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番組ダイジェスト

筆談が変わる

2014年11月23日(日)放送

聞こえない人のコミュニケーションを支える筆談。
この筆談を、もっと手軽にできるようにしたアプリケーションが開発され、
全難聴大会で報告されました。

新しい筆談アプリは、
スマートフォンやタブレットの画面に指で文字が書けるので、
キーボードが苦手な人にも簡単に使えます。
遠くはなれた人とも筆談ができるので、電話としても使えます。
先端技術でコミュニケーションのバリアをなくす新しい試み。
その可能性を探りました。

10月25日から3日間、
三重県四日市市で、第20回となる全国中途失聴者・難聴者大会が開かれました。
「要約筆記派遣事業」や「難聴女性の差別解消」などをテーマにした分科会では、
盛んな意見交換が行われました。
中でも、参加者の関心が高かったのが、
「情報文化」をテーマにした第1分科会です。

そこで報告されたのが、筆談を支援するアプリケーションです。

(参加した要約筆記者)
私、要約筆記者なので、ふだん聴覚障害者の人と話をするときには文字で、
紙とペンでやるのですが、手書きというのが手軽にできるのがすごく敷居が低くて、
一般の人がすぐに使えるんじゃないかなと思いました。

このアプリ、できるのは筆談だけではありません。
人の声を文字にする音声認識機能もついています。

(タブレットに向かって話す男性)
あさって1時に東京駅で会いましょう。

声が変換され活字で表示されました。

(参加者)
音声を文字にして聴覚障害者に伝わるということは、
すばらしいなと思いました。
私の生きている間にそんな時代がくるのかなと思って。

このアプリをすでに使いこなしている人がいます。
仙台市の主婦、松本千賀子さん。
今日は友達のお祝いのために、花屋にやってきました。

早速手筆談アプリを使って用件を伝えます。
松本さんは、よく使う言葉をあらかじめ登録しています。

(タブレットの表示 「筆談でお願いします」)

(松本さん)
すみません。お願いします。

(タブレットを差し出す松本さん)

(松本さん)
指で書いて大丈夫です。

(「ご予算は」と書く店員)

(松本さん)
予算はだいたい…

(松本さん、「5千円以内」と書く)

松本さん、手書きが面倒なときは音声認識機能を使って会話します。

(松本さん)
今はバラがきれいな季節?

(マイクに向かって話してくれる店員)

(店員)
今の時期はバラがきれいです。

(松本さん・インタビュー)
健聴者の中にも書くのが苦手な人もいるので。
マイクを差し出すと、
書かなくてもすぐにリアルタイム的にできるのも魅力あります。

大会ではもうひとつの特徴、電話機能についても話し合われました。

(デモンストレーションをする男性2人)

(男性)
あっちで手を挙げています。
彼に僕が電話をします。
皆さんの立場で、彼は聞こえない。
僕は健聴者です。

(離れた場所にいる男性の持つスマートフォンの画面に、相手の書いた文字が映し出されていく)

インターネット回線を使って、まるで電話のように、
遠くの人とも筆談のやりとりができます。
相手の書いた文字がリアルタイムで表示されていきます。
音声を活字に変換した情報も、遠隔地まで送ることができます。
書かなくても、話すだけで会話が可能です。

全日本難聴者・中途失聴者団体連合会も、
試作段階からモニターを募るなど、このアプリの開発に協力してきました。

(全難聴理事 川井さん)
言葉が文字になってくれれば、私の目で見られます。
相手の意図する言葉がなんであるか理解できますので、
この方式が欲しいと思いました。

筆談アプリを開発した、三浦宏之さんです。
以前は、イベントの司会の仕事をしていました。
あるとき、ろう者が多く出席する結婚式の司会を頼まれました。
そこでの経験が、人生を変えるきっかけになったといいます。

(三浦さん)
会をつかさどる司会者なのに、僕の話すことが何も通じない。
おもしろいことを言って、みんなに笑ってもらえないとか、
それはすごいショックでした。
それで、悔しいという思いよりも、すてきな手話を使っている方々と、
この人たちとコミュニケーションを取りたいなと思ったんです。

聞こえない人のことをもっと知りたいと思った三浦さんは、手話を学びました。
そして聴覚障害者と健聴者の社員を集め、
聞こえない人の暮らしを支える会社を16年前に起こしました。

ニーズが高かったのは、代理電話サービスです。
聞こえない依頼主に代わって、用件を伝えます。

画面に映っているのが依頼主です。
その依頼を聞いて、通訳者が代わりに電話をかけます。
今回の相手は歯医者です。

(パソコンの前の通訳者、電話をかける。パソコンの画面には依頼主)

(通訳者→歯医者)

私、今耳の不自由な方の代わりに通訳でお電話をしております。
プラスボイス代理電話サービスと申します。
お世話になっております。

(依頼者の手話を読み取る通訳者)

(通訳者→歯医者)
診察時間の変更をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか。
朝の一番を希望しているのですが。

(歯医者側の話を手話にする通訳者)

(通訳者→依頼者 手話で)
10時半ではどうですか?

(通訳者→歯医者)
いつのでしょうか。

(通訳者→依頼者 手話で)
12月3日と言っています。
水曜日です。

(通訳者→歯医者)
はい、大丈夫です。

(通訳者→依頼者 手話で)
12月3日、水曜日、10時半にいらしてください。

(依頼者)
わかりました。

通訳が終わった後、三浦さんがブースに入ってきました。
利用者の満足度や要望を手話で確かめます。

こうした中で生まれたのが、筆談による電話というアイデアでした。

(三浦さん)
活字よりも気持ちを伝えること、自由に絵を描いたり、
絵で表現したりすることもできる。
色を変えたりすることもできるので、
それで心がより通じ合えればいいのかなと思っています。

無事にプレゼントの花を買い終えた松本さん。
今度は夫の隆一さんに筆談電話をかけます。
松本さん夫婦は、これまで携帯のメールを使っていました。
しかし、メールは着信を知らせるバイブレーションがすぐに切れてしまうため、
連絡が来たことに気が付かないこともありました。
しかし、このアプリなら電話と同じように呼び出しを続けます。
「今話したい」という気持ちが伝わります。

隆一さん、すぐに電話に出てくれました。
待ち合わせ場所で、スムーズに落ち合うことができました。

(隆一さん)
前だとメールだけだったから、待っているあいだがストレスになったけど、
今回はよかったと思います。
メールだとなかなか返事が来ないときもあるので、
やっぱりこのアプリだと、(電話を)かけるときに相手も書いてくれるから、
そういうときはいっしょに会話ができるのがすごく便利だと思います。

(三浦さん)
いちばんうれしいのは、家族のコミュニケーションですね。
健聴者のご両親で、お子さんがろう者だったり、
その逆で老人性難聴のおじいちゃん、おばあちゃん。
そういった方とのコミュニケーションを、
もうあきらめちゃっている部分がたくさんあると思うんですよね。
この手書き電話を使えば、いつでも簡単に、
ふだん使っている方法でコミュニケーションができるので、
たくさんの方に知ってほしいなというふうに思います。

三浦さんは筆談の電話アプリをより多くの機会に使えるよう、
取り組みを進めています。
この日訪れたのはカード会社です。

カードの本人確認や客からの問い合わせは、電話で行われます。
しかし、聞こえない人にはそれができません。
そこで三浦さんは、聞こえない契約者との連絡に応じるサービスを行いたいと提案しました。

筆談電話を使うとどうなるのか、三浦さんの会社の社員が聞こえない人の役になり、
イメージしてもらいます。

(三浦さん)
今日はどのようなご用件ですか。

(タブレットに、カード紛失→ストップ、の文字)

(カード会社担当者)

ちゃんと変換しますね。

(三浦さん)

わかりました。
それでは、お名前とご住所、生年月日を教えてください。

(タブレット画面に、名前と生年月日が表示される)

(三浦さん)
こんな感じですね。
電話と変わらないですね。
質問した内容については、答えていただくことができて、
これが照合できるという形なります。

(カード会社担当者)
確かにこれだと、健聴者の方と同じような本人確認が十分対応できますね。

(カード会社担当者・インタビュー)
我々クレジットカード会社というのは、お客様の大切な情報をお預かりしていますので、
セキュリティーの保護というのは、まず最優先というところがあります。
その上で、聴覚に障害をお持ちの方については、十分な対応ができていない、
という問題意識はずっと持っておりました。
お客様にとっていいものであれば、導入に向けて検討していきたいと考えております。

(三浦さん)
企業を訪問して歩いて、
「聴覚障害者のお客さんの対応に困っていませんか」と質問すると、
たいがいの企業は「困っていない」と答えます。
たいがいの企業は「筆談があるので困っていない」とお話しになります。
ただこれは、障害者の側からすると、仕方なく筆談をしているんですよね。
受付に窓口にこの手書き電話があって、それに音声変換がついていると、
よりたくさんの情報でコミュニケーションができる、ということになります。
ですから、企業の窓口であるとか、コールセンターに、
このツールを是非どんどん導入していきたいなと考えております。

聞こえないために、あきらめていたおしゃべりや電話。
それが誰にでもできる時代が近づいています。

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