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2003年4月〜2006年3月の放送記録 
木曜日 ともに生きよう

夜が怖い
〜ED(勃起障害)に向き合う〜
2004年11月25日(木)

町永アナ 今、日本には約1,000万人の「ED(Erectile Dysfunction)=勃起障害」患者がいると言われています。EDには、糖尿病や脳こうそくなどの病気によって生じるものと、さまざまなストレスが絡み合って生じるものがあるのですが、最近では心因性によるものが増えており、全体の約半数を占めています。
 男性のプライドを傷つけ、夫婦関係にも影を落とすED。きょうはその実態と回復の手立てについてさぐります。

 

EDと向き合う(40代男性の場合)

3種類の薬を処方されている 首都圏に住むこの男性(40代)は、去年4月からED専門医の治療を受け、現在3種類の薬を処方されています。

血の巡りをよくするビタミン剤が2つです。勃起させる薬の作用を助けるということで服用しています。これをのんでおくと、ちょっと気持が明るくなりますね。(40代男性)

 男性は20代前半で性交渉を持って以来、女性との付き合いがほとんどありませんでした。性的な欲求が起きても、ビデオや雑誌に接することで満足できていたのです。

ベッド 10年前、男性は知人の紹介で見合いをし、結婚しました。しかし、結婚生活は初日からつまずきました。久しぶりの性交渉に緊張し、満足な結果を得ることができなかったのです。

40代男性結婚を控えて、不安でした。20代前半には何回か性交渉を持った経験がありましたけれど、それから結婚までマスターベーションで済ませてきていたので…。実際に人肌を感じてというのと、自分で好き勝手やるというのは違いますよね。相手に対していろいろやらなきゃいけないじゃないですか。うまくいかなくてゴソゴソやってみたけれど、勃起しない。これはちょっとまずいなという嫌な感じがありました。やっぱり男ですからちゃんとやりたいなと。(40代男性)

<勃起のメカニズム>

 脳が性的刺激を受け、ペニス内の筋肉が緩み、動脈から大量の血液が送り込まれ膨張。それによって静脈が圧迫されうっ血、ペニスは膨らみ硬くなった状態を勃起という。

勃起状態のペニス断面勃起状態のペニス断面
資料提供 ファイザー社


cGMPが増えることによってペニスに大量の血液が送り込まれる 勃起を促すのはcGMP(サイクリックGMP)という物質。この物質が増えることでペニスに大量の血液が送り込まれる。
 逆にペニスを元の状態に戻すのがPDE5という物質。これが増えるとcGMPが分解され、うっ血した血液がペニスの外に排出される。

資料提供 バイエル薬品

 EDは強いストレスなどでこのプロセスに何らかの異常が起きることによって発病すると考えられている。

 男性は、その後も妻と性交渉を試みるものの、なかなかうまくいきません。結婚して1年が過ぎるころには性交渉が重荷になり、夜がくるのが怖いと感じるようになりました。

40代男性幸い、妻のほうから毎晩要求してくるということはなかったので、「きょうはちょっと疲れているから」「眠いから」「ちょっと気分が乗らないから」とか何とか言ってごまかしていました。でも時々、「きょうはやってみよか」と思うと憂うつになるというか、プレッシャーがかかってちょっと気が重い。だから、妻が生理になるとほっとするんです。生理の間はやりたくてもできないわけだから、解放された期間。(40代男性)

EDのポスター いったい自分の体はどうなってしまったのか。果たして治療できるものなのか。悩んだ末に精神科を訪ねた男性は、待合室に張られていたポスターに目がくぎづけになりました。EDという病気についての解説が書かれていたからです。その時男性は、初めて自分が病気だと気づきました。

40代男性「あ、病気だったのか。医者にかかってなんとかしてもらってもいいんだ。治療のできる病気なんだ」と、急に希望の光が見えてきた感じがしました。(40代男性)

クエン酸シルデナフィル 診察の結果、医師が処方したのはクエン酸シルデナフィルという成分からなる治療薬です。5年前に日本でも認可されました。

<クエン酸シルデナフィル>

クエン酸シルデナフィルの働きクエン酸シルデナフィルの働き

ED患者は、勃起を維持するcGMPの量が少ない上に、PDE5によってどんどん分解されるため勃起を維持することができない。この治療薬はPED5の働きを阻害することにより、cGMPの分解を防ぎ、勃起の維持を助ける。

資料提供 バイエル薬品

ペニス断面図 薬を服用し、性交渉に望んだ男性。薬の作用によりいったんは勃起に成功したものの、持続時間が十分でなく、満足な結果は得られませんでした。この男性の場合、強い精神的なプレッシャーで血液の流れがにぶり、薬の効果が十分に表れなかったのではないかと考えられています。

資料提供 ファイザー社

食卓 結婚して3年。なかなか回復せず悩んでいる男性に妻からある相談が持ちかけられました。「40歳になる前になんとか子どもをもうけたい」という強い要望です。責任を感じた男性はその後何回も性交渉を試みましたが、焦れば焦るほど体は言うことを聞きません。やがて、それまで一言も不満を漏らさなかった妻との間も気まずくなっていきました。

40代男性「あなた、立たないじゃないの」みたいなことを言われて、「今晩こそは何とかしなきゃ」という悲壮な思いになっていく。だけど、射精の前の段階で常に挫折するわけですから、そこから先を乗り越えていくというのは、果てしもない道を切り開いていかなくてはいけないような感じで、それを考えると憂うつになりますね。でも、「何とかしなきゃ」というプレッシャーはかかってくるし、言葉は悪いですけれども、立つのも立たないという感じだったと思います。(40代男性)

リプロダクションセンター 男性は今、月に一度、県内の大学病院に通院しています。EDに悩む姿を見た妻が不妊治療の本でその存在を知り、受診を勧めたのです。この病院にはリプロダクションセンターと呼ばれる不妊治療専門の施設があり、その中にED専門外来が設置されています。

遠山裕一さん 主治医の遠山裕一さんは、8年前、EDという言葉が日本でまだよく知られていなかったころから診察や治療を行ってきた専門医です。遠山さんは投薬治療を続けると同時に、男性に対して毎回カウンセリングを行っています。ざっくばらんな会話で性交渉に対するプレッシャーを和らげ、リラックスさせるのがねらいです。

40代男性遠山: ずっとご自宅の中にとどまっていないで、ちょっと気分を変えるという意味で、温泉に行く、ドライブ、ラブホテル…。そういうことによって日常のストレスから解放されると思いますが、いかがですか。

男性: とりあえず、ラブホテルのガイド本を買いました。

遠山: それはいいことですね。

40代男性ああいうふうにいろいろ教えてもらえると、「ああ、そういう手もあるのか」と、気持が明るくなる。雰囲気が変わると女性も積極的になるから、そうすると私も少し気分が変わっていいかな。ただ家の寝室で義務感にさいなまれて、という感じではなくなってきたので、それはとても精神的に助かります。(40代男性)

 カウンセリングには、妻や女性看護師が同席する場合があります。男性と女性、それぞれの感じ方を伝え合い、お互いの気持が分かってくるにつれ、わだかまりがあった夫婦の関係にも変化が生まれてきました。

40代男性「別に立たなくても私はずっと一緒だから、『どうしても』と考えなくてもいいのよ」というようなことを言ってくれて、とてもありがたかったです。気持がとても楽になりました。今までは「きょうこそ何とかしなきゃ」だったのが、「きょう何とかできなきゃ、次もあるさ」というような気持になれるので、それはありがたかったです。(40代男性)


通院を始めて1年半 通院を始めて1年半。男性は、少しずつ性交渉に前向きになってきました。「いずれは子どもも授かるのでは?」と希望も抱き始めています。

町永アナ町永: 豊かな結婚生活の前提であるはずの性交渉がうまくいかない。この男性のプレッシャーは大きいだろうなと、同じ男性として共感を覚えると同時に、こうした男の心理というものをパートナーである女性の側にも理解してもらいたい。そんなふうにも感じました。

 

EDの原因
高波真佐治さん
高波真佐治さん

ゲスト:東邦大学教授
高波真佐治さん


まだEDという言葉がない、25年以上前からこのEDについて研究し、診療にあたっていらっしゃいます。

―若い世代にEDが多いというのは?

高波: 過去の性行為の失敗や性経験の不足、仕事のストレスなどが原因として挙げられます。


町永アナと高波さん―新婚EDという言葉もあるのですか。

高波: あります。性の経験不足によって、どのように性交渉したらいいかよく分からないという方がいらっしゃいます。特に見合い結婚の方に多いようです。


高波さん―一度失敗してしまうと、「次こそは」という悲壮な決意になってしまう。これがまたプレッシャーになってしまうのかもしれませんね。

高波: 「次もまた同じ失敗をするのでは? 失敗したら立場がない」といった予期不安が起こると、交感神経が興奮し、勃起に関係する血管が拡張しません。また性的な興奮も抑えられてしまいます。


―「子をもうけよう」とご夫婦で話し合って、それがまた「性交渉がうまくいかないのでは?」という不安につながってしまうという切実なケースもありそうですね。

高波: ほかの日は大丈夫なのに、「きょうは排卵日」というプレッシャーで、その日に限って性行為ができないという方もいらっしゃいます。

EDは病気

町永アナ―EDというのは病気と考えていいのでしょうか。

高波: そうですね。心因性のものもありますし、血管や神経の障害によって陥ることがあります。立派な病気だと思います。

薬の有効性は70%以上

―病気ならば治療ということになりますが、数年前に薬が話題になりましたね。

高波さん高波: 5年前にEDの治療薬が出ました。それが出る前は、ビタミン剤や漢方薬などを試みていましたが、、なかなか有効なものはありませんでした。このED治療薬が出たことで、われわれも治療の選択肢が広がりましたし、有効性が70%と非常に高いので、治療がとても楽になりました。

ざっくばらんに話すことが大切

―この男性は、薬をのんでもうまくいかなかったようですが、それは?

高波さん高波: 緊張が高まると交感神経の作用で血管の拡張が抑制され、陰茎に入っている海綿体動脈の拡張が不十分になり、血液が流入してこない。これが恐らく勃起が起こりにくいメカニズムだと思います。リラックスするのが一番です。私たちも診察室でざっくばらんに、患者さんから十分にお話を聞けるよう努力しています。受診も本当はパートナーがご一緒のほうがいいのですが、なかなかそうはいきませんね。

 

EDと向き合う(60代男性の場合)

 都内に住むこの60歳代の男性は、結婚して30年。これまで性生活に問題を感じたことはありませんでした。しかし、3年前からEDの症状に悩むようになり、去年6月からクリニックに通い治療を続けています。

60代の男性今までできていたものができなくなってくるというのはやっぱりショックですし、焦りますよね。(60代男性)

結婚式場の料理長 結婚式場の料理長を務めるこの男性は、50歳の時、糖尿病と診断されました。しかし、当時は仕事に差し支えなかったため、病院に行こうとは考えませんでした。糖尿病はもともとEDを誘発しやすい病気ですが、妻との性交渉の上で特に問題はありませんでした。料理長になったばかりで気苦労の多かった男性にとって、夫婦生活の持つ意味は以前よりむしろ高いくらいでした。

60代男性やはり、奥さんと接するとホッと安心感があるんです。それに、仕事のストレス解消にもなりましたしね。疲れますけれど…。(60代男性)

結婚式場の料理長 55歳時。男性を大きなストレスが襲いました。不況で売り上げが低下、責任者として人員の整理や材料費の削減を余儀なくされたのです。上司との対立もあり、男性のストレスはさらに蓄積されます。そして58歳になったある日の夜、男性は自分の体に異変が起きていることに気づきました。EDでした。性的な興奮は得られるのですが、勃起の持続が得られません。同じことを繰り返すうち、次第に焦りが募っていきました。

60代男性その気はあっても立たないんです。男として情けないというか…。奥さんに「もうよしましょう」と言われると、後ろめたい気持というか、顔向けできないというか、申し訳ないみたいな。(60代男性)

受診 悩み続ける男性に、去年6月、転機が訪れました。職場の部下から糖尿病の治療を強く勧められた男性は、多忙な仕事の合間を縫い、職場近くのクリニックを受診しました。その時、医師に3年間抱いてきたEDの悩みを率直に打ち明けたのです。

60代男性恥ずかしいのもありますが、それよりも治すことを前提にして頑張らないと。はっきり話すことによって、先生も相手の症状が分かって、治療しやすいと思うんです。(60代男性)

ED治療薬を処方 話を聞いた医師は男性を糖尿病とストレスの両方が原因で起きたEDと診断しました。医師は薬物治療が有効と判断。心臓や血圧に異常がないことを確認した上で、EDの治療薬を処方しました。

 医師の勧めとはいえ、男性は当初薬に頼ることにためらいがありました。しかし、2か月後、思い切って妻を泊りがけの旅行に誘い、そこで初めて薬を服用しました。効果は顕著に表れました。

60代男性ずっと、「できないんじゃないか」という気持がありました。薬に頼ったにしても、よかった。奥さんも言葉には出さなくても、心なしか安心という感じじゃないですか。感激しました。うれしかったです。(60代男性)

薬を服用 効果を実感した男性は、その後も薬を服用しています。しかし、妻に知られることは恥ずかしく、まだ打ち明けられないでいます。

60代男性薬をのんだということは奥さんには内緒です。「こういう所に来ると気分が変わるので、元気よくなるんだな」という言い方をしました。向こうは黙って聞いていました。納得するんじゃないですか。(60代男性)


60代男性 思い切って治療を受けることで、失っていた自信を取り戻した男性。アルコールの量を減らしたり、ストレスをためないなど、生活にも気を配るようになりました。男性は夫婦2人で過ごす時間をこれからも大切にしていきたいと考えています。

町永アナと高波さん―年を取ると、「まあ、年だから」とあきらめる場合も多いのですが、もっと前向きに、いくつになってもセックスを楽しみたいと言う考えも可能になったということですね。

高波: ED治療薬が出ていなかった時代はあきらめるしかなかったのですが、最近はこうした治療薬のおかげで、性生活を楽しめることができるようになりました。性行為によって、夫婦のきずなも深まりますし、夫婦であるという確認、安心感を得ることができます。

薬を内服していることをパートナーに告げる

―この男性は人生にも自信がつき、夫婦生活は充実したということですが、薬を使っていることを奥様には言っていませんね。

高波さん高波: ED治療薬には、「薬を内服していることをパートナーに告げなさい」という注意書きがあります。万が一、性行為の最中に心臓の具合が悪くなって救急車で運ばれたりした時に、医師が使いたいと思う薬の中には、この薬を服用している人には禁忌の薬もあるからです。

恥ずかしがらずに受診する

町永アナそういう万が一のことも考えて、薬のことも含めた性生活というものを夫婦で語り合うことも重要な要件ということですね。一方、EDは恥ずかしいと、受診になかなか結びつかないというところあるようですが。

高波さん高波: EDというのは立派な病気ですから、恥ずかしがらずに堂々と専門医を受診していただきたいと思います。データではEDで悩んでいる人の5%くらいしか受診していません。いかに恥ずかしいと思われているかということです。われわれも、なるべく患者さんにざっくばらんにお話ししていただく雰囲気づくりを心がけています。


● 出演者

高波 真佐治さん(東邦大学佐倉病院 泌尿器科)
町永 俊雄アナウンサー



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