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自殺と向き合う 〜生き心地のよい社会のために〜

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自殺について語ろう

新政権での自殺対策はどうあったらいいのか

衆議院総選挙の結果を受けて、9月10日に放送した「福祉ネットワーク」の『政権交代 自殺対策への提言』より、番組に出演した自殺対策支援センター・ライフリンク代表 清水康之さんのお話を中心に抄録としてご紹介します。

清水康之さん(しみず・やすゆき)
1972年、東京生まれ。97〜04年までNHKディレクター。番組制作の過程で自死遺児の人々と出会い、自殺対策の活動に取り組みはじめる。2004年、NHKを退職し、ライフリンクを設立。以来、代表をつとめている。

新政権に期待するもの

自殺対策基本法が目指していた対策を、ようやく推進できることを期待しています。それは、大きく二つの意味があります。一つはこれまで省庁の縦割りの中で総合的な対策が実現してこなかった。これが縦割りを超え政治的リーダーシップによって、本来の現場に即した形で対策と立案が実施できるようになっていくでしょう。もう一つは、これまで共有されなかった自殺の実態に関するデータ。たとえば警察が持っている地域ごとの細かい自殺者のデータ、厚生労働省の過労自殺に関するデータ、文部科学省のいじめの自殺に関するデータ、これらが開示され共有されて、関係省庁、民間が連携して対策に取り組んでいけるんじゃないかという大きな期待があります。

縦割りで分断されていた今までの支援策

これまでは、深刻な問題を抱えた人ほど支援策から遠くなる、という状況が生まれてしまっていました。実際に自殺で亡くなった方の72%はどこかの専門機関に相談にいっていたのです。しかし自殺で亡くなった方は平均4つの危機要因を抱えており、一か所の専門機関にたどり着けても、その人が抱えている他の問題は解決されず結果的には深刻化して自殺に追い込まれたのです。これは、縦割りのツケを多くの自殺者が払わされてきたということの現われではないかと思います。

ハローワークの役割を充実させる

ハローワークには失業者の方たちが来ます。そして失業者の方は、心の健康の問題を抱えている。場合によっては多重債務、あるいは住居を探さなければならないという問題を抱えているのは想定できるわけです。
であればハローワークに看護師、保健師を常勤させる、弁護士の無料相談を週二回でもやる、地域の不動産業者と連携して、家を失った人たちが安く借りられるような物件の情報を掲示する、などハローワークを拠点とした支援策を実施展開してゆけば充分効果的な対策ができるんじゃないかと思います。
今まではハローワークには行くけれども、他の支援策にはたどり着けなかったから結果的には亡くなってしまった。ですからハローワークに行った段階でしっかりと包括的な支援をできるような状況を作ることが必要です。
こうした取り組みを、地方自治体と中央省庁との間で調整させようとしても難しいのが現状です。
ですから政治的なリーダーシップでハローワークを拠点にして対策をやっていくんだと、支援策をやっていくんだと、そのためには厚生労働省と自治体や他のこの組織のこの部署との連携が必要だと決めて仕組みを作ればいい。今までは、行政の側ばかりがどうあったらいいのか考えていましたが、当事者の側から何を必要としているのかを考える、施策者本位から当事者本位へと変わることが必要です。

連鎖を断ち切るネットワーク

新しい政権になって自殺対策が進むということは、政治任せにするのではなく、社会問題が解決する仕組みを作るということです。自殺を地域のネットワークで防ぐ取り組みを積極的に進めている長崎県などの自治体もあります。失業した人たちがいるのであればその人は生活苦に陥るだろう、生活苦から多重債務に陥るだろう、そして仕事が見つからなくて借金の取立てに毎晩精神的にも追い詰められるだろうという予測ができます。こうして連鎖していくのを未然に断ち切っていくことが大切です。そのために、個々の問題に対応している相談窓口や専門家が連携して、部署が分かれていたものをつなげていこうという、現在の縦割りを現場レベルで越えようとする取り組みが行われているのです。それをもっと社会的に全国的に広げていく必要があります。

国の総合的な取り組みを

しかし、縦割りの壁を個々の現場の人に乗り越えさせるにはコストもかかりますし、労力と時間もかかります。ですからあらかじめ超えられるような形の総合的な対策を国が作っていく必要があります。あらゆる総合対策が機能するような現場を中央省庁に作らなければならないと思います。これまで自殺対策の担当大臣がいましたが、二十を超える政策を担当していて、その中の一つが自殺対策でした。ですからリーダーシップを取れなかったのです。これを改めて、各省庁の施策を総合的に実施し、それが地域でも活用されるような仕組みを作っていく必要があると思います。

自殺対策と地域づくり

地域で実践的な取り組みをしようと思っても、その地域でどういう年代のどういう職業の人たちが亡くなっているのか、どういう理由で亡くなっているのか、といった情報が分からなければ実践的な対策は望めません。
そうした情報は警察、国が持っています。国はあらゆる地方の現場で対策の取り組みやすいような、環境を作るという意味でも情報提供をしっかりとしていくことが必要です。これは、警察と内閣府、省庁の担当者レベルに調整を任せるのではなく、政治的な決断で警察の持っているデータを対策に生かすように情報開示していかないとうまくいきません。
そうした情報が公開されますと一般の人々もその情報に接することができます。これには大きな意味があります。まず自分たちの地域でどれだけの人が亡くなっているのか、その現実を知った上で、そういう人たちがちゃんと生きられるような地域を作っていく。対策のための連携はできているのか、情報開示はきちんとされているのかなど対策をしっかり監視していく必要があります。
自殺対策が機能するネットワーク作りや地域づくりは、他のあらゆる分野の問題解決にも応用できるはずなので、自殺者を減らすということは、その地域を住みやすくしていくことにつながっていくと思います。


(9月10日放送 福祉ネットワーク「政権交代 自殺対策への提言」より要約)

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