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点字ブロック、多目的トイレなど、わたしたちの身の回りのさまざまな所にバリアフリーの精神が広がっています。しかし、利用者の立場になってみると、そこには思わぬ落とし穴が……。
シリーズ「バリアフリーの精神」。きょうは、知っているようで知らない音響信号の世界を徹底的にご案内します。 |
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町永: きのうは、夜になると止まってしまう駅のエレベーターをリポートをしていただきました。きょうは?
マックン: 音の出る信号、音響信号です。「とおりゃんせ」とか流れていますよね。まずは、ふだんこの音響信号を利用している方に案内していただきました。ご覧ください。 |
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音響信号の不思議 |
視覚障害者のための施設が多く、点字ブロックなどバリアフリーの環境が整っている東京の高田馬場にやってきました。案内役の鈴木真澄さんは、網膜の病気のため視力のほとんどを失いましたが、何にでも挑戦するパワフルな女性です。
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3年前から空手の道場に通っているという鈴木さん。視覚障害者で空手をやっている人はあまりいませんが、空手で養われる敏しょう性とバランス感覚が道を歩く時にとても役立つと鈴木さんは言っています。
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ここ、高田馬場で働いている鈴木さんに、一日に一度は通るという音響信号のある場所に連れてきてもらいました。
鈴木: ここの押しボタンを押して、信号が青になるのを待ちます。
※ボタンを押すと「ピロリン」という音がなり、信号が青になると「とおりゃんせ」の曲が流れる。
マックン: よく利用するこの信号、使い勝手はどうですか?
鈴木: すごく安心して渡れます。音が鳴っている間は青信号だとわかっていますので、まっすぐ歩きさえすれば、よほど変なふうに曲がってくる車がない限り、ひかれることはありませんからね。 |
日本で音響信号が設置され始めたのは昭和30年代。最初のころはベルやブザーが鳴り響く、にぎやかなものが多かったそうです。
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その後、全国で普及していくに伴い、音の種類もどんどん増えていきました。その数、なんと20種類以上。しかし、利用者の混乱を招いたため、昭和50年に「とおりゃんせ」「故郷の空」そして「カッコウ」「ピヨピヨ」という2種類の鳥の声に統合、現在に至ります。
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3人は別の交差点にやってきました。
マックン: ここの信号は「ピヨ、ピヨ」ですね。
パックン: 感覚的にはいっしょ? 違いますか?
鈴木: わたし個人的には「とおりゃんせ」のほうが好きです。「ピヨ、ピヨ」って音がとぎれるじゃないですか。「止まっちゃった? あ、まだ鳴っている」という妙な不安感が怖いんです。
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「音がとぎれる」とはどんな感じなのか。パックンがアイマスクをして体験してみました。
パックン: あれ、点字ブロックがないね。押しボタンの所まであったほうがよくない? |
あ、「ピヨピヨ」鳴ってるよ。確かに、とぎれている感じがして怖いね。終わっちゃったかと思って焦っちゃうよ。それに、交差点ってこんなに広かったんだ。
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現在、音響信号の8割以上がこの鳥の声となっています。前後の信号が交互に鳴る「鳴き交わし方式」と呼ばれ、警察庁が専門家や視覚障害者団体と検討を重ね、2年前に導入しました。
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・前後から同時に音が出ると、前からの遠い音は打ち消され、後ろからの近い音しか聞こえず、進む方向がわかりにくくなる場合がある。
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・交互に音が出る鳴き交わし方式は、進む方向が確認しやすい。
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ふだん音響信号を使っている視覚障害者の方にとって、メロディーと鳥の声にはどのような違いがあるのでしょうか。鈴木さんの職場、日本点字図書館で聞いてみました。
女性: 個人的には音楽「とおりゃんせ」のほうが渡りやすいです。音が鳴っている途中にその信号の所に来た時、曲の後半だったら、「もうすぐ赤になる」とわかりますし。
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男性: 生まれ育った所が「鳥の鳴き声」だったので、そっちのほうがなじみはありますけれど、今はどっちでもいいです。
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女性: 「カッコウ」だと止まっている時間があるので、ずっと鳴っている「メロディー」のほうがいい。
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日本点字図書館館長 岩上義則さん: わたしは「鳴き交わし」のほうが音楽よりも騒音性が少なくていいと思います。だけど、ケースバイケースですので、道や信号の状況によっては、メロディーも残していったほうがいいと思います。
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同時になるメロディーと、鳴き交わしの鳥の声
町永: 音響信号って50年以上も前から導入されていたんでしょう? よく耳にしていても、知らないことって多かったですね。パックン、アイマスクをして試してみて、どうでした?
パックン: 怖かったです。車の音がすごく近くに感じるんですよ。でも、そこに音響信号があると、頼りがいがあって、「渡れる」という自信になります。
マックン: パックンは「ピヨピヨ」が怖かったようですが、点字図書館の職員さんも、ほとんどの人が「メロディー」がいいと言っていました。でも館長さんは「ピヨピヨ」の鳴き交わしがいいと。意見が分かれますね。 |
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| 村上琢磨さん |
ゲスト:
NPOしろがめ塾 代表 村上琢磨さん
歩行訓練士。しろがめ塾では視覚障害者のためのガイドヘルパーを養成している。 |
−村上さんは「ピヨピヨ」という鳴き交わし方式の開発に携わったということですが、その特徴を教えてください。
村上: 向かい側、渡る方向がわかりやすいということです。自分が立っている側で「ピヨ」と鳴ると、次は向かい側で「ピヨ」と鳴る。その方向に渡っていけばいいということです。
「とおりゃんせ」のようなメロディーの場合は、両方同時に鳴ってしまうので、向こう側の音が聞きにくく、進む方向がわかりにくくなる可能性があります。
パックン: でも、その「ピヨ」と「ピヨ」の間の沈黙が意外と長いんですよね。終わったかと思って一瞬焦り、また「ピヨ」となって、ホッとするんです。 |
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まだある音響信号の不思議
次は、鈴木さんが今まで行ったことのない信号に向かいました。
パックン: 音響信号用のボタンは、どうやって探すのですか。
鈴木: 信号に着いたら、何となく探して、「何かある。これかな?」で、「押しボタン」と点字で書いてあったら、「押す」という感じです。
パックン: 「何となく」の傾向は、統一されているのですか。
鈴木: 横断歩道の「右にあるか、左にあるか」ということだけで、「手の届く高さ」にあります。
警察庁では、原則として押しボタンは横断歩道のすぐ脇の柱に付けるよう指導しています。そのため、初めての信号でもすぐにボタンを見つけることができるのです。
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マックン: さっき鈴木さんは、「だいたい信号の右か左か」と言っていましたが、これは変な所にありますよ。
鈴木: え、これは車止めのポールじゃなくて? あ、ほんとうだ。「押しボタン」って書いてある。
不思議な押しボタン。いったいどの信号のためのものなのか、押してみました。
鈴木: あっちで鳴ってる。何で?
パックン: 交差点から10歩はありますよ。 |
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町永: ずいぶん変な所にありましたね。
マックン: 調べましたら、水道工事のため信号と押しボタンを動かすことになり、警察は「誘導員をつけることで許可した」と。そして、去年1月その工事は終了したけれども、連絡が警察になかったため、押しボタンはそのままの場所に残ってしまっていたということでした。今回、僕らが連絡したことによって、移動してくれるということです。
町永: バリアフリー探検隊。探検するだけじゃなくて、ちゃんと改善に結び付けている。偉いですね。 |
ほかにも…
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・押しボタンの前に灰皿
押しボタンより先に灰皿を触ってしまい、「ここではない」と思ってしまう可能性がある。また、誤ってやけどをする危険も。
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・押しボタンの前に車止め
つえを突きながら歩く視覚障害者。車止めにぶつかったら、押しボタンまでたどり着けない。
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村上: もともとの約束事は正しくできていると思うのですが、付ける方が「目が見えない」という意味合いをわかっていないのではないかと思います。「近いからいいよね」と。また、音響信号が出始めたころ、目の不自由な方の主な行動範囲は自分の住んでいる地域の近くだけでした。ところが今は、知らない所でも出かけます。そういうことを想定していないのですね。 |
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音の鳴らない音響信号
マックン: 最初に来た、鈴木さんがよく使う音響信号のある信号に戻ってきました。ここにも実は問題があると?
鈴木: そうなんです。夜8時を過ぎると、音が鳴ってくれないんです。
パックン: でも、8時以降に町を歩くことだってあるでしょう?
鈴木: あります。昼間はすごく安心して通れる場所であるだけに、逆に怖いんですよ。 |
夜8時すぎ、町はすっかり暗くなりました。ほんとうに信号の音は止まってしまうのか。パックンマックンの2人が確かめにやってきました。
マックン: 今、8時12分です。
パックン: 押してみますよ。あれ、「ピロリン」が鳴らないですね。あ、信号もいつの間にか青になっている。
マックン: まだこの時間、車の通りも昼間と変わらずありますから、怖いですね。
パックン: この時間も使えるようにしてほしいよね。
昼間とても便利で安心だっただけに、夜、音の鳴らなくなった横断歩道は、鈴木さんにとってとても怖く感じられるのだそうです。
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町永: 夜になると音響が消えてしまうのはどうして?
村上: 音がうるさいという地域住民からの苦情です。でも、鈴木さんもおっしゃっていたように、本来鳴るべきものが鳴っていないというのは、視覚障害者にとってとても怖いことです。 |
新しい音響信号
パックンが持っているのは、端末。歩行者信号の横に、赤外線の発行機。信号に近づくと、端末が「赤です、渡れません」「青です」としゃべり出す。端末のスピーカーは携帯ラジオ並の大きさ。音量も小さくて、近所迷惑にはならない。
町永: このような新しい技術によって難しい問題も解決できると思いますが、今後の課題は?
村上: 今の社会は目から入る情報がすごく多いのですが、だからこそ、目の見えない方に別の形で情報を入れることが必要ですし、このような新しいこともどんどん体験してもらいたいと思います。
町永: 視覚障害者の方たちの、「メロディーがいい」「鳴き声がいい」といった多用な要望にどう応えるのかも難しい課題ですね。
村上: ひとつの信号機に両方がセットされていて、当事者が自由に選べるようになるといいのでは? というのがわたしの提案です。
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