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虹色 - LGBT特設サイト

連載

vol.4 ミュージシャン・オオヤユウスケさん

2009年07月02日

「東京プライドフェスティバル」フィナーレで独特の余韻をつくりだしていたオオヤユウスケさんのライブ、記憶に新しいのではないでしょうか。
オオヤさんは自身のバンド「ポラリス」で活動する他、クラムボンの原田郁子さん、ハナレグミの永積タカシさんとともにつくるユニット「ohana」や、映画音楽のプロデュースなど、多彩な音楽活動で知られているミュージシャン。また「ハートをつなごう」では、自身初となるナレーターとしての仕事も務めています。
そんなオオヤさんにフェスティバルに参加した感想、そして「ハートをつなごう」ナレーターをしていて感じていることをお聞きしました!

プロフィール
1997年にバンドLaB LIFeでデビュー。フルアルバム2枚を制作し、2000年に解散。'00年柏原譲とPolaris結成。'01年に『Polaris』でデビュー、以来4枚のフルアルバムをリリース。05年にはハナレグミの永積タカシ、クラムボンの原田郁子と共にohana(オハナ)を結成。'07年秋公開の廣木隆一監督作品「M」、'05年公開の守屋健太郎監督作品「スクールデイズ」の音楽を担当するなど映画音楽の制作も行う。近年はサウンドプロデューサーとしても活動、主なプロデュース作品としては原田郁子ソロアルバム「ピアノ」、ハナレグミ「音タイム」、「あいのわ」(09年6月発売)など。'07年よりソロプロジェクトも行っている。
テレビ番組「ハートをつなごう」(NHK教育'06年5月〜現在)のナレーションを担当する。 

■音楽があるといいなと思っていた

まめた 先日は「東京プライドフェスティバル」と「ハートをつなごう」コラボレーションでのステージ、お疲れ様でした! 当日の来場者から集めたメッセージにあわせてライブ演奏するという今回の試み、オオヤさんのアイデアがもとになっているそうですが、その経緯について教えていただけますか?

☆音楽というのは人と人の関係の中にある何かと深く結びついていることが多い気がしていて、ほらなんか曲を聴くと、あの時フラれたことを思い出しちゃったりとか、その時の感情と共に記憶に残っていく。そういう力が音楽にはある。だから普段僕はナレーターとして「ハートをつなごう」に関わっていますが、今回の屋外ステージでのフェスティバルの話を聞いてその場に音楽があったらいいなと思っていたんです。ミュージシャンとして何かできないかと提案したのはそうした気持ちからです。

しかし自分がやっているバンドの曲をただこのイベントで演奏するというのも違う気がしました。ここで生まれてくるものを大事にしたかった。だから生のメッセージに音楽を合わせながら、同時に、LGBTを説明するのではなく、ひとつの"情景"のようにみんなに共有してもらうことはできないだろうかと。

ソニンさん、前田健さんもステージに登場、朗読でライブに参加しました。(このページの写真2点共 撮影=山口美紀)

実際あの日、演奏しながらも思いましたが、みんないろんなことを思いながら、生活して仕事して、その中でまたこんなふうに集まって、つながっている。個々には歩み方は違っていたとしても––たとえば見えないところで普段その人が自分の性のことで死ぬほど悩んでいるとしても––、結局はみんな同じ場所で暮らしている仲間だと思ったんです。だからこそ「一緒に歩いて行こう」、そういうシンプルなテーマをうたいたかった。みんなのセクシュアリティーについてのメッセージをつなげていきながら、同時にその"前後"や"あいだ"に存在している日常を大切にしたかった。音楽が匂いや色みたいになって、こちらとあちらに分かれてしまいそうになるものを、それこそ虹ではないけれど、にじませられたらいいんじゃないか。

僕は本当のところセクシュアルマイノリティーって言葉はあまり好きじゃないんです。繰り返し使っている間になんだかその言葉の呪文にかかってしまうような気がするから。マイノリティーっていうけどある意味、表現者だってマイノリティー、ミュージシャンだってマイノリティー。でもそのなかでも頑張って……頑張って、は変かもしれないけど(笑)、生きている。だからマイノリティーだからどうということより、一緒に生きていることの方を大切にしたい。

まめた 実際にメッセージを肌で感じながら演奏した感想はいかがでしたか?

☆スクリーンから流れてくる、あるいは朗読で聞こえてくるコメントのどれにも共通して感じたことがあって、それは「これは本物の言葉たちだ」ということでした。それが自分の中に強く響いてきて、その時に感じたことに忠実に、音にして返したい、正直に弾こう。そんなことを思いながらその言葉たちと"セッション"しました。

■今ようやく性についてみんなが話し始めている

今回はまゆこ、まめた、みほの3人で取材。最初は緊張!

まゆこ セクシュアルマイノリティーっていうのはつまるところその人の一部分でしかなくて、それ以外のところ同じ人間だから悲しいこともあって楽しいこともあって、それで頑張ってみんな同じように生きているという意見に、すごく共感しました。でもオオヤさんのような人もいますが、そうじゃない方も多くいます。私、セクシュアリティーについてのサークルをつくっているんですけど、学校で「セクシュアルマイノリティーのことを勉強しているんだよ。たとえばゲイとか」って言ったら笑われちゃって……。偏見や差別意識を持っている方がいるのも事実かなと思うのですが。どうしたら変わっていくと思いますか?

☆表現の仕事をしている人って、たとえばミュージシャンもそうだし、役者さんとか絵を描く人とか、自分を掘り下げるし、自分のことを見つめた上で行っている人が多いから、たとえばセクシュアリティーに関しても、だとえばゲイだからどうのという、壁みたいなのはもともとなかったと思う。セクシュアリティーのことを話してくれる知人も実際いたけど、それもカミングアウトと言うほどの大げさな感じというより、「実は前から知ってた」ってこちらが突っ込んだりできるような砕けた雰囲気というか…。ただ、この番組に関わっていることで、みんなと話しているときにこの話題が上ったり、自分からも日常的に以前よりよく話すようになりましたね。

オオヤさん。とても気さくで話しやすい方でした!

でも考えてみると、上の世代の人とはなかなか性について話をしないかもしれない。自分の親くらいの年齢というのが、どうしてもそういう性についてしゃべらない。異性同士のことに関してだってしゃべらない。たぶんそれは、「性について語るのは、恥ずかしいことである」というような、タブーではないはずなのに、なんとなく照れ臭いことになっている、という土壌がずっとあるんだと思う。
実際うちなんかも、例えば親がどういう風に恋をして結婚したのか知らないし、僕も聞こうとしない。やっぱりそういうふうに、僕と親の関係の中でも、そういうことは語るなかれという習慣で、育ってきちゃってるから。

でも、今ここに来てみんなのような学生の年齢の方々を中心に、ようやく性についてオープンマインドに話せる人達が増えてきているんじゃないかと思うんです。
もちろん「こういう風にしたら世の中変わりますよ」とか、一朝一夕のことではない。けれども、やっぱり僕は今「ハートをつなごう」のような番組があるということ自体すごいことだし、こういう風にみんなと話をしていることも相当素晴らしいと思っているんです。だから、ここから始まっていくのだと思う。話せる場所、できる相手から、会話していくことによって、ちょっとずつ変わっていくんじゃないかな。

■なぜミュージシャンが「ハートをつなごう」ナレーションなの? 

まめた 番組が始まってから現在まで、もう「ハートをつなごう」のナレーターを務められて4年目になられるわけですが、そもそもなぜミュージシャンのオオヤさんが番組のナレーションをすることになったのですか?

☆「ハートをつなごう」のディレクターさんに誘われたのが直接のきっかけですが、ぜひやってみたいと思ったので経験はまったくなかったけれど受けさせてもらうことにしました。実は僕は、何か障害がある人のために自分にできることはないかとずっと思っていたのです。というのも、子供の頃、実家で母親が、今で言う発達障がいを持つ子どもを預かったりしていて、家に帰るとそういう子たちと一緒に遊んでいた。また学校に通っていても特殊学級(編集部注:現在では特別支援学級という名称)に行っている子たちとなぜかすごく意気投合することがあったりもした。このように比較的自分の身近な存在だったということが昔からあって、でもどうしてもそういう子たちって苦労している人が多くて、何か自分に協力できることってないのかなとずっと思っていたんです。

まめた ナレーションは難しいですか?

☆難しいです(笑)。もともとプロのナレーターではないから不慣れなことも多い。でも例えば曲をつくるときでも、「こういう展開の次はこういう展開が来るといいぞ」と経験則でつくってしまいそうになるんですが、それよりも自分がそのとき感じていたこととか、口をついてふと出てきたものの方が表現としては伝わると思っているので、ナレーションも上手に喋ることより、なるべく素直に気持ちとして受けとったものを返していく。それを心がけています。

■人には感受性というものがある

みほ オオヤさんがふだん活動しているバンドのポラリスを聴いていますが、歌詞が抽象的で、具体的にはっきり描かれていない、私はそういうところがすごく好きです。私は自分のセクシュアリティーを表わす言葉が見つかっていないのですが、実はそういう自分の不安定さが嫌いだったりするんです。でも、ポラリスの歌詞を聞いていると、ひとつに決まっていなくていいじゃない、ということを言われている気がして励まされます。

☆やっぱり、白か黒かだけだったら面白くないと思うんだよね。感情だって楽しい、悲しいだけじゃない。ほとんどは「間」っていうかさ。結局、みんな何かと何かの間みたいなところで生きているんだと思うんですよ。

まめた では最後に、セクシュアリティーのことで誰にも言えずに一人孤独に悩んでいたり、あるいは、友達や家族との付き合い方で悩んでいる人がいると思うんですが、そういう若い人達にメッセージをお願いすることはできますか?

☆本当にみんな一人じゃないと思うんです。必ず自分の考え方や自分が持っていることを素直にぶつけられる仲間がいるはずなんです。そしてそれは、直接的に「性について」ぶつけるばかりじゃなくても、自分の日々の暮らしを伝えるだけでもいいと思う。直接ズバッと言うこともカミングアウトかもしれないけど、人ってやっぱりどんな人も感受性というものを持っているので、"感じる"んですよね。言葉の中から伝わるようにできている生き物だと思う。自分も必ずそういう人がいると信じて音楽もやっています。だからそういうことを胸に想っていればきっと大丈夫だと思います。

全員 ありがとうございました! またライブを聴きに行きたいです!

最後にみんなで記念撮影

(2009年5月29日 NHKにてお話を聞きました)

*この記事は、セクシュアルマイノリティーの当事者ユースが中心となってインタビューと執筆を手がけています。今回記事を担当してくれたユースのプロフィールと取材の感想です。

まめた レインボー・カレッジのメンバーで大学生。「面白くないことはつまらない」をモットーに、IDAHO(国際反ホモフォビアの日)の街頭アクションなどを企画している。(取材感想)誰かが存在しているということ自体がもつ周囲との関わり、つながりを「今・ここ」で感じられるような、素敵なインタビューでした。

まゆこ 東洋英和女学院大学のセクマイ勉強&交流サークル唯一の4年生。昨年作ったばかりのサークルなので試行錯誤しながら活動中。(取材感想)言語化しないゆえの音楽の素晴らしさ、曖昧さゆえの人間の面白さが重なりました。良い経験をさせていただきました!

みほ 東洋英和女学院大学1年・「かえでの虹」所属。大切な友達のカミングアウトからセクシュアリティーについて考えはじめた。(取材感想)表現者として、つながりを伝えたいというオオヤさんの想いを聞いて、もっと多くの人にこのことを伝えていきたいと感じました。

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