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虹色 - LGBT特設サイト

連載

バイセクシュアルってどんな感じ?

2010年01月29日

虹色には、LGBT以外にも、Aセクシュアル、インターセックスなど、いろんなセクシュアリティーの方からメールをいただいています。そこで、多様な性のあり方について、ざっくばらんに語り合っていく企画「LGBTカフェ」を始めることにしました。 第1回目は、バイセクシュアル。LGBTの中のBです。「ハートをつなごう」にも、バイセクシュアルの方が出演してくださることがありますが、ゲイやレズビアンの方々と比べると、詳しいお話が聞けておらず、実際どうなの? と思っている人も多いはず。そこで今回は、20代のバイセクシュアルの方3人に集まってもらい、虹色編集部とみんなで一緒におしゃべりをしてきました。

(文中のイラストは、「ハートをつなごう LGBT」シリーズのイラストでもお馴染みの、白井ゆみ枝さんによるものです)


第1回 バイセクシュアルは「いつも意識されるものではない」&「いないことにされてしまいがち」?

参加してくれたみなさん/
Mさん:バイセクシュアルで男性。大学院生。20代。
Kさん:バイセクシュアルで女性。団体職員。20代。
Iさん:バイセクシュアルで、男性か女性かのどちらかでは答えられない。フリーター。20代前半。

◆「あえて言うこともない」と思ってしまう


――自分にも知り合いにバイセクシュアルだという人がいるのですが、実際のところ、バイセクシュアルってどういう感じなのか、よく分かっていないんですよね。


Iさん うーん、一口にどんな感じと言われても…そもそも、自分以外のバイの人がどうなのか、そんなに意見交換しているわけでもないんですよね…。

――バイセクシュアルの人同士でそんなに交流はないんですか?


Mさん ないわけじゃありませんけど、何というか「私はバイです」と、いつでもオープンに言う感じでもないんですよね。たとえセクシュアルマイノリティーの中にいてもです。だから、会話の中でたまたまポロッと発覚する、そういうことで分かっていくケースが圧倒的に多いんです。逆に言えば、バイ同士であっても意外とお互い気づいていないことも少なくない。あまり自分のセクシュアリティーについて積極的に話さない理由としては、「ことさらに言うほどでもない」と思ったり、あるいは「言うほどの固まったものがあるわけでもない」と考えていたり、その2つが大きいかな。

Kさん 私もMくんの、「ことさらに言うほどでもない」というのと、「言うほどに固まっていない」という、その両方に同感です。まず、ことさら言うほどでもないというのは、たとえばヘテロセクシュアル(注)の友達に囲まれた環境にいる時には、自分も日常的に異性を恋愛対象として見ることもあるので普通にそうした会話に混じることができ、したがってあえてそこで自分がバイセクシュアルだと言う必要はないと思ってしまう状況があります。逆に、ホモセクシュアルの友達に囲まれて、たとえばゲイやレズビアンであるゆえの苦労について友人が話している時に、自分がバイセクシュアルであることを言ったら、「バイはいいよね。ヘテロの人たちと一緒に話していても、それっぽく溶け込めるし」みたいに語られてしまうこともあるから、やっぱりあえて言わなくてもと思う。事実、同性を愛するうえでの悩みもないわけではないから、そっちに話を合わせていた方が楽だという判断になりがちなんです。

(注)ヘテロセクシュアル・・異性愛者のこと。

一方、言うほどに固まっていないというのは、たとえば私の場合、バイセクシュアルですか? と聞かれて否定もしませんけど、レズビアンですか? と聞かれても否定しないわけなんですね。ヘテロセクシュアルですか? と聞かれたら否定しますけど。それから、バイセクシュアルは「女性と男性の両方」を性的な対象にするという意味ですが、その点で言えば、バイセクシュアルより「パンセクシュアル」という言葉の方が私にはしっくり来ます。パンセクシュアルは、パン=すべての、という意味からもわかる通り、男性も女性も、また自分の性的アイデンティティーを男性女性のどちらにも重ね合わせるのを良しとしない人も含めて、性愛の対象になる人という意味です。

Mさん Kさんの言うような、バイセクシュアルないしパンセクシュアルのありようって、ヘテロセクシュアルの人と話してもわかってもらえにくいし、レズビアンやゲイの人と話しても、割と同じような反応をされることが多いんですよね。ホモセクシュアルでもヘテロセクシュアルでもその両方でもない状態って何なの? よく分からない。そういうことを言われてしまう。

Kさん バイセクシュアル対象ということを前面に出した相談窓口ってほとんどないですよね。確かにホモセクシュアルとヘテロセクシュアルのどちらにも溶け込めるかもしれないという側面がある一方、逆にそのいずれにも属さない状態であるがゆえの悩みがある時に、どこへ相談にいけばいいの? という問題がある。「バイセクシュアルも相談できます」とうたっているレズビアンかゲイ向けの相談窓口にいくのと、バイセクシュアル専門の相談窓口があるのとでは、受ける印象や当事者にとってのアクセスのしやすさが全然違うと思うんです。たとえば、孤立したバイセクシュアルの人が他のバイセクシュアルに会ってみたいと思ったときには、バイセクシュアルにも対応するというレズビアンかゲイの集まりよりは、バイセクシュアル専門の集まりがあればそっちの方に行きたいんじゃないでしょうか。

Iさん バイセクシュアルの人も、同性愛者向けのウェブサイトや集まりを通じて同性間の恋愛についての情報を得たり、同性間で付き合うカップルを支える人間関係を作ったりはできるけれど、その中では、同じ人が異性に対しても恋愛感情を抱くことがあるという側面は切り落とされてしまいやすいように思います。特に、同性愛者が異性愛前提の社会で日々ネガティブな圧力を受け続けて疲れていて、せめてセクシュアルマイノリティーの集まりの中では同性間の話だけで安心して盛り上がりたいと思っているときには。バイセクシュアルの場合は、異性と恋愛しているときは、世の中のたいていの場面である、異性愛が前提の人間関係でうまくやっていける。また、同性と恋愛している面に関しては同性愛のコミュニティーで表現できる。けれども、男性と付き合ったあとに女性と付き合い、失恋して、また次には男性に片想いしたり、といった形で一人の人生がつながって進んでいくときには、異性愛と同性愛の両方を生きているということ(バイセクシュアリティー)や、そのような区切りを設けずに恋愛をしていること(パンセクシュアリティー)は、どこで人にオープンにできるのか、人に相談できるのか、という課題にぶつかるんです。バイセクシュアルやパンセクシュアルの活動が求められる理由はそこにあるのかなと思います。

◆「男か女か」ではなく


――どういうときに女の人が好きで、どういうときに男の人が好きになるんですか?


Iさん 自分の場合男か女か関係なく、「気になる人かどうか」で判断しているという感覚ですね。この人素敵だな、と思った人が、男とか女という垣根のないところでポンと見つかる感じです。

Kさん 私もIくんと似ていて、好きになった人が男でも女でも、どちらの性であっても、あるいはそのどちらの性でなくても構わない。私にとってドキドキしたり、この人と一緒にいたいとか、セックスしたいと思う対象に性別は影響を与えるファクターじゃありません。

Mさん 僕もかなりふたりに近いです。ただバイセクシュアルが一概にそうだ、ということも言えないとは思います。

Iさん 相手が男性の場合と女性の場合とで、好きになるポイントが違うというバイセクシュアルの人も結構いますよね。

◆セクシュアリティーについて話せる場


――相手がバイセクシュアルである場合に限らないんですけど、ふだん、どれくらいセクシュアリティーの話ってその人に突っ込んで聞いていいのか、正直戸惑いがあるんですよね。こういう聞き方をしたらその人にとって不快にならないかな? とか、なにかギクシャクしてしまう。その辺りってどうですか?


Kさん 私はセクシュアリティーの話に限らず、自分の属性は、年齢だったり名前だったり、住所だったり、性別だったり、何でもいいんですけど、それは自分が話したい時に、話したい相手だけに、話したい範囲で話せばいいと思っています。大事なのは、「答えなくてもいい」という選択肢もちゃんとその状況に与えられているかどうかではないでしょうか。

Iさん KさんとMくんにお聞きしてみたいんですけど、おふたりは、バイセクシュアルについて安心して語れる場をどのくらい持てていますか? 僕はセクシュアルマイノリティーの学生サークルで活動もしてきたのですが、実はその中でも、バイセクシュアルの個人的な話とか、恋愛の話ってなかなかしづらいんですよ。バイセクシュアルについては取り組めていないからもっと活動に入れていきたいよね、って話題まではわりと出るんだけど、その先にはなかなか進まない。性同一性障害の話やゲイの話やレズビアンの話じゃなくて、バイセクシュアルの話をする場がこれまでどれだけあったかと言ったら、やっぱりすごく限られている気がするんですけど。

Mさん 場がない、というのもそうだけど、そもそも僕は自分のセクシュアリティーのことを他人にうまく説明できたためしがないんです。自分の中でうまく話がまとまらないことってなかなか切り出しづらいし、だから話をしてもしょうがないよな、とおのずから先回りして考えてしまって、まあいいや、黙っておこう、みたいな感じにいつもなってしまいます。だからほとんど話しません。適当に皆がワイワイ楽しくやっていればいいや、みたいな。ある意味、そこで言ってしまったらKYなのかなって思ってしまうところもある。

Kさん 自分たち自身、話せば話すほどバイセクシュアルって何なのか分からなくなっていって、だからバイセクシュアルという言葉はとりあえず使わないようにした方がいいと思うときもある。

Iさん なぜならそれは自分がバイセクシュアルだからだよ、と他人に伝えなければいけない状況でないかぎり、バイセクシュアルという言葉は極力使わないという感じはありますよね。

――使った方がいいときって、たとえばどういうときですか?


Iさん その言葉があった方が便利なとき。たとえば、自分と立場的に近い人を探す時に、名前があった方が見つけやすい。もう一つは、自分がヘテロセクシュアルだと思われていた時に、「いや、自分はバイなので」と、違うということを伝えなければいけないとき。

Mさん 僕もそれにはすごく共感します。そこで前提になっていることを覆さなきゃと思うときに使う。Iさんとは逆の例ですが、よく「ゲイですか?」と聞かれることがあるので「違います」と答えるのですが、そうすると「あ、じゃあヘテロセクシュアルなんだ」と思われる。だから急いで「ヘテロセクシュアルでもありません」とか「バイセクシュアルです」と補足しないといけないんです。ヘテロセクシュアルかホモセクシュアルか、あまりにも二者択一的な前提になっている社会というのは、ちょっとおかしいと思う。

バイセクシュアルというのは、常にあるものじゃなくて、何かに対抗しないといけなかったり、何かをうまくやらないといけない時に、はじめて意識されるものという気がしています。逆にそうでない限りは意識のしようがない。もちろんそうした考え方というのは、個人差があるとは思いますけど。I am バイセクシュアルって、それを主張としている人もいるので。

Iさん 「言わないといないことにされてしまう」という危機感から、自分はバイセクシュアルであるということを常に表明している、という友達もいます。事実それくらい言わないと、バイセクシュアルは見つかりにくい、埋もれてしまうという実態もあり、それをすごく気にしているんです。

――レズビアンだからこう、バイセクシュアルだからこう、と括られるスタンスというより、十人十色なんですね。その人ごとのスタンスということですよね。


Mさん でも、それが難しいんですよね。実際はひとりひとり違うのに、どうしても言葉にするとパッケージ的なものとしてまとまって見えてしまって、それが怖くて、もう言うのをやめようというネガティブな気持ちになってしまうんです。どんなにがんばって注意をはらっても自分の発言がバイセクシュアルの紋切り型のイメージを作ってしまうのではないかと思ってそれで言いづらくなってしまう。そういう雰囲気は、結構あるんですよね。

◆バイセクシュアルで良かったと思うこと


――バイセクシュアル、もしくはパンセクシュアルで良かったな、と思うことってありますか?


Mさん 個人的には、ホモセクシュアルでもヘテロセクシュアルでもないあいまいな状態というのが気に入っています。それがすごくつらいときもあるのですが、わからなさを持たれる分、特定のイメージに縛られなくていいというのはありますね。だからそれにあえて「バイセクシュアル」や「パンセクシュアル」という名前をつけるとまた新たなイメージが出てしまうかもしれないので、名前がない訳わからなさというものを持ち続けていたいなと思っています。

Kさん 物事に対する視野が広がったことでしょうか。セクシュアルマイノリティーの中のさらにマイノリティーだったり、ある時はマジョリティー側に属することもあるマイノリティーだったりとしての経験や、異性愛vs.同性愛という二項対立的な状況への違和感によって、セクシュアリティーにとどまらず、色々な立場や属性にいるひとたちの状況に対する理解力や想像力が養われたかもしれません。

Iさん お二人とも真面目な答えですねー。僕は、異性愛者や同性愛者の方と比べると、自分は男性にも女性にも、そのどちらかがはっきりしていない人にも魅力を感じられてお得だなー、なんて時々考えてしまいます(笑)。

あと、自分がバイセクシュアルかもしれないと思ったことをきっかけに、バイセクシュアルやパンセクシュアルの情報を集めたり、つながりをつくろうとするようになって、その結果、性別の枠にとらわれない恋愛関係が成立するって信じられるようになったのはよかったです。僕は、好きになる相手だけでなくて、自分の性別を男か女のどちらかにはっきりして生きていくのは難しいと思っています。それで恋愛に悩むこともあったけど、バイセクシュアルやパンセクシュアルの方に会ったり、好きになるのに性別は関係ないという人と付き合ったりして、楽になりました。
もちろん、バイセクシュアルやパンセクシュアルの方にも色んな考えの方がいるとは思うのですが、好きになる相手が男女のどちらかではないという人たちと、自分の性別がわかりやすく男性か女性のどちらかでない人たちは、もっと話していけることがあるんじゃないでしょうか。

――おっと、時間が来てしまいました。ひとまず今日はこの辺で。本日は皆さん、来てくださってありがとうございました! この続き、また行いましょうね!


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