生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

21 「高齢者にも移植医療を」

1998年の時点で、毎年2000例もの心臓移植をてがけているアメリカでも、65歳以上の人は心臓移植を受けられなかった。ただでさえ臓器不足の折りに、少しでも生存の可能性の高い人に手術を行っていたからである。

カリフォルニア大学ロサンジェルス校の移植医、ラックス医師は、高齢者のためのあらたなプログラムを始めた。移植をすれば助かる可能性のある65歳以上の心臓病患者に、ふつうは使えない心臓として除外されてしまう心臓を移植しようと考えたのである。

1992年、68歳のジェームズ・テーラーさんは心臓移植をうけた。臓器を提供したのは、脳死になった52歳の女性だったが、この女性の心臓は健康な状態ではなかった。ラックス医師は、この女性の心臓にバイパス手術をおこなってから、テーラーさんに移植したのである。現在経過は良好で、毎朝近所を散歩している。「50歳代のときより今のほうがずっと健康である」と語っているという。

ラックス医師は、「3人の子どものいる40歳の人のほうが、成人した子どものいる65歳の人より移植医療を受けるに値するとどうしていえるのか」と疑問をなげかける。 これまでに、移植に適さないといわれている心臓を手術したり、ふつうでは提供されない60歳以上の人の心臓を用いて、20例以上の移植手術をてがけた。

限られた医療資源の配分を考えるとき、高齢者はあとまわしになっても仕方がないのでしょうか。

今は・・

現在、全米臓器配分ネットワーク(UNOS)が提供している全米の移植に関するデータを見ると、すべての臓器において、65歳以上の人がレシピエントの待機リストに名をつらねている。また日本臓器移植ネットワークのレシピエントの選択基準をみると、血液型やサイズ、抗体反応、虚血許容時間等による適合条件を満たし、その中でも、医学的緊急度や年齢、施設の所在、待機時間などに応じて、移植を受けられる人の優先順位が決定される。したがって、レシピエントに関して年齢的な制限が設けられてはいないが、高齢になるほど条件は悪くなる。

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