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シドニーパラリンピックで15個のメダルを獲得した日本。パラリンピックにおいて、「水泳ニッポン」は健在です。その層の厚い日本代表の中に現れた若き新星。パラリンピック初挑戦、水泳に賭ける17歳の夏を追います。
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| きょうのアスリート 競泳 鈴木孝幸選手 |
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| 鈴木孝幸選手 |
先天性の四肢欠損。
生まれながらに両手と両足に障害があります。パラリンピック初挑戦。
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| この体で生まれてきたので |
中山さん: 17歳。この番組に来てくださった選手の中でも一番若いですね。
鈴木君: 今回の大会は行けないだろうから、4年後を目指して頑張ろうと思っていました。今回出場できることになって、すごくよかったです。
町永アナ: 先天性の四肢欠損というと、とてもたいへんな障害だと思うのですが。
鈴木君: 日常生活であまり気にしたことはないです。この体で生まれてきたので、「これで何でもやるしかない」というか、そんな感じ。 |

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| 水を得た魚 |
鈴木孝幸君は今、浜松市の私立高校に通う高校3年生。来年は大学受験が控えています。クラスで人気者の鈴木君。4月にパラリンピック出場が決まってから、友達には「パラオ」というニックネームをつけられたそうです。
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学校が終わると2時間の練習が始まります。プールサイドでは車いすを使わない鈴木君。バランスよく左手と左足を使い、水の中へと移動します。陸上ではハンディの多い鈴木君ですが、プールの中では正に水を得た魚。持ち前の運動神経で、すべての泳ぎをマスターしています。
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最も得意としているのはクロール。ゆったりとした美しいフォームで泳ぎ、体が左右均等ではなくても、進路がぶれることはありません。50mを41秒で泳ぐ鈴木君に、国内にはもう敵はいません。通常なら足の力がなければ進まない平泳ぎも、腕の力だけでぐんぐん進んでいく鈴木君。背泳ぎもバランスを崩すことはありません。アテネでは、この3種目で構成される、150m個人メドレーにも出場する予定です。
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そして、鈴木君のような体の選手には最も難しいとされ、パラリンピックのメドレーからは除外されているバタフライ。鈴木君は強じんな背筋力で体の軸を固定し、まっすぐ進んでいきます。4つの泳法を見事にこなす鈴木君ですが、つい1年前までは、国内でもまだ無名の選手だったのです。
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鈴木君が脚光を浴びたのは、昨年12月、香港で開催されたフェスピックユース大会(20歳未満のアジアの障害者が集う国際大会)、100m自由形で優勝をした時からです。本格的に競泳を始めて1年。鈴木君にとって初の国際大会となったこの大会で、障害の軽い先頭の選手に引っ張られる形でぐいぐいとピッチを上げ、自己ベストを一気に3秒も短縮し優勝したのでした。その実績が日本障害者水泳連盟の目に留まり、鈴木君は突然、アテネの切符を手にしました。
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鈴木君は2歳の時に祖母の小松洋さんに引き取られ、今は浜松市内の自宅で洋さんと2人で暮らしています。水泳の世界へと鈴木君を導いたのも洋さんです。
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1987年に生まれた鈴木君。生まれたときから重い障害がありましたが、性格は明るく、やんちゃで負けず嫌いでした。ハンディに負けない子どもになってほしいと願っていた洋さんは、鈴木君を健常児と同じ環境で育てました。遊びも勉強も特別扱いせず、本人に自信を持たせるというのが、洋さんの方針でした。 |
保育園のプールで、鈴木君が楽しそうに遊んでいる様子が強く印象に残っていた洋さんは、小学校に入学を機に水泳教室に通わせることを決意しました。
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サッカーとかドッチボールなどを健常者の中に入ってやっていると、ハンディが如実に出ますよね。だけど、水泳だったら自分の記録だけですから、という思いがあったんだと思います。(祖母 洋さん)
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早速、障害のある子どもたちを指導してくれる水泳教室に鈴木君を連れていった洋さん。ここでのコーチ・伊藤裕子さんとの出会いが、鈴木君の運命を変えました。それまで知的に障害のある子どもたちになら指導した経験があった伊藤さん。初めて鈴木君の姿を見た時はさすがに戸惑ったそうです。 |
孝ちゃんのようなハンディを持った子どもを見たことがなかったので、「みんなの前に水着で出していいの?」という変な心配をしてしまうほど、驚いてしまいました。(コーチ 伊藤さん)
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両手両足に障害のある子どもが、どうすれば泳げるようになるのか? ゼロからの試行錯誤が始まりました。水中での鬼ごっこやプロレス遊び、トンネルくぐり。遊びの中で伊藤さんは、鈴木君の上腕の力の強さに気づきました。「これなら、バタ足がなくても前に進めるかもしれない」 そう思った伊藤さんは、クロールから教えてみることにしました。
クロールという泳ぎを崩して、泳法を、この子に合わせるという感じです。(コーチ 伊藤さん)
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練習開始から2年たった小学校2年生の時の鈴木君。クロールには程遠い、文字通りの「自由形」ではありましたが、鈴木君は全身の力を使い、巧みに息継ぎをしながら、背の立たないプールですでに25mを泳げるようになっていました。
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それから10年、鈴木君と伊藤さんは試行錯誤を繰り返し、独自のフォームを開発していきました。特に、クロールのフォームは今、完成に近づきつつあります。左右の手の長さの違う鈴木君は、普通に泳ぐと手の短いほうに進路が曲がってしまいます。手のかき方、足の動きなどに工夫を重ね、クロールだけではなく、平泳ぎやバタフライなど、次々と自分のものにしていきました。 |
スタートから12年。伊藤さんとの二人三脚は今、パラリンピック出場という形で結実しようとしています。
日本国内のパラリンピックへ出してあげたいというのが大きな目標だったんです。ここまできてくれるとは本当に思っていませんでした。(コーチ 伊藤さん)
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| いい結果が出るとうれしくて |
中山さん: すごいですね。いろいろな複雑な動きを一瞬の中でやっているのですね。
鈴木君: 伊藤先生に泳ぎ方を教えてもらって、その泳ぎと、「まっすぐに行こう」という動きが無意識のうちに重なって、そういう泳ぎ方になっているのだと思います。中学校までは車いすをあまり使わずに、階段の上り下りなどもしていたので、もともと体は強かったです。
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町永アナ: 本格的に競泳を始めて2年ということですが、それまでは何をされていたのですか?
鈴木君: 小さいころは水泳をやっていて、小学校の5〜6年くらいから、吹奏楽部でホルンをやっていました。障害者でプロのホルニストがいるというのを新聞で見かけて、「僕もできるかな」と思ったのがきっかけでした。
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町永アナ: そしてまた水泳に戻ってきて、わずか1年でレコードを出した。水泳の何がおもしろかったですか。
鈴木君: 大会に出させてもらって、いい結果が出るとうれしくて、「また次の大会はもっといい記録を出そう」という気持で臨んでいたら、だんだんよくなってきました。
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町永アナ: 今、伸び盛りで、どんどん記録更新をしている鈴木君ですが、世界を相手にするには、課題も見えてきました。
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| ベストを求めて |
アテネでは150m個人メドレーに出場する鈴木君。しかし今、メドレー3種目の泳ぎの中で背泳ぎのタイムが伸び悩んでいます。世界のトップより20秒近く遅れている背泳ぎ。背泳ぎのタイムが短縮できれば、入賞も夢ではありません。
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課題となっているのは、短いほうの右手の動きです。水面付近から体に向かって右手をひく瞬間大量の泡が発生してしまいます。この泡が抵抗となり、タイムを落とす原因になると同時に、鈴木君のスタミナを奪います。あと2か月で背泳ぎのフォームにどう磨きをかけ、タイムの短縮につなげていくかが、伊藤さんと鈴木君にとっての課題です。
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もう一つの課題は水をかくスピードです。鈴木君に4年前のシドニーパラリンピック決勝のビデオを見せた伊藤さん。優勝したスペインのハビアー・トーレス選手は、鈴木君と障害がよく似ており、このクラスの世界記録を持つスーパースターです。
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トーレス選手は、5秒で7回転。まるでモーターが回転しているようなすさまじいスピードで手をこぎます。一方の鈴木君は5秒で4回転。トーレス選手のピッチは、鈴木君の2倍近い速さなのです。背泳ぎになるとその差はさらに大きくなります。5秒で6回転のトーレス選手に対して、鈴木君は5秒で3回転。このピッチの差がタイム差となって表れます。この大会でのトーレス選手のタイムと鈴木君のベストタイムとは30秒もの開きがあるのです。 |
改めて実感した世界の壁。フォームとスピードにどう磨きをかけるのか、新たな練習が始まりました。重点は弱点の背泳ぎです。右手から泡が出ないようにフォームに気をつけながら、少しずつピッチを上げていきます。ところが、鈴木君はピッチを上げるとフォームが崩れてしまいます。ピッチを上げようとすればするほど、バランスを崩して悪循環に陥ってしまう鈴木君。自分の限界を探る練習が続けられました。
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ピッチをあまり上げすぎると、タイムは落ちてしまうので、彼にベストのスピード、ピッチをつかんでいくのが課題かなと思います。(コーチ 伊藤さん)
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決勝に残るためには、最低5秒のタイム短縮が必要な鈴木君。残り2か月、ラストスパートをかけます。
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リレーではメダルを、
個人メドレーでは決勝進出を |
中山さん:すべてが順調のように思えたのですが、背泳ぎで難航していましたね。
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鈴木君: 難しいです。ピッチを上げることを意識してしまうと、バランスが崩れてしまうので、どんどん練習して、うまく調整をしなければいけません。夏休みになってからが、練習もピークでたいへんになると思います。
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町永アナ: 本番まであと2か月。改めて抱負を伺いましょう。
鈴木君: リレーではメダルを、個人メドレーでは決勝進出を目標に頑張っていきたいと思います。
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