知的障害の基準
知的障害とは、知的能力の発達が同年代の人に比べて低い水準にあり、生活に支障が生じている状態です。医学的には、1)専門的な検査で測る知的機能が一定の水準を下回っている(目安としてIQ70未満)、2)年齢に応じた生活能力が十分ではなく、家庭や学校で不適応が続いている、3)そうした問題が18歳未満の発達期に生じている、以上の3つが揃っていることが診断基準となります。
一般的には知能指数(IQ)によって、軽度(IQ69~50)、中等度(IQ49~35)、重度(IQ34~20)、最重度(IQ20未満)と判別されます。しかし知能指数と日常生活能力は必ずしも一致しません。個人差も大きく、本人に合った療育を受けることで自立した生活や就労が可能になる人もいますし、日常生活に継続的な見守り・声かけ・支援が必要な人など、さまざまです。また自閉スペクトラム症やてんかんなど他の障害を併せ持っていることもあり、それぞれの特性を踏まえた対応が必要になります。
療育手帳と自立生活
知的障害がある場合、自治体が発行している「療育手帳」を取得することで、福祉サービスが受けやすくなります。現在、手帳を持つ知的障害児・者の数は109.4万人、そのうち施設入所者の数は13.2万人(全体の約12%)です(令和3年版「障害者白書」)。
1990年代以降、「施設から地域へ」というノーマライゼーションの機運が盛り上がり、多くの知的障害者はグループホームなど地域の住まいで暮らすようになりました。しかしまだまだ自立生活を支える仕組みが十分に進んでいるとはいえず、「親亡き後」も安心できる支援体制づくりが課題とされています。