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障害のある人がつづった詩に、著名人やアーティストが絵をつける、詩と絵のハーモニー「NHKハート展」が全国各地で開かれています。
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「ゆうか」 |
僕をダイエーにある
のりものと思っている
ねている時は
またがってくる
くるまいすにすわってると
ひざの上にものってくる
おもたくてあしがしびれる
だけどゆうか
ああいうところがかわいい
僕もついついあがっていいよって
いっちゃうの |
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松永健太さんと
ゆうかちゃん |
この詩を書いたのは、松永健太さん(19歳)。脳性まひの障害があります。そして、「ゆうか」とは、健太さんの11歳年下の妹、ゆうかちゃん(8歳)です。
きょうは、この詩に絵をつけてくださったミュージシャンの石井竜也さんをゲストに迎え、互いに励ましあって育つ兄と妹の日々を見つめます。 |

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― 歌手としてだけでなく、映画の監督、空間プロデューサーなど、アーティストとして多彩な活躍をされている石井さんですが、ハート展は2回目の参加になりますね。
石井: はい。米米クラブの時代に1回、そして今回です。 |
― 「ゆうか」を最初にお読みになった時、何が一番印象に残りましたか?
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| 石井竜也さん |
石井: やはり出だしです。「自分をのりものと思っている」というその辺もすごくリアルで、それでいてファンタジーも入っていて、彼の置かれている状況が目に浮かぶようでした。たった2行で、「詩人だ」と思いました。だから、意外とすぐにインスピレーションはわきましたね。 |
― 詩を渡された時、題にもなっている「ゆうか」、2人の間柄は分かりましたか?
石井: 僕は最初から「きょうだい」だと思いました。自分も妹がいるからかもしれませんね。親子にしては2人の目線が同じようなところにあるし、恋人にしては言葉遣いが変だし、「これは、きょうだいだろうな」と。
― 絵を描くにあたって、心掛けたことは?
石井: きょうだいが「一体化」しているということです。「車いす」というと硬い感じがしますけれど、もっとプニャンとした感じの軟らかい感じの車いすとお兄ちゃんがまず一体化している。その上に、小さな妹がちょこんと乗っていると、かわいい絵になるなと思いました。それから、この絵は一本のひもでつながっているからくり人形をイメージしています。ひもを引くと全部の関節が動く……。一体化しているというイメージです。
― 石井さんの絵というと、もっと色彩豊かなものになると思いました。
石井: 本当はそうしたかったのですが、あまりにも透明感がある詩で、ギトギトした色は合わない。使えませんでした。 |

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| 「ゆうか」 |
北海道南部。函館市の隣にある自然豊かな上磯町に、松永健太さんとゆうかちゃんは暮らしています。
脳性まひで手足が不自由な健太さん。車いすの操作も少し苦手なようです。
ゆうか: お先にー。
健太: このやろう。バーってお兄ちゃんより先に行って、いつまでたっても。
ゆうか: 「いつまでたってもお兄ちゃんよりバーっと行く」って? 聞いてんだ、このダンボの耳でちゃーんとね。
健太: このやろう! |

仲良しの2人とお父さんお母さん。休みの日はいつも4人で食卓を囲みます。ゆうかちゃんは8歳。食べ盛りの小学校2年生です。健太さんは19歳。この春、函館の養護学校を卒業し、今は家族の介助を受けながら自宅で暮らしています。
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母親の松永登志子さん(47歳)は19年前、妊娠7か月足らずの早産で健太さんを出産しました。わずか1060gの未熟児で、心臓が何度も止まる危険な状態だった健太さん。一命は取り留めたものの、脳に重い障害が残りました。
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そんな健太さんも、登志子さんの懸命の子育てで大きく成長し、養護学校に入学。そのころ、2度目の妊娠に気づいた登志子さん。しかし、思いは複雑でした。
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健太のためにこの子を産むの? 産んだほうがいいのだろうけれども、この子は精神的に健太を背負うことになるのでは? もしこの子が女の子だったら、お嫁にいく時、「ああいうお兄ちゃんがいる」ということが障害にはならないだろうか。そんなことをいっぱい考えました。(母 登志子さん)
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登志子さんは無事に女の子を出産。「ゆうか」と名付けました。そして、妹の誕生が健太さんを大きく変えました。内気で人付き合いが少し苦手だった健太さんが、妹の世話から学校の勉強まで、何にでも積極的に取り組むようになったのです。 |
ちっちゃいころ、ゆうかは足で歩くのが、一歩か二歩か。三歩歩いたらもう「ひざに乗ってもいい?」ってゆうかが僕に聞くの。ついつい「あがっていいよ」って言っちゃうんだよね。(健太さん)
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「ゆうか」 |
僕をダイエーにある
のりものと思っている
ねている時は
またがってくる
くるまいすにすわってると
ひざの上にものってくる
おもたくてあしがしびれる
だけどゆうか
ああいうところがかわいい
僕もついついあがっていいよって
いっちゃうの |
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ゆうかちゃんが生まれて8年。最近、2人にはケンカが絶えません。ゆうかちゃんが、自分より苦手なことが多いお兄ちゃんを時々からかうようになったからです。
この日も、「(お兄ちゃんの手がゆうかちゃんに)届かない、届かない」とからかうゆうかちゃんに、つい健太さんの手が出てしまいました。
母親: 何でそういうことしたの? 「ごめんね」は? どうして謝れないの? |
健太も一生懸命頑張ってきたのですが、文字や数字、計算などは高等部を卒業するまで覚えることができなかったんです。妹は小学校に入ったらあっという間にそういうものが分かるようになりました。すると、お兄ちゃんに対して、「こんなことも分からないんだ」という態度が随時出るようになったんです。そのたびに母としては、「どうしたらいいんだろう?」と。出る言葉は、「お兄ちゃんなのに、何でそんなことをするの」となるんです。(母 登志子さん)
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健太さんが詩「ゆうか」を書いたのは、養護学校の高等部3年だった去年の秋のことです。ゆうかちゃんとの関係が難しくなり始めた時期でした。国語の友善学先生が、生徒たちに「私のすきなもの」をテーマに詩を書かせました。すると健太さんは、まだ幼かったころの妹の姿を一生懸命につづったのです。 |
― 詩、意外と大きいですね。
彼の動作ではこの大きさでないと書けないので、これが彼の標準サイズです。これを書き上げるにも、授業二コマ、90分くらいかかっています。最後の「だけどゆうか ああいうところがかわいい 僕もついついあがっていいよって いっちゃうの」。これが彼の心の中ですかね。(教師 友善学さん) |

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かけがえのない妹との思い出をつづった詩「ゆうか」。石井竜也さんが書いてくれた絵は健太さんにとって宝物です。
その石井さんが北海道にやってきました。ゆうかちゃんと一緒に会場に駆けつけた健太さん。2人ともノリノリです。そしてコンサートの後、楽屋に招待されていた2人から石井さんへ、オルゴールのプレゼントです。 |
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健太: お小遣いから買いました。開けてみてください。
石井: かわいい。ありがとう。ありがとう。ありがとう……。 |
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健太さんが書いた詩を通して、2人はその絆をまた確かめることができました。
健太: ゆうか。ちょっとつぶれてもいいから乗ってみ、ここに。
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ゆうか: やだ。ゆうか、乗るほど赤ちゃんじゃないです。
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健太: 赤ちゃんの(ころの)こと、思い出したいの。
ゆうか: お母さん、「つぶれてもいいから、おれのひざに乗れ」って言うけど、乗っていいの?
母: 健太くんに今のゆうかちゃんが乗ったら、健太くんは見えないかもしれない。前から見て。
健太: そういえばそうだね。 |

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― ご一家とお会いになって、印象はどうでしたか?
石井: 健太君を中心に、家族が本当に一つになっていました。そして、妹のゆうかちゃんがすごくしっかりしていました。言葉や精神的にも相当大人ですね。やはり、小さいながらにも、「お兄ちゃんをサポートしよう」というけなげさが、彼女をあれだけ大人にしているのでしょう。
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― そして、ゆうかちゃんはお兄ちゃんをだんだん抜いていっている。
石井: そういう経験って僕らはしたことがありませんよね。でも、現実に健太君の前では起こっているわけです。健太君のそのつらさ、想像がつきませんね。 |

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| お兄ちゃんはお兄ちゃん |
養護学校を卒業した健太さんは週に2回、町の老人福祉敷設のデイサービスに参加しています。重度の障害者が家以外に過ごせる場所はごくわずかしかありません。このサービスも特例で認めてもらいました。しかし、学校時代のように体を動かし新しいことにチャレンジする機会は十分ではありません。母親の登志子さんは最近、健太さんの筋力が少しずつ落ちているのが気になっています。
去年健太さんは高校野球地区大会の始球式でマウンドに立ちました。しかし、最近ではそのボールを握ることすら難しくなりました。
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健太: このボール、投げた。
母:でも今は、つかめないんだよね。ちょっとショック。
ゆうか: 頑張って練習しようね。 |

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健太さんも自分の体の衰えに不安を感じています。
健太: このままいくと、だめのだめのだめ人間に……。まあ、今もそうだけど。
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ゆうか: 何で? お兄ちゃんだって学校でいろんなこと作ってきたじゃん。学校でも何も作れないならだめ人間かもしれないけど、絶対作れるって。
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健太: 学校時代はそうだったけど……。
ゆうか: 今でも頑張れば作れるよ。やる気になれば。 |

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毎月第3日曜日。松永さん一家はフリーマーケットで店を出しています。重度の障害者が働ける作業所を開きたい。その夢をかなえるための資金集めです。目標まであと500万円。健太さんが21歳になる2年後のオープンを目指しています。
母: お兄ちゃんたちの作業所を作りたくてやっています。また応援してください。 |
お父さんお母さん、そしてゆうかちゃん。家族の励ましを受けて健太さんは歩み続けます。
健太: 彼氏できて、結婚したらどう思う? ぼくのこと。
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ゆうか: ゆうかが結婚すると、お兄ちゃん、おじちゃんになっているんだ。それでも、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。それには間違いない。ゆうかが結婚したら、お兄ちゃんとまだいて、お兄ちゃんが結婚したら、離れ離れになって、もしお兄ちゃんが結婚しなかったら、死ぬまで一緒にいる。
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石井: このVTRを最初に見せられて「絵を描いてください」と言われたら、5年かかってもできなかったかもしれないですね。この絵は本当にインスピレーションだけで描きました。でも、それでよかったと思います。そうでなかったら、この2人に失礼で絵なんて出せないですよ。「お兄ちゃんと一生、一緒にいる」って、そんなことを言ってくれる妹がいるんだな。「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ」という言葉がすべてを包み込んでいますね。健太君にしても、すべてを受け入れて一生懸命生きています。人間、すべてを受け入れるということはすごく難しいことです。ですから、その受け入れている精神というのは、僕らには想像できない広さ、大きさがあると思います。すばらしい家族ですね。
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― あらためて詩を見てみると?
石井: 「ひざの上にものってくる おもたくてあしがしびれる だけどゆうか ああいうところがかわいい」。この「おもたくてあしがしびれる」という言葉にグッと来ます。すべて受け入れている彼の気持がここにも出ているような気がするんですよね。VTRでゆうかちゃんが、「お兄ちゃんと一緒にいるよ」と言った時はたまらなかったですね。描いてよかったです。ありがとうございました。
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