統合失調症からの回復

もくじ


(監修:東京都立松沢病院 岡崎祐士院長 ※所属は監修時)

 

 

早期発見

1人で悩まず、信頼できる人に相談することが大切です。

どんな病気でも早期発見の大切さが指摘されていますね。統合失調症も例外ではありません。発症してから治療を開始するまでの時間が短いほど、よりよく回復すると言われています。

しかし、この早期発見が、なかなか難しいのです。思春期は、子どもから大人になっていく過程で、こころが不安定になりがちな時期です。たとえば「何に対してもやる気が起きない」様子だったとしても、成長に伴うふつうの悩みなのか、こころの病の徴候なのか、ご家族にとっては区別がつけにくいと思います。病ではなく、成長に伴う悩みであれば、見守っているうちに、本人が自分の力で乗り越えていきます。困難を一人で悩まず、友人や家族、あるいは信頼できる人々に率直に相談する機会をもちましょう。

精神科医などの専門家に相談したほうがよいのは、▽本人が耐えられないくらい強く、つらい、こわい、今後が心配などと感じている ▽気持ちが重く、作業が進まず清潔さが保てないなど生活に著しく支障をきたしている ▽社会とのかかわりを持ちたくない、かかわりがほとんどないなど といった場合です。また、妄想や幻聴だと思われる場合には、一刻も早く、精神科を受診することをお勧めします。

 

治療の柱の一つが薬物療法。医師と相談しながら、合う薬を見つけましょう。

統合失調症の治療の柱のひとつが、薬物治療です。その中心になるのが抗精神病薬(=統合失調症などの精神病の治療薬、という意味です)ですが、そのほか、症状に応じて、睡眠薬、抗不安薬、気分安定薬などを使うこともあります。
抗精神病薬の服薬を、医師と相談せずにやめてしまうと、再発の可能性が高まります。副作用が辛いときは、すぐに医師と相談して、薬の量を調節したり種類を変えてもらったり、副作用止めの薬を処方してもらうようにしてください。多くの副作用は軽減が可能です。

従来の抗精神病薬の副作用としては、のどがかわく、便秘になる、前屈み・小刻み歩行、手指の震え、ろれつがうまく回らない、などがありますが、1990年代から、副作用が少ない非定型抗精神病薬(新規抗精神病薬とも言われます)が次々と出てきています。もっとも、新しい薬に特有の副作用も報告されており、薬を飲み始めたら、体調や気分を正確に医師に伝えるよう、心がけてください。

錠剤や粉剤だけでなく、液剤、そして、2週間から4週間に一度注射する持効性注射薬も開発されています。食後に必ず薬を飲むよりも注射薬の方を好む人もいます。

 

リハビリテーション

回復には、さまざまなリハビリテーションが有効です。

足にケガをした人がリハビリテーションをして再び歩けるようになることをめざすように、統合失調症の場合もリハビリテーションが有効です。陰性症状や認知機能障害を著しく改善する薬はまだ開発されていないこともあり、薬物療法と精神科リハビリテーション(心理社会的治療法とも言います)は、治療法の両輪になっています。
リハビリテーションには、病気の知識やストレスへの対処法を学ぶ心理教育や、人間関係をうまく進めるコツなどを練習するSST(社会生活技能訓練)、記憶や集中などの力をつけるための認知機能リハビリテーションなど、さまざまな方法があります。病院やクリニックに併設されたデイケアという場で仲間と過ごすことも、回復に役立ちます。
また、働いたり、スポーツや趣味のグループ活動に参加したりすることも、回復に役立ちます。ただし、社会参加に伴うストレスが強い場合は再発のきっかけになることもありますので、医師、家族、本人が話し合いながらチャレンジしてみてください。

 

リカバリー

症状が残っていても、夢や希望をもち主体的に生きることは可能です。

最近、統合失調症のご本人や支援者の間で、リカバリー(recovery)ということばが盛んに使われるようになりました。ぴったり当てはまる日本語のことばがないので、そのままカタカナで使われています。

リカバリーとは、「精神障害のある人が、それぞれ、自分が求める生き方を主体的に追求すること」であり、それを支援することが、医療関係者や福祉関係者に求められるということだと思います。

リカバリーの目的は、症状をなくすことではありません。治療によって症状を和らげることはもちろん必要ですが、何より大切なのは、本人が、こういう生活がしたいという夢や希望を持ち、それを周囲が支えることです。たとえ統合失調症の症状が残っていても、症状とうまくつきあいながら、学校に通ったり、働いたりしている人は少なくありません。結婚・子育てをしている人もいます。誰にでもリカバリーは可能なのです。

最近では、このリカバリーを最大限にするように一貫して支援することを治療の基軸とし、その一環として精神科リハビリテーション(心理社会的治療)と薬物療法が位置づけられ、国際標準の治療指針となっています。

 

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