生命操作 -復刻版-

精子・卵子の提供

自分の子どもが欲しいと思っている妊娠可能年齢の男女が、性生活を営んでいるにもかかわらず妊娠しない状態を「不妊」という。

  • 「不妊」自体は病気ではない。子どもができない状態を当事者が苦痛や不都合に感じたときに、初めて「不妊」は「不妊症」として治療の対象となる。不妊治療は、不妊の原因によってホルモン療法、手術療法、さらには配偶子(卵子・精子)操作などがある。

人工授精は、精子の遡上を助けるために精液を注射器で直接子宮に注入する。 精子の数が極端に少なかったり動きが悪かったりするために、配偶者の精子では妊娠が望めないときには、配偶者以外の男性から精子の提供を受けて人工授精をおこなう方法がある。これを、「非配偶者間人工授精(AIDもしくはDI)」という。また、海外では提供された精子を使って体外受精も数多く実施されている。(日本では産科婦人科学会で実施を認めていない)生まれてくる子どもの遺伝上の父親は精子提供者になる。 精子は凍結保存され、必要なときにAIDを希望する不妊症の人びとに提供されるが、アメリカでは、1970年代には商業的な精子バンクが登場したといわれている。

卵子の提供は、精子の提供とは全く別である。 通常は、およそ28日周期で一つの卵子を排卵する。その卵子を人為的に身体の外に取り出すことは、精子のように簡単ではない。一度に複数の卵子を採取するために、採卵前に排卵誘発剤を使い、麻酔をかけて、膣から採卵する。卵子を提供する女性は、排卵誘発剤の副作用、身体的負担・リスクなどを常に考えなければならない。 1983年、オーストラリアで提供卵子で世界ではじめての妊娠が報告され、同年、米国でも卵子提供が実施され、1984年2月に子どもが誕生している。以後、アメリカをはじめ、世界各国に、ビジネスとして卵子ドナーを斡旋する業者が出てきた。

凍結卵子は精子に比べ、解凍する技術がむずかしく、世界ではじめて凍結卵子での出産が報告されたのは1986年である。その後、卵子バンクが登場したが、精子バンクとは異なり他者の妊娠を助けるためではなく、ガン治療などで生殖能力を失う可能性のある女性が、治療を始める前に自分の卵子を採取して凍結保存し、将来の妊娠に備える目的でつくられた。しかし、卵子の凍結・解凍技術も大きく進歩し凍結卵を使っての妊娠率も高くなってきており、最近では、若いうちに卵子を採取し保管する目的で、卵子バンクが利用されるようになってきている。

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