ハートネットメニューへ移動 メインコンテンツへ移動

ろうを生きる 難聴を生きる「デフラグビー日本代表の挑戦(後編)」※字幕

    聴覚障害者のデフラグビーの世界大会が、4月にオーストラリアで開催されます。国内での強化合宿や練習試合に挑む日本代表チームの姿を2週連続で紹介する後編。ろう者と難聴者で構成されている代表チーム。主力選手として期待されているのが難聴の土田選手です。しかし手話を勉強中のため、やりとりがうまくいかずミスを連発。手話でろうのチームメイトと連携をとることができるのでしょうか?奮闘する選手たちを追いました。

    出演者ほか

    【語り】佐田明,高山久美子

    番組ダイジェスト

    デフラグビー日本代表の挑戦 後編

    「クワイエットジャパン!」

    グラウンドに集まっているのは、聴覚障害者のラグビー選手たち。実は、ある大会に挑む日本代表のメンバーです。聞こえないラガーマンによるデフラグビー。その世界大会が今月(4月)オーストラリアで開かれます。

    photo

    2002年、ニュージーランドで初めて開かれた世界大会、ルールは健聴者と同じです。前回、日本は7人制ラグビーに出場し、見事、準優勝に輝きました。

    監督 落合孝幸さん
    「世界大会の目標は、やっぱり優勝を目指したいと思います。」

    しかし、代表チームには課題が浮き彫りになります。その一つが、高額な遠征費。監督の落合さんが資金集めに奔走します。様々な企業や団体に声をかけますが、目途が立ちません。

    photo

    もうひとつの課題が、手話でのコミュニケーションです。日本代表の核として期待を集めた、難聴の土田将弥(つちだ・しょうや)選手。これまで地域の学校で育ち、手話を使う機会がありませんでした。そのため、ろうの選手たちとの意思の疎通が図れず、戸惑う場面が目立ちます。

    「なんでやねん。」
    photo

    代表チームとしての最初の強化試合。土田選手は、手話でのやりとりが理解できずミスをしてしまいました。

    「みんな気持ち入ってる?入ってる?やる気あるの?」

    番組では、国内での合宿や強化試合を3か月にわたって取材。世界を目指す聞こえないラガーマンの姿を先週と今週の2回にわたって放送します。

    強化試合で惨敗に終わった代表チーム。急きょミーティングを開き、プレーの改善点を話し合っていました。

    photo

    代表選手は12人、その大半がろう者です。そこで、コミュニケーションをとる時は、手話を共通語にすることにしています。全員、手話で意見を出し合い、作戦の理解を深めていきます。そんな中、焦りを隠せない選手がいました。難聴の土田将弥選手です。

    「土田は今の川上さんの質問わかる?答えてくれる?」

    チームの核として期待されながら、手話での込み入った会話はできません。ミーティング中、自分から発言することはありませんでした。

    photo
    「彼だけ理解できなかったら戦術が成立しないので、プライドを壊さないように少しずつアプローチしていきたい。」
    photo

    世界大会まで、あと2か月。それまでにどれだけ手話をマスターできるかが課題です。

    土田選手の仕事は病院の看護助手。夜勤が多く、仕事は不規則です。深夜ひとりで30人のお年寄りのケアすることも。ハードな仕事のため、手話を勉強する時間がつくれないのが悩みです。

    photo

    土田選手は小学生の時、中耳炎が原因で難聴になりました。右耳の聴力を失い、左耳に補聴器を付けることで会話を理解してきました。ラグビーをはじめたのは高校時代。健聴者の中でプレーしても運動神経がよかったため、ひけを取ることはありませんでした。日本代表に選ばれてから、デフラグビーに大事なことは技術だけではなく、仲間に歩み寄る気持ちだと感じるようになりました。

    photo

    合宿の翌日。職場で手話を学ぶ土田選手の姿がありました。仕事の隙間時間を見つけ、学習する時間を2倍に増やし必死に詰め込みます。スマートホンのアプリを使い、もう一度基礎から学びなおすことにしました。

    photo
    土田将弥選手
    「合宿に行って、みんな一生懸命ラグビーやってるから、完璧に覚えなあかんなって思って。同じ聞こえない同士なんで、このチームのために全力でやろう。」

    これまでチームでは、世界大会の遠征費が集まらないことが課題でした。3か月かけて、ようやく協賛してくれる企業が見つかりました。やってきたのは、落合監督が勤める建設会社の上司。デフラグビーの趣旨に賛同し、協力を申し出てくれました。

    「オーストラリアで世界大会があるということで、応援したいということで、応援させていただきます。」
    photo

    心配していた遠征費の目途が立ったことで、ようやく練習に集中できる環境が整いました。

    世界大会まで、あと1か月。手話でのコミュニケーションを重ねることで、チームではミスが減ってきました。その一つがボールをパスすること。改善点を話し合ったことで、スムーズにつながり始めていました。

    photo

    グラウンドには、もうひとつの変化がありました。土田選手が手話でコミュニケーションをとるようになったのです。

    土田将弥選手
    「『切り替え』って手話でこうやってやるんですか?」


    「これは『休憩』だよ。」
    photo
    「組む時、相手の胸を押しあげるようにやってね。」

    雑談の場面でも手話を使うようにします。

    土田将弥選手
    「落合さんの(頭)固いね。
    『固い』の手話はどうやるの?」


    「こうだよ。」
    photo
    土田将弥選手
    「ちゃんと手話を覚えて話したら、今日は全然わかるわかるって言ってくれてたんで。もっと手話がわかるようになれば、みんな喜んでくれると思うんで、もっと手話を頑張ろうかなって。」

    チームメイトとの距離も、ようやく縮まってきました。

    土田将弥選手
    「世界?」


    「世界。」

    土田将弥選手
    「大会?」


    「大会。」
    photo

    手話を交えながら、世界大会への思いを語ります。

    土田将弥選手
    「イングランド、ウェールズ、写真で見たけど、みんなでかいな、やばい。でも、そこで勝てたら最高じゃない?」

    3月11日。この日、代表チームは、国内最後の強化試合に臨みます。相手は関西でトップクラスのクラブチーム。聞こえる選手たちです。

    photo

    試合前のミーティングでは、土田選手が積極的に手話で発言。ディフェンスの注意点を伝えます。

    土田将弥選手
    「(タックルで)当たって倒れたら、2枚目のサポートを早く来てほしい。」


    「OK、OK。」
    photo
    「クワイエットジャパン!」

    赤いユニフォームの相手チーム。声で指示を出し合い、パスをスムーズにつないでいきます。

    photo

    対する代表チーム、この日一番動きが良かったのは土田選手でした。土田選手が攻撃の軸になり、チーム全体で攻め込む場面が増えてきました。そして、ついにトライが決まりました。

    photo

    残り時間わずか。相手陣内に深く攻め込むと、絶好のチャンスが生まれました。なんとしてもトライに結び付けたい、仲間に手話で気持ちを伝えます。

    土田将弥選手
    「攻めるぞ!」

    photo

    次のプレーで一気にトライをとろうと合図しました。みんなでボールをつなぎます。こぼれたボールを土田選手が拾い、そしてトライ。チーム一丸となった瞬間でした。

    photo

    見事、初勝利。デフラグビー世界大会に向け、手ごたえをつかみました。落合監督は、土田選手の成長についてこう話しています。

    監督 落合孝幸さん
    「(土田選手は)自分の言葉を手話、または身振りで表現して、味方に自分の思いを伝える所が本当にうれしかったです。そこがチームとしてひとつにまとまる近道って言いますか、お互いを思いやる気持ちが本当にうれしい。」


    土田将弥選手
    「うれしい気持ちと、楽しかったです。(このチームで)もっと試合したいなって思っています。世界一になるために頑張ります。」

    photo

    ろう者と難聴者が心をひとつに、デフラグビー世界大会に挑みます。

    新着ダイジェスト