんだなと、かなり自分を責めましたし、娘に対しても、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

山田:田代さんは?

(田代ヨウコさん 2児の母。父親から虐待経験あり。17歳で出産。子どもを叩いた後自己嫌悪に陥る)

田代:小学6年生まで、ずっと虐待受けていて、いまだにお父さんが嫌いなんです。自分もカッとなって子どもに手を上げたりしちゃうんですけど、ふと我に返って子どもの泣いている顔とか、強く叩いたつもりはないんだけど赤く腫れあがっていたりすると、「ごめんね」ってなって……(泣き出す)。精神的に不安定な時期もあって、自分自身も傷つけることもあって。居場所がないんじゃないかって、殻に閉じこもって出てこれなかったり。
子どもの顔を見て「何やってるんだろう」、「こんなママでごめんね」としか出てこなくて。私もお父さんの姿を見て育ってるから、子どももそうなったら本当に嫌だな。今はすごく後悔しています。

高野:ありがとうね、話してくれて。

山田:吉澤さんも、虐待をされてきた。

(吉澤有香里さん 2児の母。厳しい家庭で育ち自分の子どもを“しつけ”で叩くのは当たり前だと思っていた)

吉澤:親の機嫌を損ねたら叩かれることが日常的にあったので、それが当たり前だと思って育ってきて。子どもを自分の感情で怒ることが、私の中で当たり前で、行き過ぎたしつけがあったんです。でも、夫が「叩かなくてもいいんじゃない?」って言ってくれたんです。
私は厳しい家庭で育ったので、叩いているつもりはなく「この子に教えている」という感覚で、ペチッとしたことがあるんです。でも、ペチッもドンも結局は虐待なんですね。
子どもの気持ちに寄り添えてない自分が見つかって、「口で言ってもわかるよ」と夫が気づかせてくれたので、そこで私の手を上げる習慣というか、あったものに気づいたんです。それまで習慣だと思ってなかったんですね。

山田:番組のホームページに、子育てをする親への支援を訴えるカキコミもありました。ご紹介します。東京都にお住いの40代、ごうくんさんです。

親の子育て支援の欠陥と虐待
「真面目な親ほど子育てに真摯に取り組むのですが、それが空回りして虐待につながっているように思います。虐待は親から子、子から孫へと代々連鎖するケースも見られますが、親側が適切な支援を受けられれば連鎖は止められるように感じています」

上野さんはどういうふうにしてその連鎖を。

上野:私は、叩いた後に虐待専門の電話相談に電話をして。いろいろ受け止めて聞いてくださるんですね、そちらのスタッフの方が。もうそれだけで気持ちが落ち着いて。その方から「今度は叩きそうになったら電話してね」と優しく言っていただいて。聞いていただいて苦しみをわかっていただいたというだけで。の連鎖を。

(辻 ゆきこさん 1児の母。シングルマザーとして育児の孤独を経験。子育てに悩む親たちを支援)

辻:それを周りにやってもらえるのが一番いい。なかなか自分のことって客観的に見れないので、自分がカーッとなっているときに止めてもらえない。自分が「もう無理だ、泣きたい、つらい、苦しい」というときに、誰かが「いいよ、泣いて」とか「代わりに見ていてあげるから、ちょっと休んでおいで」って。そういう人がそばにいるかいないかが、育児がつらいか楽しいかの別れ道だと私は思ってます。

永須:周りから言われる、受け入れてもらってからの一言って、すごく大事だなと思う。「いいんだよそれで」とか。「ちょっとやり過ぎじゃないか」っていうのを、優しくお母さん目線で言ってもらえたら、私も肩の荷が下りるっていうか、楽に子育てできる。

山田:田代さん、お友達の後藤さんの存在って大きいんじゃないですか?

田代:大きいですね。今いなくなったら、一気に崩れると思います。

山田:話、結構聞いてますか?

(後藤早百合さん 2児の母)

後藤:聞いていますね。結婚当初から全部聞いているんで。「きつかったら、言ってきてね」くらいに。

田代:「ここがムカつくんだよね」みたいな話を聞いてもらうだけで、自分の中でもスカッとする。で、そのまま子どものお迎え行ったりすると、「おかえり」って普通に言える。

山田:リセットがそこで、できるんですよね。

田代:もう、それでスッキリ。

高野:私も、子どもの頃に周りの方に恵まれたの一言に尽きるんですね。周りっていうのは家族以外なんですが。ひとつ忘れられないエピソードがあって。小学生のとき私は足も遅く、運動神経もないので、両親は姉の中学校の運動会に参加していたんです。仕事が忙しいご家庭も多かったので、親が来ない子は体育館でご飯を食べていたんですね。
そのときに、担任の先生が「うちの奥さん、間違ってお弁当を2つつくっちゃったよ」って言ったんですね。私は素直に「先生の奥さんは、おっちょこちょいだね」って話をして、「良かったら食べるか」って言われて、「嬉しい、いただきます」っていただいて。
5年生になったときもその先生が、「うちの奥さん、また2個もつくっちゃった」って言って、私も「奥さんは本当におっちょこちょいだ」って言って、また食べていたんです、無邪気に。
6年生のときに、また先生が「うちの奥さん」って。ふと見たら、先生のお弁当はシンプルで、卵焼きがあって、鮭があって、梅干しがある。それなのに、私のお弁当は、タコさんウィンナーだったり、オムライスにケチャップがかかっていたり、旗が付いていたり、可愛かったの。3年目にして初めて「これは奥さんが間違ってつくったんじゃないんだ」って気づいたんです。
家では冴えない自分だけれど、こうして見てくれている人がいる。たかがお弁当と思われるかもしれないんですが、私にとってはすごく大きくて。認められた、こんなに大事にされている、今言葉の暴力を受けている自分がすべてではない、と周りの力で学んだんです。だから乗り越えられた。本当に、その先生あっての。

山田:そういうふうに愛情をもらうと、それをきっかけにできるかもしれないし、自分の子どもに対しても周りの子どもに対しても、やっぱり気持ちが変わってくるでしょうね。

高野:そう思います。やっぱり自分のことを認めて、自分のことを好きで、自分を甘やかさないと、子どもにはできない。自分に厳しくて、自分にイライラしているから、子どもに当たる。よく、子どもにイライラするって言うけれど、実はちょっと違って、自分にイライラしていると思うんですね。自分のイライラを八つ当たりしない。すごくシンプルなんです。そこに気づくか気づかないか。子どもは何もできないから、子どもよりもちょっと物事を知っている大人が、接し方を変えていくしかないんじゃないかなって思います。

~子育て中は周りの人に助けてもらってばかり。だからこそ、今度は私の番。たくさんもらった優しさや温かさを誰かに渡すとき。みなさまのもとに、子育てのバトンが届きますように~

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