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指先の宇宙
ぼくが光と音を失ったとき、
そこにはことばがなかった。
そして世界がなかった。
ぼくは闇と静寂の中でただ一人、
ことばをなくして座っていた。
ぼくの指にきみの指が触れたとき、
そこにことばが生まれた。
ことばは光を放ち、
メロディーを呼び戻した。
(福島さんによる詩の朗読)
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視覚と聴覚、両方に障害のある方を「盲ろう者」と言います。今、全国におよそ13,000人いると言われている、盲ろう者の皆さんのサポートのあり方を、今日は考えていきます。 |
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手のふれあいが盲ろう者を支える
ゲストの福島さんは、9歳で失明をし、18歳で聴力を失った、盲ろう者です。お隣には声を伝えてくださる、指点字通訳者の増山由紀子さんがいらっしゃいます。
先ほどの詩のタイトルは「指先の宇宙」と言います。見えなくて聞こえない盲ろう者の世界というのは、まるで宇宙空間のような光のない静寂の世界です。指先でのコミュニケーションは、そんな私たちにとって光であり、メロディーである。そういう気持ちを表しました。(福島さん)
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視聴覚二重障害者福祉センター「すまいる」
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大阪市天王寺区。盲ろう者自身が運営するNPO「すまいる」があります。毎日、およそ10人の盲ろう者が集まり、スタッフやボランティアと共に一日を過ごします。点字の学習、編み物、工芸、料理……何をしたいのか一人一人の希望を聞いて、スタッフがサポートをします。聴覚と視覚に障害があっても、手と手を触れ合うことでコミュニケーションは可能です。
「すまいる」ができて4年。ここに来れば、仲間がいておしゃべりができる。盲ろう者にとって大切な交流の場所です。
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「すまいる」 |
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「すまいる」に通っている盲ろう者の中には、独り暮らしをしている人もいます。綾城重雄さんは、両親と2人の兄弟を亡くし、6年前から1人で生活をしています。
綾城さんは生まれた直後、高熱を出して耳が聞こえなくなりました。さらに10年前からは目の病気で視力も落ちてきました。家の中ではほとんど手探りの生活です。ご飯は炊けますが、おかずは作れません。週に2回やってくるホームヘルパーにおかずを作りおきしてもらい、毎日の食事をとっています。
話し相手もいない家の中。テレビを見ることも新聞を読むことも、1人で友人の家を訪ねることもできません。「家にずっといるとストレスがたまる」という綾城さん。触手話ができる通訳者と外出することが生きる支えとなっています。
同行する人がいれば外出できます。スーパーや図書館、理髪店や病院、「すまいる」に行って活動することもできます。(綾城さん)
綾城さんは毎日、通訳者の介助を受けながら「すまいる」に通っています。盲ろう者の仲間やボランティアの友達に囲まれて、笑顔を取り戻します。
盲ろう者同士で話ができてうれしいです。ボランティアとも会話を楽しんでいます。本当に素晴らしいことです。(綾城さん)
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「すまいる」の皆さんは、すごく楽しそうでしたね。福島さんの本を以前読ませていただいたときに「盲ろうの状態というのは、テレビのコンセントが抜けて、その中のブラウン管にいるような状態」とあったのですが、「すまいる」はコンセントの電源口のようで、コンセントに入って、楽しい世界が広がる、そんな大切な場所なんだろうなと思いました。(堀内さん)
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盲ろう者とのコミュニケーション方法
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・触手話
相手の手話を手で触りながら読み取ります。もともと手話を使っていた人が、目も悪くなって盲ろう者となったときに、手話を手で触って読み取るという発想の転換。盲ろう者の仲間の輪が広がるとともに、使う人も増えてきています。
・指点字
点字テープライターを打つ要領で直接指に打ちます。
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指をとんとん打っているので、モールス信号のイメージがあったのですけれども、タイプライターのキーを打っているようにしているのですね。(堀内さん)
私は指点字の元祖なので速く読み取ることができますが、普通はもう少しゆっくりです。盲ろう者と話すときはゆっくりと話してください。(福島さん)
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外出の際の介助の注意点
すまいる理事長の門川紳一郎さんに教えていただきました。
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1.通訳介助者は、一歩か半歩前を歩きます。肘の近くを軽く持ってもらうのが基本です。身長差があるときには、肩に手を置いてもかまいません。
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| 2.「自転車が来ている」など、周りの危険を察知したら、立ち止まってすぐに知らせます。通り過ぎるのを確認してから歩きだします。 |
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| 3.「赤信号」など、周囲の状況を、触手話などで知らせるよう心がけます。 |
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| 4.切符購入時など、やむを得ず離れなければならない場合は、必ず離れる理由を伝え、壁や柱のそばで待ってもらいます。 |
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盲ろうの人によって、こうしてほしいという要望は異なってくると思うので、その人が最も安全で安心して歩ける方法を、あらかじめ打ち合わせしておくといいと思います。(門川さん)
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外出を支えるサービス
・通訳・介助員派遣事業
2003年3月現在、17の都府県・市にあります。申請をして派遣してもらうもので、利用料は無料ですが、利用できる時間に制限があります。
問合せ先:全国盲ろう者協会
(Tel 03-3512-5056 Fax 03-3512-5057)
このようなサービスはだんだん増えてきてはいますが、例えば平日の昼間だとか、あるいは夜間だとか、そういうときにサポートできる人がいないこともあるので、もっと養成が必要だと思います。(福島さん)
まだ17都府県・市でか実施されていないということですが、ほかの地域でも必ず保証されていけるようにしていってほしいです。私たちも身体障害者で、介護派遣の制度というのがあります。生活していくうえでのサポートを介助者にしてもらうことによって、たくさんのことを体験して仕事もできているわけですから、そういう制度の充実というものが、自分らしく生きていくうえで大切になってくるのではないかと、常に思っています。(掘内さん)
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盲ろう者だってできるんだ
「すまいる」では積極的に外出しています。場所はみんなで話し合って決めます。ボランティアは発言者の手話を見て、触手話で盲ろう者へ伝えます。
この日出掛けたのはボーリング場。投げる前には手探りでレーンの広さと投げる方向を念入りに確認します。投げた結果は触手話で伝えてもらいます。
パソコンの操作を覚えることにも力を入れています。盲ろう者の世界を大きく広げる可能性があるからです。画面の文字は、パソコン本体にピンディスプレイをつなげて点字に表示すれば、指で読むこともできます。目標はメールのやり取りです。
和太鼓にも挑戦しています。直接太鼓の音を聴くことはできませんが、スタッフに肩をたたいてもらってリズムをつかみます。仲間の太鼓の響きを体で感じながら、みんなで1つの音を創りあげていくのです。
盲ろう者でもいろいろなができるんだということを、みんなにも感じてほしいから、僕たち「すまいる」はいろいろなことにチャレンジしています。1つのことが成功するとうれしいです。スキーもチャレンジしてみたいし、スノーボードもやってみたい。ダイビングも……。年齢は関係ないですよね。「やりたい」「やろう」という気持ちさえあったらできます。(門川さん)
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障害を持っている人が活動的にしていると心配する人がたくさんいますけれども、聞こえなくても「音楽がしたい」と思ったらできます。私は聴覚障害の友人とカラオケによく行くのですが、楽しい空気というのは、いくらでも感じることができます。ボーリングも目が見えないからピンが倒れているのがわからないというのではなく、振動、空気を感じて、枠にとらわれずいろいろなことをやってみる自由があるといいなと思います。(堀内さん)
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ふくらむ夢
人間の可能性は無限だと思います。だからどんな状況になってもへこたれずにいろいろやってほしいな。門川さんはスキーやダイビングとおっしゃっていましたが、私は宇宙に行きたいと思っています。これが私の夢です。
今、地域での活動が広がっていますが、今の日本の福祉というのは、例えば病院に行く、役所へ行くということには支援をするけれども、仕事をする、職業を持つ、というときの障害者の支援が難しいです。ぜひ、盲ろう者も仕事ができるように、そんな支援制度を作ってほしいと思います。(福島さん)
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