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自殺と向き合う 〜生き心地のよい社会のために〜

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自殺について知ろう

自治体の自殺対策について考える

−東京・足立区の取り組みから−

東京・足立区では、昨年、自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンクと協定を結び、区全体を挙げ、都市型の自殺対策のモデル作りに乗り出し、注目を浴びてきました。この4月には、「こころといのち支援担当」という自殺対策を専門にした役職もできました。4月13日に放送した番組の抄録と合わせて、これまで現場で地域の自殺対策のゲートキーパーとして活躍し、4月からこのポストに就いた馬場優子保健師に「自治体の自殺対策」について、話を聞きました。

馬場優子(ばば・ゆうこ)さん
平成2年より、足立区で保健師として活動。18年より精神保健分野の担当者となり、20年からうつ・自殺対策として「足立区こころといのちの相談支援事業」を開始。22年4月より新設された足立保健所保健予防課こころといのち支援担当となる。

― 新しくできた「こころといのち支援担当」というのは、どういう仕事を担当する役職なのですか?

今まで自殺対策は、衛生部の職員が、従来の仕事を持ちながら特命で携わってきました。これからは足立保健所保健予防課に専任として保健師1名と、非常勤の事務職1名をおいて、この部署を中心に、当事者支援やネットワークづくり、人材育成、区民への啓発・周知などを行っていきます。

― どうしてこの役職が新設されたのでしょうか?

ご存知のように日本では12年連続して3万人以上の方々が自殺により、その尊い命を断っています。足立区も例外ではありません。18年には自殺死亡者数が東京23区で一番多くなるなど、自殺者が増加し続けていました。そこで区は、東京23区中で先駆けて、様々な自殺対策を検討し、行ってきました。去年5月には、自殺対策支援に実績のあるNPO法人「自殺対策支援センターライフリンク」と提携を結び、専門家のノウハウも取り入れながら、事業を進めています。
自殺に追い込まれていく方々はさまざまな要因を抱えており、それらが複雑に絡み合っています。その複数の要因を解決するには、各部門が連携を深め、横断的な支援が必要です。事業を進めるにつれて、多数の部門のコーディネートを行い、さらにつないでいく役割や、対策の窓口になる部署が必要とされるようになってきました。
そこで、近藤やよい区長の指示により、自殺対策を専門に行い、足立区の「生きる支援」を推し進めていく部署として、「こころといのち支援担当」が設置されました。

番組では、これまでの足立区の取り組みを取材してきました。以下、番組の抄録です。

<区を挙げて行われた自殺対策>

3月。足立区役所である取り組みが行われました。雇用・生活・こころと法律の総合相談会。近年急増している失業者や多重債務者の相談の場に、こころの相談も加えることで 自殺対策としての効果も期待されています。日頃、別々の部署や施設で行っているさまざまな相談を連携して、一か所で行おうというこの取り組み。区役所の職員の他に、法律の相談は弁護士。雇用の相談はハローワークの職員が担当。各分野のプロフェッショナルが協力して、利用者の悩みを解決に導きます。

<失業者などに狙いを絞った対策>

去年、NPO法人ライフリンクと協定を結び、積極的な自殺対策に乗り出した足立区。都内でも、失業者や年金生活者の自殺が特に多いことが明らかになっています。また中小企業が多く、不況のあおりで経営者の自殺の増加も懸念されています。そこで去年11月と12月に、国が実施した失業者対策・ワンストップサービスに合わせ、区独自の総合相談会を開催。合計9回実施し、こころの相談やその後のフォローは保健師たちが担当しました。


<自殺対策の中心を担ってきた保健師>

自殺対策で保健師の役割が大きいのには訳があります。精神疾患を抱える人たちなどを見守るため窓口に来るのを待つのではなく、自分の判断で訪問活動を行うことができるのです。地域で孤立しがちな人の支援ができるエキスパートとして役割を果たしています。また、生活保護を申請する福祉事務所、多重債務を整理する法テラスなど、さまざまな支援窓口に利用者を”つなぐ”役割も期待されています。窓口で待っているだけでは救えない人に寄り添える保健師は、命を救う支援の中で重要な役割を担っているのです。 しかし、一方、総合相談会後の支援は、複数の問題を抱えた難しいケースが多く、手間も時間もかかります。現場の保健師からは今後負担が増していくのではないかという懸念も出されました。

<鍵を握るのは、部署同士の連携>

3月の相談会では、各部署の連携をもっと強めたい。保健師たちは、他の部署の職員に声をかけ、相談会終了後に担当者が集まって内容を振り返るカンファレンスを行うことにしました。いつ、どのタイミングで支援を開始するか? 各部署が確認しあうのです。複雑な事情を抱えた人々を部署の垣根を超え長いスパンで支える。これまでにない形の支援が足立区で模索されています。

足立区の自殺対策で、鍵を握っているのは、日頃、違う業務を行っている部署同士の連携です。改めて、馬場保健師に今後の自殺対策の方向性について聞きました。

― これまでも相談会など、自殺対策に現場で取り組んできて、自治体の自殺対策の課題も見えてきたと思います。それを踏まえてどのように自殺対策に取り組んでいこうと考えておられますか?

相談会等で支援を求められる方々は、都市部で地域から孤立した生活を送っている人が多く、家族や周りの人たちからの支援を受けづらい面を持っています。ですので、行政の役割は重要ですが、そういった方々への自殺対策に取り組めば取り組むほど、その問題の複雑さから、保健師だけで支援を進めることは難しく、さまざまな分野の人たちと連携する重要性を感じています。多分野横断的な取り組みを進めていくためには、庁内外の幅広いネットワークと、窓口となる人々の理解や知識が必要です。
今後は、研修に受講者の幅の広がりと、中身の厚みを持たせていきます。例えば、職員向けに相手のニーズをきちんと捉えられる「傾聴」ができるような研修や、この問題はあの窓口で解決できるというような、お互いの日常業務をよく知ることができるようにするため多分野合同研修を進めていきます。それぞれの部署が自殺対策の視点を盛り込んで業務に取り組むことが可能となれば、今までの事業を大きく変える必要はなく、行政それぞれの窓口や各相談業務、講演会、健康相談などを普段どおりに行うことで、それが自体が自殺対策となります。
このように、それぞれの業務で今までの取り組みを大切にしながら、そこに自殺対策の視点も加えて、自殺対策を構築していこうと考えています。この取り組みが自然体でできるようになったとき、足立区の「生きる支援」が実現できると考えています。

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