生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

20 「やってみないとわからない」

1990年9月、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のフレンチ・アンダーソン医師は、公式に認可された世界で初めての、ヒトの遺伝子操作を用いる遺伝子治療をおこなった。

患者は4歳の女の子、アシャンティ・デシルバ。父親と母親の両方から欠陥のある遺伝子をうけついだために、ADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症という免疫疾患の病気に侵されていた。正常な遺伝子がないのでADAという酵素をつくることができず、リンパ球ができないので免疫力が保てなくなる。骨髄移植しか治療法がないといわれている遺伝病である。遺伝子治療は、アシャンティの身体から白血球をとりだし、そこに正常な遺伝子を入れたあと、彼女の血液に戻すという方法でおこなわれた。ベクターとして使われたのは、マウス白血病ウィルス。月に1回、4カ月をかけて4回、遺伝子を導入した結果、アシャンティは元気に学校に通えるまでに回復した。

しかし、それまでおこなっていた治療、(酵素補充療法~薬代として年間25万ドルかかるという~)は継続していたため、本当に遺伝子治療の結果、治ったのかどうかわからない。
この場合、今までの治療をやめて効果を確認すべきだったのだろうか?

現在、おこなわれている遺伝子治療は、体細胞の一部の遺伝子をくみかえておこなわれる治療であり、本来そのひとがもっている病気の遺伝子をすべてかえてしまうわけではない。

患者にとって有益であれば、遺伝子を操作する治療をおこなってもよいのでしょうか。

日本では・・

国立医薬品食品衛生研究所の公開情報に基づきまとめた資料によると、日本では、1995年に初めて、北海道大学でADA欠損症の男の子に遺伝子治療が行われた。2013年6月4日までに、日本全国で42件の遺伝子治療臨床研究が承認され、16件の研究が終了している。

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