自殺について知ろう

同性愛者の自殺について考える(1)

社会に見えてこない同性愛者の自殺率の高さ

同性愛者の自殺率(自殺念慮率)の高さについて、欧米では各種調査研究で頻繁に取り上げられ問題視されています。しかし、日本国内ではそのことに言及されている公の文言を見かけることはほとんどありません。精神科医の平田俊明さんに「セクシュアルマイノリティーと自殺」という、これまであまり語られてこなかったテーマについて話を聞きました。
(2008年度掲載)

平田俊明(ひらた・としあき)さん
AGP(Association of Gay Professionals in Counseling and Medical Allied Fields : 同性愛者医療・福祉・教育・カウンセリング専門家会議)所属。同性愛者向けの電話相談等を行う。京都文教大学臨床心理学部臨床心理学科専任講師。LGBTフレンドリーで知られる都内の診療所で心理カウンセリングも行う。

※LGBT=(L)レズビアン、(G)ゲイ、(B)バイセクシュアル、(T)トランスジェンダーの総称。セクシュアルマイノリティーのこと。

ハートネットに届いた一通のメール

[写真] 診察室での平田俊明さん。
「同性愛者の自殺の問題についてお便りしたいと思います。同性愛者の自殺念慮(自殺を考えたことがある)、自殺企図(実際に自殺を企画し、図ること)の確率の高さについて、欧米では各種調査研究で頻繁に取り上げられ問題視されています。しかし、日本国内ではそのことに言及されている公の文言を見かけることはほとんどありません。私はゲイの当事者ですが、ゲイ当事者の自殺の多さは本当にどうにかしなければならない問題だと思っています。この10年で私の身近なゲイの友人・知り合いが何人も自殺で亡くなっています。日本の政府は自殺防止の法案もつくっていますが、そこに『性的マイノリティー』のことが含まれていないのはとても残念です。同性愛者が自殺した場合、他の自殺以上に、その死が自殺によるものであること、そしてその人が同性愛者であることは、伏せられるために明らかにならないのだと思います」

メールをくれたのは精神科医の平田俊明さん。同性愛者の心理カウンセリングを行っていらっしゃいます。「セクシュアルマイノリティーと自殺」という、これまであまり語られてこなかったテーマについて話をお聞きしました。

ゲイ/レズビアンのメンタルヘルスの状況の深刻さ

医療者として、またゲイの当事者として、ゲイやレズビアンの人たちと関わる中で彼ら彼女らが必要な医療やカウンセリングを受けづらい現状があることをずっと感じていました。そして現在、AGPという、医療・心理・福祉・教育の分野に携わる人たちが同性愛者をサポートしようとする団体の活動を行っています。そこでは、同性愛者が抱えている心の問題や体の悩みについて電話相談を受けています。電話相談に当たるのは同性愛に理解のある、医療やカウンセリングの専門職につく人たちです。その他に、「レズビアン・ゲイである自分を語る会」という当事者自身が自由に話せるピアサポート的な場もつくっています。

米国ではLGBのためのカウンセラーや医療者の団体があるのを知っていたので、日本でもそうしたネットワークがあればと思ったのです。また、われわれが同性愛者の現状を把握して他の医療者・カウンセラーに伝える役目を取れれば、日本の状況を改善していく手立ての一つになるかもしれない。

というのも、同性愛者のメンタルヘルス上のニーズが非常に強くあることを日常的に実感しているからです。たとえば、うつの訴えなどにしても、ゲイやレズビアンの人は余計な荷物を1つ(1つ以上のことも多いですが)背負わされている、それもかなり重たい荷物を背負わされていると私は思うんです。同性愛者であると気づいたときから、そのことは隠さねばならない、本当の自分は他人に見せてはいけないと思いながら生きてきたストレスは本当に大変なものだと思います。同性愛者であるとオープンにできないことが精神的ストレスと関係しているのに、そこを話せないから医師もその患者の状況を正確に把握して必要な援助を施すという、いつもなら普通にしていることをうまく出来ないケースが生じてしまう。さらには家族からのサポートが必要なのに親にカミングアウトしていないから、本当の悩み苦しみを家族にも言えず、意味のある情緒的サポートも受けられない。結果、うつがなかなか治りにくいというケースもあります。

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