生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

23 ブタが「命の恩人」

人間以外の動物の臓器を移植する異種移植は、臓器不足の切り札になるのか。

アメリカ、オハイオ州に住むエリック・トーマスさんは、ブタが命の恩人だという。 1992年、彼は肝臓病から昏睡状態におちいり生命が危うくなったのだが、肝臓移植のための臓器が届くまで、豚の肝臓を一時的に代用して、血液を体外で循環させる治療をうけた。5日後、無事に人の肝臓を移植して、今はとても元気に生活している。 エリックさんはNHKテレビの取材に対して次のように語った。 「昏睡状態になったとき、父が豚の肝臓を使っていいといったらしい。手術の前に聞かされたわけでないので、最初は不気味だったけれど、命が助かったから、よかったなとしみじみ思います。豚を尊敬するようになりました。」

オハイオ州の田園地帯にあるバイオ工場ではさらにすすんだ実験がおこなわれている。臓器提供用の新種のブタを作り出すための試みである。 まず、豚の受精卵を取り出してヒトのDNAをくみこみ、この受精卵が再び母ブタの体内に戻され、やがてヒトのDNAを持った子豚が誕生する。くみこまれたDNAは人間の免疫にかかわる遺伝子で、それをもつ動物の臓器は、拒絶反応が起きず、移植は可能ではないかと考えられているのである。

狂牛病騒動に揺れたイギリスでは、97年1月保健相が、動物からひとへの新たな感染の危険性についての検討がすすむまで、臨床試験をおこなってはならないという声明をだしている。

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