今月は大人のADHD(注意欠陥多動性障害)についてお送りいたしました。きょうは、皆さんから番組あてにお寄せいただいたご質問やご相談にお答えいたします。
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| ADHD、子どもから大人へ |
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精神科医 田中康雄先生
――大人のADHDについての認識の現状はどのような感じなのでしょうか。
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「子どものADHDについて、ようやく広く認識されつつある」というのが現状です。大人になっても継続してADHDが認められるということについての理解は、まだまだ十分ではありません。
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――子どものADHDの治療の経験から、大人のADHDについて、どのようにお考えですか。
基本的に、ADHDは「発達障害」だと考えています。脳の働きの一部が十分に機能していないことが原因で、小さいころから「生活のしにくさ」としてのさまざまな症状を出すのがADHDです。
その「生活のしにくさ」の一部分は、大人になっても継続して認められ、その状態で苦しんでいらっしゃる方がいらっしゃるということを実感しています。
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| 私もADHD? |
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35歳 会社員 女性
私は、35歳を境に仕事をこなすことが難しくなってきました。上司の指示などを、すぐ忘れてしまいます。今まで、仕事を同時に2つ3つこなしていたのができなくなり、順序良くするのも苦手です。いつの間にか違うことをしている自分に気がつき、悩んでいます。
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家でも、片づけが出来なくなって家族に迷惑をかけています。わたしがADHDなら、このように、急になることがあるのでしょうか。
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「35歳を境に」とおっしゃっていますが、ADHDというのは「発達障害」ですので、ADHDであるならば、子ども時代からその症状は認められているはずです。したがって、「成人になって、急に表れてくる」という場合、ADHDの可能性は非常に低いものと思われます。ADHDの診断のためには、この方の小さいころの状況を詳しく聞いてみないとわかりません。(田中先生)
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29歳 専業主婦
私も片づけられないことで悩んでいます。小さい頃から片づけがどうしても下手で、一つのことをやっていても、ふと他のことを思い出すと、そちらに気がいってしまいます。
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母には「なまくら」だから片づけられないのだ。性格のせいだと言われてきました。ADHDとただの「なまくら」と見分け方がありますか?
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ADHDは、「多動」「不注意」「衝動性(せっかち)」という3つの柱をもとにした、幾つかの指標を鍵に診断をします。ですから、「片づけられない=ADHD?」と飛躍するのはとても乱暴です。ただ、「片づけられない」こと以外にもADHDの症状に合致する「生活のしにくさ」を持っていらっしゃるのならば、周りから「なまくら」だと見られることは、この方にとってとてもつらいことだと思います。(田中先生)
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| ADHDの診断基準 |
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【ADHDの診断手順】
ADHDの場合、子どものころからその症状が見られます。したがって、その方の子ども時代に注目することが必要になります。
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本人に、現在の様子・状況などを質問し、
ADHDが疑われる場合。
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本人に、子ども時代の様子を質問し、
本人が子ども時代のことを報告できない場合。
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ご両親などから話を聞く。
保育所・幼稚園時代のお便り帳、学校時代の通知表に書かれている行動の評価を見る。
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【ADHDの診断基準】
実際の医療現場では、アメリカの診断基準を参考にしながら診断しています。
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■不注意
1.勉強、家の用事などで、注意が足りないことがよくある。
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2.勉強や遊びで、注意を続けることが難しいことがよくある。
3.話しかけられた時、聞いていないように見えることがよくある。
4.言われたことができず、勉強や家庭で、義務を果たせないことがよくある。
5.言われたこと、やりたいことを順序立ててするのが難しいことがよくある。
6.努力が必要なことを、避けたり、しぶしぶやることが多い。
7.必要なものをよくなくす。
8.何かの刺激で、注意が簡単にそれてしまう。
9.毎日やっていることを忘れることがよくある。
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■多動性
1.手足をそわそわと動かし、座っていても落ち着かないことがよくある。 |
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2.座っているべき状況で席を離れてしまうことがよくある。
3.してはいけない状況なのに走り回ったり、高い所に上ったりすることがよくある。
4.遊びや趣味の時間で、静かに過ごすことが難しいことがよくある。
5.じっとしていない。何かに動かされているように行動することが多い。
6.度を超えて話すことがよくある。
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■衝動性
7.相手の質問が終わる前に、突然、答えてしまうことがよくある。
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8.順番を待つのが難しいことがよくある。
9.他人のしていることを妨害したり邪魔してしまうことがよくある。
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この基準を○×で見ると、「○が多い」という方はけっこういらっしゃいます。しかし、ADHDと診断するには、小さいときからこのような症状が認められなければなりません。ですから、診断基準には「7歳以前に」というただし書きがあります。
つまり、就学前後にこのような状態が、著しく年齢不相応に存在していたかどうかが問題になります。
それから、このような状態が「幼稚園・保育所と家と」というように、複数の場所で同じように見られるということも条件です。そして、一過性ではないということ。「6か月以上、継続して認められる」ということもただし書きになっています。
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――さらに、補足的な診断も行われるのでしょうか。
心理発達検査や、場合によっては脳波を調べたり、脳の働きを診るためにMRIや、スペクトなどの画像診断を使う場合もあります。また、このような状態がADHD以外の、例えば精神科の何か別なものとして説明ができないか、ということも診ていきます。
このような、さまざまなステップを踏み、最終的にやはり「ADHDという診断が妥当ではなかろうか」となった場合、暫定診断として、「ADHDとして見ていきましょう」とわれわれは判断します。
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――わたしたちが、自分だけで早々に判断できるものではないのですね。
そのとおりです。
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――では、どこに行ったらこのような診断を受けることができるのでしょうか。
ADHDの人というのは、「多動」「不注意」「衝動性」という3つの柱の症状がある故に、「生活のしづらさ」を感じているわけです。ですから、ご自身の悩みや生活のしづらさについて相談し、そこを改善していくということで、心療内科や精神科など、相談できる機関に行かれるのがいいと思います。
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| ADHDの治療法 |
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28歳 男性
ADHDは障害だといいますが、そもそも完治するものなのでしょうか。それから、治療法には、どういった種類のものがあるのでしょうか?
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ADHDというのは、「発達の段階でのアンバランスさ」「脳の働きの一部のつまずき」だと考えていますので、成長するにしたがって、程度の部分が薄まったり、強く表れたりすることがあったとしても、消えてなくなるものではないと思います。
ですから、そういう状態とどううまく付き合っていくのか。生活の知恵のようなものを自分なりに会得していくというのが1つの治療法だと言えます。
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――その手法としてはどんなことが挙げられますか。
「多動」「不注意」「衝動性(せっかち)」を、1つは自分自身でうまくコントロールしていくやり方。代表的なものとしては、薬物療法があります。そしてもう1つは、周りの人の助けを借りながら、うまくコントロールしていく、環境調整です。この環境調整と薬物療法をバランスよく使っていくことが、一番の治療法ではないかと思います。
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――薬の場合、どのようなものが使われるのですか。
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一般的には、 『中枢神経刺激薬』 が使われます。非常に一時的ではあるのですが、この薬の力を借りることで、どうもうまくいかなかった生活の部分をうまくすることができるようになります。
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――「一時的」ということは、その効いている間に、いかに環境調整をうまくやるかということになるのでしょうか。
そのとおりです。薬で完治するとか状態が消えるということではなく、自分自身をコントロールする補助として、薬を使うということです。服用して30分前後で効果が表れ、3時間から4時間ぐらいは持続します。
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この時間帯に、自分の自己評価が上がる、あるいは下がらないような作業に取り組むことで、達成感、充実感というものが得られると思っています。
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――大人のADHDの対処法として目指すのは、その環境調整ということですが、具体的にどのように環境調整をしたらいいのか、その方針を教えていただけますか。
基本的には「どうやってこの生活のしにくさを改善していくか」。片づけものをどうしたらよいか、忘れないようにするにはどうしたらよいか、というところが環境調整になります。
そこで、まず自分なりの工夫ということで、メモやノート、パソコンなどを活用し、自分なりの管理を図る。もう一方では、周りの人に十分理解していただき、助けてもらう。これはとても大事なことだろうと思います。
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――子どもさんの場合、親や学校の先生など、周囲のサポートは得やすいと思うのですけれども、大人の場合、そういうことを求めにくいということもあると思います。
ですから、大人のADHDというものが、「その人の怠けや、やる気のなさから生まれてくるものではない」ということを周囲の人たちが理解してくれることで、「生活のしにくさ」はずいぶん改善されていくのではないかと思います。
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| 私の対処法 |
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29歳 主婦兼会社員 女性
私の症状は、次のようなことです。
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- 思ってもみないことを突然、発言してしまう。
- 物事の優先順位をつけるのが下手で、何でも背負い込んでしまう。
- 人の話やものの置き場所をすぐに忘れる。
しかし、これまで、職場の方々、友人や主人に手伝ってもらいながら、対処法を編み出してきました。
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- 相手の反応をシュミレーションしてからゆっくり話す。
- とにかく紙に書き出して順番を決め、頼む必要のあることからやる。
- 一度に始めない。「○時にやります」と周りに宣言して、余裕を持つ。
そして、何よりも大事なのは、「反省」はするけれど、「後悔」はしない。つまり、うじうじと自分を責めないことです。
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35歳 主婦兼自営業 女性
「自分は出来の悪い人間」と子どもの頃より思いこんできました。しかし、そこから解放され、プラス思考をモットーに生きられるようになりました。
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事実が変らなくても、考え方を変えることで生活さえも変ってきたことを実感しています。おしゃべりなことや次々と発想が浮かぶことを自分の長所だと思えるようになりました。片づけられない…。もちろん直ってはいませんが、夫にも理解してもらえるようになり、何とか頑張っています。つらい時は無理をせず、家族にSOSを発信しています。
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24歳 団体職員 女性
私は、小さい頃から人の言うことが聞けなかったり、うまく片づけられないことが悩みでした。
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今年の4月から社会人として働いていますが、最初は、書類のミスや予定忘れが多い日々を送っていました。
今は、自分なりの工夫でずいぶんよくなりました。スケジュール管理とメモに、徹底してとりくんでいます。おおまかな月間予定表、その日にやることを時間単位で示した予定表、そして時計を並べて目に入るようにしています。
メモも、付せんに必ず書き込んだり、他にも大きめの紙にチェックリストを作って張ったりしています。1日の終わりにメモ紙を整理して、スケジュール表に書きます。やり方次第では他の人と同じようにやっていけると思います。
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やはり、「生活がしにくいという部分を、どう変えていけるのか」ということについては、本人の努力もさることながら、周りの理解が必要だということです。それと、大人の方の場合、「どういうことがきっかけで、今までの自分から前向きな自分に変えられたのか」。僕はそこがすごく知りたいです。
皆さん、非常に努力されていて、そして、その努力が周りから評価されていくということは、とても大事だと思います。(田中先生)
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――最後に、皆さんに一番お伝えしたいことは。
ADHDに対する理解が高まること、深まっていくことは、わたしとしてはとてもうれしいことです。
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そして、今回のようにADHDのある大人の方たちが、それぞれ工夫して生活されているというその姿は、ADHDのある子どもたち、あるいはその親御さんにとっても、とても励みになる、うれしい情報ではないかと思います。
田中先生、ありがとうございました。
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