三者三様バイセクシュアル(後編)
2011年02月21日
前回に引き続き、三者三様バイセクシュアルの後編をお送りします。バイセクシュアルと一言で言っても、その中にもまた多様性があります。だからこそ、個人個人でどういうセクシュアリティーを持っているかという、そこにフォーカスしていければと思っています。
-その3-
Iさんの場合(男性か女性のどちらとも言えない。バイセクシュアル/20代)
◆性別も、好きになる相手も横断的

イラスト=白井ゆみ枝
僕の場合、自分の性別も、好きになる相手も、男性か女性かという境界線を横断していて、言葉で一口には伝えられないと感じています。どうそれを伝えるのが自分と相手にとってよいのか、模索しているところです。
僕自身は、体は女性で、子どもの頃は女性として育ちました。過去を振り返ると、幼稚園の時にはまだ、この男の子カッコイイからバレンタインのチョコを渡そうとか、そういうことをあたりまえに受けとめていて、特に疑問は持っていなかったです。でも中学生になる頃には、自分の中にある男性に対する意識というのが、恋愛対象として以外に、自分自身がそうなりたい対象としての意味合いも持っているんじゃないかと、思うようになりました。
高校に入る頃には、「自分は同級生の男に負けている」ということを必要以上に意識するようになりました。そうした意識を持つのも、自分の中の理想が男性だからなのではないか? と悩みました。性に関する本を読み漁って、「トランスジェンダー」「FTM」という言葉を知ったのもその頃です。自分はこんな感じじゃない? と、本を見ながら思っていました。
でも「男には負けられない」という気持ちの一方で、「可愛くて頭の良い女の子になって、男性と付き合って、自分に自信を持ったら、こういう気持ちはなくなるのかな」ともどこかで思っていて。自分の抱えているものが、女性としての生き方の難しさの問題なのか、トランスジェンダー的な気持ちなのか、よくわからなかったです。
その頃、出会い系サイトなどで知り合った男の人と付き合ったりもしていました。デートのときは女の子らしくして、割り切って楽しんでいました。年が離れた相手だったので男性へのライバル心を横に置いて甘えられたり、自分の体が女性として男性に受け入れられるものなのだと思えることに嬉しさがありました。僕は、男性とのセックスの中であれば自分の体を好きになれたし、自分の体が相手に求められているという実感も得ていた。だから、体を肯定する気持ちと否定する気持ち、その両方がありました。
◆新たなカミングアウト

大学に入ってからは、セクシュアルマイノリティーの集まりに、いろいろと出かけてみるようにしていました。そこでは、ちゃんと伝えれば自分が女性でないという気持ちは尊重されましたが、自分が男性を好きになることを口にするのはとても不安でした。言ってしまったら、自分は結局女性だと思われてしまうような気がして。FTMの方にもたくさん会いましたが、その多くは女性を好きになる、FTMかつストレートの方でした。自分が彼らほど男らしくないことが恥ずかしかったし、どうして自分は他の人みたいに女性を好きになれないんだろう、男性なんかどうでもよく思えればいいのに、そう思っていました。
でも、結局大学で最初に付き合ったのは女の人でした。ゆっくりとお互いを知り合って、キスやセックスも、一緒に楽しめるようになりました。とても大切な関係でした。相手の人は、マイノリティーであることについて深く考えている人だったので、セクシュアリティーについてもよく話をしました。彼女は、僕の体や自分の認識が、女でも男でも何なのかはっきりしなくても、ほとんどどうでもよいというか、それくらいこだわりのない人でした。
セクシュアルマイノリティーのコミュニティーの中では、彼女がいると伝えることで、僕がそこにいる理由を勝手に納得してもらえるというか、周りの人の反応がわかりやすく良くなりました。レズビアンやバイ女性の方たちとも共通する話題が増えたし、FTMや性同一性障害でない女性の中にも、女らしい格好とか体に相いれないものを感じている人もたくさんいるんだなって知って。より強くつながりを感じられるようになりました。
だけど、段々と、つらさみたいなものが、出てきてしまって。彼女といることを受け入れてくれる人はたくさんできたけれど、これまでにもまして、僕が男性を好きになる可能性があるなんて、誰も思いもしないということです。
大学生の頃は、セクシュアルマイノリティーの学生サークルで知り合ったゲイの友人も多かったのですが、ある時、そうした友人の一人がライフストーリーを語ったビデオを、じっくり観る機会がありました。いわゆる男らしい男の子になる期待に応えられなくてストレートの男の子たちに馴染めなかった気持ち、自分が男性を好きだと確信するようになってからもそれを隠してきたこと、インターネットなどで他の男性と知り合うようになったこと、そして、仲間ができて、カミングアウトするようになったこと。涙が止まりませんでした。自分が長いこと言葉にできなかったことを、語ってくれているかのようでした。
FTMゲイの方たちが書いたライフストーリーを読み、恐る恐る、周りの人に新たなカミングアウトを始めました。たいていは驚かれて、それでも、友人がちゃんと話を聞いてくれることは嬉しかったですが、トランスでないゲイの友人のほとんどにとって、僕が男性を好きになることは、想像の範疇になかったようでした。
そのとき付き合っていた彼女とは、別れを迎えて、時間をかけてまた友人になりました。当時ずっと、彼女を好きな気持ちに変わりはありませんでしたが、残念ながら、僕がしたことは関係を変えていってしまった一因だと思います。女性と付き合いながら、男性を恋愛対象とすることをカミングアウトしていくことは簡単ではなかったです。
最近付き合った人は、ふだんは男の人の姿で働いているけど、自分をストレートな男性ではないと考えている人です。特別な日には女性の服を着たりもします。そして性的指向はパンセクシュアル。僕自身は、最近は、バイセクシュアルだということと、同時に、色んな性別やセクシュアリティーにつながりがあってこういう自分があるんだと伝えています。
(おわり)
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