統合失調症とは 基礎情報・支援情報

もくじ


(監修:東京都立松沢病院 岡崎祐士院長 ※所属は監修時)

医師と周囲の人にはさまれる人

身近な病気

統合失調症は、およそ100人に1人がなる、とても身近な病気です。

「統合失調症という病名は聞いたことがない」という方も多いでしょう。しかし、実際には、およそ100人に1人がなる、とても身近な病気なのです。また、若い人が発症しやすい病気です。発症する人の80%は、15歳から30歳の間に発症すると言われています。

原因ははっきりとはわかっていませんが、ストレスが関係していると言われています。誰もが発症する可能性のある病気です。

それにしても「統合失調症」は、病名を見ても、どんな病気かわかりにくいですね。人間の脳の働きは、神経のネットワークによって生まれます。見たり聞いたりした情報を処理する、考える、感情がわき起こる、こうしたことはすべて、神経のネットワークの働きです。そのさまざまな働きをうまくまとめることができなくなっている状態、つまり「統合」が「失調」している状態が、統合失調症なのです。

 

幻覚・妄想

誰もいないのに声が聞こえたり、ありえないことを信じたりすることがあります。

統合失調症の症状のひとつは、「陽性症状」です。実在しない声が聞こえたり(幻聴)、ありえないことを信じ込みます(妄想)。

町を歩いていて、知らない人がこちらをちらっと見たとしましょう。健康な人は「私の後ろにある何かを見たのかな」と考えて、それ以上、気にしないことが多いと思いますが、神経ネットワークの働きをうまくまとめることができなくなると、「私を監視している」といった意味付けをしたり、実際に悪口が声となって聞こえてきたりします。このほか、自分の考えが他人にコントロールされていると感じたり、自分の考えが周囲の人に伝わってしまうと感じたり、考えがまとまらなくなったり、話していることに脈絡がなくなったりする場合もあります。

ここで書いた症状はすべての人に起こるわけではなく、また、その程度も、人それぞれです。「あるはずのないものが現れる」ことで、周囲の人はびっくりしてしまいますが、陽性症状は、薬物療法で比較的治療しやすい症状です。

 

やる気がでない・感情の起伏がない

喜怒哀楽の感じ方が弱くなったり、人と会うことを避けたりすることもあります。

陽性症状と反対に「陰性症状」と呼ばれるものがあります。こちらは、「あるはずのものが低下する」状態です。

感情の起伏が乏しくなります。健康な人が日々感じる、喜ぶ、怒る、哀しむ、楽しむ、といった感情が弱くなり、実際に表情の変化も乏しくなります。

意欲が減退します。勉強だけではなく、遊ぶことにも、それまで好きだったことにも関心が弱くなります。部屋の中をきれいにすることや身だしなみにも無頓着になります。

家族や友人を含め、ほかの人と会ったりコミュニケーションしたりするのを避けるようになります。外出することを避け、自分の部屋にひきこもる人もいます。

陰性症状には、このほかさまざまものがあります。ここで書いた症状がすべての人に起こるわけではなく、また、その程度も、人それぞれです。

 

記憶・注意・判断などの力が低下

勉強や就労をはじめ、生活のさまざまな場面で影響を及ぼすこともあります。

「陽性症状」「陰性症状」と並んで、統合失調症の症状として注目されるようになってきたのが「認知機能障害」です。認知機能というのは、記憶したり、注意を適切に集中させたり、計画を立てたり、判断したりする能力のことです。健康な人は、それとは意識せずにこの認知機能を働かせていますが、統合失調症の場合、この機能が低下します。

認知機能障害の低下は、勉強や就労をはじめ生活のさまざまな場面で大きく影響します。記憶する力が低下すると、新しい仕事のやりかたを覚えることが難しくなります。作業の途中で、どこまで終了したかわからなくなることもあります。注意が適切に集中できないと、相手の話に集中しないといけない場面で、ほかのことに注意がそれてしまったりします。必要のない情報まで入ってきて、処理しきれず混乱することもあります。計画したり判断したりする力が低下すると、仕事だけではなく、生活の中で、たとえば炊事をする場合にも困難が起きます。

人によって、どの認知機能がどの程度障害されるか異なります。適切なリハビリテーションを受けることが必要です。

 

発症と再発

病気の経過について知ることは、早期発見や再発防止の点から大切です。

まず陽性症状が起きて、陽性症状が治療により治まったあと、陰性症状や認知機能障害が残りやすい、と考えられがちです。これは、幻聴や妄想に周囲が気付いて病気を疑い、診察を受けることが多いためでしょう。しかし、実際の経過はさまざまです。陽性症状の前に陰性症状が起きていることもありますし、陽性症状や陰性症状が始まる前から認知機能障害が起きている場合も多いのです。このことは、早期発見の視点から重要です。

統合失調症の養生で気をつけなければならないのは再発です。統合失調症は、再発しやすい疾患です。また、再発を繰り返すたびに、回復に時間がかかるようになることがあります。適切な種類と量の抗精神病薬の服用は再発の可能性を低くしますので、ご自分でよく理解納得のうえ、薬を継続し、適切な心理社会的リハビリテーションを行うことで、再発する可能性を下げるようにしましょう。

詳しくは、「統合失調症からの回復」の項で説明します。

 

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