生命操作 -復刻版-

安楽死

耐え難い苦痛から患者を解放するために患者を死に導く安楽死(euthanasia)は、古代ギリシア時代からすでに存在し、ギリシア語の「良き死」が安楽死の語源となっている。

  • しかし、医師が患者の生命を短縮する安楽死は、いかなる理由があろうとも患者に致死薬を処方することを禁じた「ヒポクラテスの誓い」以来、医の根本倫理に反することから、その是非をめぐる論争が古くから続いてきた。

安楽死には、延命治療をせずに患者を自然死させる消極的安楽死(尊厳死)、致死薬を処方するなどの方法で患者の自殺の手助けをする自殺幇助、致死薬を直接投与するなどの方法で患者の生命を絶つ積極的安楽死など、その方法によりさまざまな分類の仕方があるが、明確な定義は存在しない。なお、安楽死という言い方には殺人というイメージもつきまとうために、近年では尊厳死をいう言い方の方が好まれる傾向がある。

現在(2014年11月)安楽死法や尊厳死法で、致死薬の処方や投与によって末期の患者の命を絶つことを容認しているところは、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグとアメリカのオレゴン州、モンタナ州、バーモント州、ワシントン州である。このほか、スイスのチューリヒ州では医師による自殺幇助が認められており、安楽死を目的に、各国から「自殺旅行者」がスイスを訪れている。いずれの場合も、安楽死が認められる最も重要な要件は、患者の自発的な意思による熟慮された持続的な要請であり、これに反する場合は重罪に相当するとみなされる。また、患者が受容できない苦痛にあること、複数の医師と相談し同意を得ることなど、患者の診断と安楽死の実施方法などに関する具体的な条件が定められている。

世界保健機関(WHO)は、モルヒネなどを用いた苦痛緩和の医療が十分におこなわれれば患者の痛みは90%以上取り除くことができるとしている。また、世界医師会も1981年のリスボン宣言で「患者は尊厳のうちに死ぬ権利を持っている」と声明しているが、医師による自殺幇助や積極的安楽死は肯定していない。その一方で、安楽死の容認を求める市民運動が年々活発化している背景には、延命医療の急激な発達にともなう苦痛が、治る見込みのない患者にとって重い負担になってきた今日的な状況がある。

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