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発達障害を生き抜くために 職場での知恵と工夫

指示を文書化して頂けるだけでかなり作業がやりやすいですよね。
私は口頭で指示される事が苦手です。
余談ですが定型の人って、指示するついでに嫌味を言ってくるのでやりづらいです。
(歌織さん)

発達障害のある人のうち、ASDの人は、耳からの情報処理が苦手なことがあり、指示が聞き取りにくかったり、聞き間違えたり、長い説明が途中で分からなくなったりする場合があります。また、ADHDの人は、同時に複数の情報が入ってくると、どれに注意を向けていいのか混乱することがあります。
こうしたことに対する工夫・改善のポイントとしては、

・口頭ではなく、メモやメールなどの「文書」でひとつずつ伝えてもらうようにする
・些細なことでも必ずメモを取る
・できるだけ一対一、できれば窓口となる人を限定して、対面で指示をしてもらう
・図やイメージ、フローチャートなどを使った自分流のマニュアルを作る/作ってもらう

などが挙げられます。

仕事の段取りがうまくいかない

ADHDの人は衝動性が強く、目に付いたところから次々と手をつけて、やるべきことを忘れてしまったりすることがあります。また、仕事を先延ばしする傾向もあり、中長期の仕事をうまく管理するのが難しいことがあります。一方、ASDの人は、全体を客観的に見て仕事の段取りを組み立てたり、優先順位を決めたりすることが難しい傾向があります。
こうしたことに対する工夫・改善のポイントとしては、

・仕事をパターン化する/記憶に頼らない
・やるべき仕事をすべて書き出し、順番をつけ、見えるところに貼る(ノートや付箋などを利用)
・終わった仕事からどんどん消していく/付箋を捨てていく
・優先順位がつけられないときは、上司や周囲の人に優先順位を決めてもらう

などが挙げられます。

片付けられない、物をなくす

注意・集中力の問題もありますが、人によってはこだわりや視覚認知・空間認知の問題で片付けがうまくできない場合もあります。
こうしたことに対する工夫・改善のポイントとしては、

・しまう場所を決めておく
・保管場所を一覧表にし、目の届くところに貼る
・物を増やさないよう、定期的に整理する時間を取る
・書類やメモはデータ化して保管する

などが挙げられます。

報告・連絡・相談が苦手

発達障害のある人がよく起こす失敗のひとつに、仕事で適切な報告や相談をすることができず、トラブルになるということがあります。
工夫・改善のポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。

(1)タイミングが分からない場合
・メモにして相手の机に置いておく
・「今よろしいでしょうか?」と尋ねる
・上司と相談して、定期的に報告するタイミングを決めておく(毎日○時にする、3日ごとにする、など)
・上司と相談して、業務のフローを明確化し、どの時点で報告すればいいのかルールを決めておく

(2)「何を報告すべきか」が分からない場合
・何をどのように報告するかのポイントを、あらかじめ例を出して具体的に教えてもらう
・報告する前に、伝える内容を整理して紙に書いてまとめる
・口頭だけでなく、文書やメールでの報告でも良しとする

(3)誰に相談していいのか分からない場合
・業務によって、それぞれ相談相手を決めておく(例:コピー故障→○○課長)

などが挙げられます。

このように、自分の特性や「苦手なこと」が分かれば、さまざまな工夫によって、生活上のつまずきを減らしていくことは可能です。しかし、苦手なことばかりに目を向け、その改善や克服だけを考えていても、なかなかうまくいきません。苦手なことへの対処と同じくらい、「得意なこと」や「自分の強み」を活かす方法を考えていくことも大切です。
例えば、ASDの人の中には、非常に集中力が高く、他の人が苦手なルーティンワークや緻密性を必要とする作業が得意な人もいます。自分の関心のある分野であれば、データや文献を調べることに高い能力を発揮する人もいます。また、ADHDの人の中には、高いエネルギーと行動力があって、気おくれせずに誰とでも話をすることができたり、発想力が豊かでいろいろなアイデアを出せるというような人もいます。
「得意なこと」や「自分の強み」が活かされるということは、職場にとって「必要な人材」になるということです。そうすれば、周囲の人も「まあ、お互い様だな」という気持ちで受け入れやすくなり、苦手な部分もフォローしてもらいやすくなります。
苦手なことへの対処と同時に、こうした「得意なこと」や「自分の強み」を活かすことも考えてみてはいかがでしょうか。そして、企業にも、ぜひこのような「本人のいいところの活かし方」を検討していただければと思います。