これまでの放送内容

「生きづらさ」を聞いてくれ

2006年6月13日(火)お問合せ情報

VTR画像:「生きづらさ」を聞いてくれアルコール依存症になってよかった
引きこもりになってよかった
ノイローゼ、自殺未遂、リストカットをしてよかった
対人恐怖症になってよかった、いじめられてよかった
ぶざまでみっともなくて、よかった
みんなに笑われてよかった、家の恥、日本の恥になってよかった
世間体が悪くてよかった

 

こわれ者の祭典

 4月下旬、東京新宿のライブハウスで、「こわれ者の祭典」というイベントが行われました。出演者は23歳から41歳までの6人。それぞれが病気や障害に向き合ってきた人たちです。
 アダルトチルドレン自慢、脳性マヒ自慢、アルコール依存症・ひきこもり自慢……。
 オープニングでは出演者が全員登場し、自分の病気や障害を誇らしげに紹介します。

  
VTR画像:アダルトチルドレン自慢VTR画像:脳性マヒ自慢
VTR画像:アルコール依存症・ひきこもり自慢

 イベントのテーマは「生きづらさ」。病気や障害で苦しんできた思いを訴え、「生きづらさ」とどう向き合い乗り越えていくかを考えていこうというものです。
 舞台では、踊りや詩の朗読、歌などさまざまなパフォーマンスで自分をさらけ出します。

 

VTR画像:周差則雄さん詩の朗読:周差則雄さん(脳性マヒ)

 あした死んでしまうかもしれない

 今やりたいことをやらなくちゃ

 このイベントは4年前に新潟で始まりました。その後、東京でも開催するようになり、今回で21回目を迎えます。

 イベントの発案者、月乃光司さん(41歳)は、長年、アルコール依存症に悩んできました。現在はビル管理会社に勤務しています。

VTR画像:月乃光司さん詩の朗読:月乃光司さん(アルコール依存症・ひきこもり)

 アルコール依存症になってよかった
 お酒をたくさん飲んで、
 酒税をたくさん払い、
 我が国の経済に貢献した
 アルコール依存症になってよかった
 精神病院に入院して
 「あなたの知らない世界」を見ることができた

 高校に入学してから「自分の顔が醜い」という思いにとらわれ始めた月乃さん。人に見られること、話すことが怖く、クラスでは常に独りでした。
 その後、大学は中退し、24歳からひきこもりの生活が始まりました。
 月乃さんの小さいころの夢は、東京で漫画家になること。「どうしてこうなってしまったのか?」という焦りやふがいなさ、そして自分に対する怒り。壁やドアをけ飛ばすこともたびたびでした。

VTR画像:月乃光司さん月乃: 「ほんとうはこうじゃなかったはずだ」「何かいい“ほんとう”があったはずだ」と感じていたわけですよ。「漫画家として成功している」とか、「東京でもっと華々しく活躍している」とか。それが、こっちに紛れ込んで、迷い道に入ってしまったというか、「ここにおれはいるべきではない」と思って。
 そうすると、もうほんとうに何とも言えない自分に対する怒りとか、親とか誰かのせいにしたりとか、そんな気持がグルグル巡って、壁をけるしかないんですよね。

VTR画像:アルコール依存 アルコールにも依存するようになった月乃さん。ひきこもってから1年後、遺書を書き、睡眠薬とアルコールで自殺を図りました。
 病院「に運ばれ、命は取り留めましたが、その後、精神科に入退院を繰り返すようになりました。

VTR画像:3回目の入院時の日記月乃: もう大丈夫だから、こんな病院、一生戻ってこないと思ったわけですよ。それでアルバイトとかしたんですけれど、現実慣れしていないから、務まらなくて。
 傷つくのがだめなんですね。「傷つくことで覚えていく」という感覚がなくて、傷つくと、とにかく世の中が怖い。また結局部屋の中に戻ってしまうみたいな。
 飲酒運転をして車を壊したりして、3回目の入院になったんですけれど、別に「入院して治してやろう」とか「ここでお酒をやめて頑張ろう」とか思った訳じゃないんです。父親にも当然怒られて、家にも居場所がなくなって……。病院というのは楽ですよね。全然やる気がなかったので、「また寝てよう」と思ったんです。
 3度目の入院で、心情に変化が生まれました。その時の日記には、ありのままの自分を見つめようとする気持がつづられています。

 『バカにされているのではないかという恐怖感があるが、実際ばかなのだからしょうがない。
 みんな「苦しい」のだ。でも1日はちゃんと過ぎていくのだ』

VTR画像:入院中出会った人たち 入院中、月乃さんは同じアルコール依存症に苦しむ人たちと出会いました。仲間たちとは、人に言えなかった悩みや失敗を話し合うことができました。そして月乃さんは、回復のきっかけをつかみます。
 だめな自分をさらけ出すことで楽になったと言う月乃さん。このイベントも、自分の体験を聞いてもらいたいと始めたのです。

詩の朗読:月乃光司さん(アルコール依存症・ひきこもり)

 アルコール依存症でありがとう、引きこもりでありがとう
 生きづらくてでありがとう、ぶざまでありがとう
 みっともなくてありがとう、笑われてありがとう
 リストカットでありがとう、自殺未遂でありがとう
 こわれ者でありがとう、精神科病院でありがとう
 ありがとう、神様! 
 アルコール依存症になってよかった! 引きこもりになってよかった!
 神様、ぼくに生きづらさを与えてくださり感謝します!

 舞台では、出演者それぞれが自分の生きづらい体験を語り、その中で客と共に生きるヒントを探っていきます。

 女装して登場するKacco(カッコ)さん。現在、イラストなどの仕事を手がけているKaccoさんは、そううつ病と摂食障害で拒食と過食を繰り返していました。そのころのつらい体験を演じます。

VTR画像:Kaccoさん詩の朗読:
Kacco
さん(そううつ病・摂食障害)

 そんな時にはね
 むなしさや いらだちや 憎しみや
 ことばにできない感情が
 いっぱいわき上がってきて
 気がつけば 毎晩
 こんなふうに食べちゃっているんだよ
 おかしいでしょう 変でしょう
 きたないでしょう
 ねえ 何とか言ってよ

 不動産関係のサラリーマンだったKaccoさん。28歳の時、摂食障害、そううつ病と診断され、精神科に入院。絶望感から自殺を図ったこともありました。
 舞台で女装をするのには理由があります。別の人格になることで、病気のころの自分をより客観的に見つめ直すことができるからです。
 長期の入院、ひきこもり、自殺未遂……。女装することでその体験を赤裸々に語ります。

VTR画像:KaccoさんKacco 自分自身が一番つらかった時期を忘れちゃいけないと思うんです。それをなしにして、ただパフォーマンスイベントにしちゃったら、それは誰にでもできちゃうし、メッセージ性も薄いだろうし、共有する気持も薄いだろうし。
 死のうとした自分が言うのもおかしいですけれど、救われたからこそ言わせてもらえるのなら、「何はともあれ、命が一番大事」。
 今、命を絶とうとしている人がいるんだったら、イベントで何かを感じてほしい。そういうイベントにしていきたいし、来てくれるお客さんから、死者は1人でも出したくない。

詩の朗読:Kaccoさん(そううつ病・摂食障害)

 そうだよね KaccoはKaccoでいいんだよね
 背伸びなんてしなくていい 小さくなんてなってなくていい
 等身大の自分でいいんだよ
 周りの人のスピードについていけなくたっていい
 前の人を追い越せなくていい ゆっくり歩いていこう
 心からそう思えたらね とっても楽になれたんだよ
 ほんとう びっくりするけれど 変われば変わるものだね
 ここに「今 幸せですか」って聞かれたら
 迷わず「幸せです!」と答えられるKaccoがいます
 これがほんとうの幸せなんだよね
 苦しくてダメダメだった5年間 ほんとうにありがとう
 こんなにたくさんのことをKaccoに気づかせてくれて

 

VTR画像:観客観客: 心の傷を隠さずに、「わたしはこれだけつらいんだ」とみんなに主張できるということ、心の傷を負い目に見ていないところが、とてもすばらしいと思います。

VTR画像:観客観客: 実は最近も元気なかったりした部分もあったんですけれど、「きょう、これがあるから」と思って頑張ってこられました。「ああ、やっぱりきてよかった」と思いました。

VTR画像:観客観客: 初めて見させていただきましたが、耳と目と感覚と空気と、ほんとうに五感以上のもので感じることができて、「自分もこのままでいいのかな?」とKaccoさんに思わせてもらったり、月乃さんに引っ張ってもらったりしました。
 イベントは協力者の支援を受けて成長してきました。

VTR画像:江口歩さん 新潟でお笑い集団を率いる江口歩さんは、自分が司会をするラジオ番組で月乃さんと出会い、「病気体験をテーマにしたライブをやりたい」という月乃さんの話に共感し、イベントのプロデューサーを引き受けたのです。

江口: 障害者に限らず、普通にサラリーマンをしていても、上司との関係だとか、いろいろな悩みを抱えているじゃないですか。そういう時に、「自分はいったい何なんだ?」ということは多かれ少なかれ考えますよね。
 この「こわれ者の祭典」は、そういった弱さとかいろいろな部分を抱えながら、どこかで役割を見つけていく、そんな作業なのかなという気がします。
 月乃光司みたいな人間でも、今、こういう役割りを持っています。だから、お客様も今はわからないかもしれないけれど、きっと何か役割があるよ……と。
 イベントが回を重ねるごとに、月乃さんや江口さんの思いに共感する人が増えていきました。最初4人だったメンバーは、現在9人です。
 アイコさん(23歳)もその1人。4年前、月乃さんのパフォーマンスを見て衝撃を受け、自分も仲間に入りたいと思いました。
 高校生のころ、人込みの中で息苦しさを感じるようになったアイコさん。いつも独りぼっちで、生きていることに苦痛を感じる日々が続きました。
 その思いを伝えたいと、3年前、初めて舞台に立ちました。しかし、観客の視線が怖くなり、「自分を見ないでください」と頼みました。舞台の片隅で朗読するのが精いっぱいだったと言います。

VTR画像:アイコさん詩の朗読:アイコさん(強迫観念)
その子はつぶやきました
「孤独で死にそうなの」
孤独? 孤独なの?
ほんとうに1人なの?
わたしは伸ばしかけた手を止めて 気づきました
自分の耳の後ろに流れる血の音を聞きながら

思い出した!
それはいつかのわたしでした。

VTR画像:アイコさん

アイコ: 昔から容姿コンプレックスがすごく大きかったので、顔を見られるのがすごく嫌で、周りは全部、自分よりもプラスの人しかいなくて、この人はこれがいいから、この人はここがいいから、だから、それより下にいる自分を絶対笑うはずだとずっと思っていて……。

 初めての舞台で観客の視線が怖かったアイコさん。しかし、2度3度と回を重ねるにつれ、ほかのメンバーと同じように自分をさらけ出すことができるようになっていきました。最近では、自作の歌も披露するようになりました。

VTR画像:アイコさん透明色 詩・曲 アイコ
明日はもう無いと思って
息をじっと止めてた
ここから見えるものは
開けられないカーテンと
開かないドアのぶ
ここから見える景色をリコーダーで
殴り殺したいとさえ思っていた

すれちがう人の呼吸にさえ 怯えて泣いてた動けなかった
すれちがう人の呼吸にさえ 怯えて泣いてた動けなかった
明日はもう無いと思って、息をずっと止めていた

アイコ: 自分だけがダメだと思っていたこととか、自分だけおかしいと思っていたことが、案外(同じように思っている人が)大勢いるんだなというのがわかって、自分の格好悪い部分を人に普通に言えるようになったら、もうそれ以上悪い部分はないから楽になりました。

 イベントでは観客が出演者にさまざまな悩みを打ち明ける時間も設けられています。

VTR画像:観客観客: 元アルコール中毒です。月乃さんに、また精神的に危うくなった時に、アルコールから抜け出す方法をお聞きしたいなと。

VTR画像:月乃さん月乃: アルコールに問題のある人が、1人でアルコールをやめるということはたいへんなことなので、共通の目的を持つ人といっしょにやるのが一番。
 同じようにお酒をやめる目的の人たちの群れの中に自分をおくと、1人ではできないことが、共同体の力でもたらされるので……。あなたもわたしも仲間です。

 さまざまな生きづらさを抱える人は皆仲間だ。そのメッセージを月乃さんはこれからも伝えていきたいと思っています。

VTR画像:月乃さん仲間
僕と同じ匂いを感じる人達
それは僕の仲間だ
僕と同じ「生きにくさ」を持つ人達
それは僕の仲間だ
手首に傷のある女の子僕の仲間だ

ひとりぼっちの部屋、見つめるのはインターネットだけの少年
僕の仲間だ
全国100万人の「引きこもり」の皆様僕の仲間だ
日本全国200万人の「アルコール依存症」の皆々様僕の仲間だ
精神科病棟、外来の待ち時間に孤独を見つめる人達僕の仲間だ
仲間、仲間、仲間、仲間
仲間がいれば、僕は生きていける

仲間で、傷を舐めあって、傷口をほじくり回して、
傷口をつつきあって、流血して、大流血、
血と汗と涙を流しながら、生きていこう仲間

足に釘が刺さっていて動けない道ばたで倒れて、
ひとりぼっちで泣いていた
誰も足の釘を抜いてやることはできない
痛みを取ってやることはできない
でも、僕と同じように足に釘が刺さった仲間が
「俺も痛いんだ! でも一緒に這っていこうぜ」って言ってくれたら 
僕も前に進める気がする。
痛みながら、這っていこう、1日、1センチずつの前進だ

悲しみの嘔吐、過食症の女の子僕の仲間だ
全世界、6000万人の統合失調症の皆々様方僕の仲間だ

不潔恐怖、対人恐怖、視線恐怖、自己臭恐怖、 先端恐怖、
醜形恐怖、広場恐怖、強迫観念,パニック障害、
全宇宙のノイローゼの皆々様方僕の仲間だ
脳性マヒ、ボーダーライン、解離性障害、性同一性障害僕の仲間だ
閉鎖病棟、鉄格子を越して僕と同じこの空を見上げる人達僕の仲間だ

仲間、仲間、仲間、仲間、仲間

●出演

  • 月乃 光司さん(アルコール依存症・引きこもり)
  • Kaccoさん(そううつ病、摂食障害)
  • アイコさん(強迫観念)
  • 周佐 則雄さん、DAIGOさん(脳性マヒ)

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