「メンタルヘルス」 基礎情報と相談窓口

もくじ

メンタルヘルスとは

メンタルヘルスとは、体の健康ではなく、こころの健康状態のことをいいます。体と同様にこころの健康状態が良くなければ、さまざまなこころの病(精神疾患)になります。

精神疾患は誰もがなる可能性があります。厚生労働省の統計によると、精神疾患により医療機関を受診している(外来・入院含む)患者の数は年々増える傾向にあり、平成29年(2017年)の調査時には約419.3万人でした。患者数の増加を受け、厚生労働省は精神疾患を、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病とともに「5大疾病」として指定し、地域医療における重点的な対策を促しています。

メンタルヘルスに関連する疾患

こころの病(精神疾患)の種類にはいろいろなものがあります。厚生労働省の平成29年(2017年)の調査で多いものから順に
・気分障害(躁うつ病を含む)
・神経症性障害
・統合失調症
・認知症
などです。

また、同じ種類の疾患でも、症状は人によってさまざまな違いがあります

困りごとや悩み

・症状を理解してもらうことの難しさ

精神疾患による症状は多様です。そのため、周囲の人にこころの病であることをどうしても理解してもらえないことがあります。
 
たとえば、社交(社会)不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)では、人と関わるさまざまな状況で強い不安を感じ、視線に対する恐怖から、目を合わせることができなかったり、人とすれ違うのに距離が必要だったりすることもあります。また、ごはんを食べているところを人にみられることに関して恐怖を感じるため、会食に出かけることができないという症状の人もいます。

境界性パーソナリティ障害では、目まぐるしく気分が変動したり、対人関係が両極端で不安定になったりという症状が出ることがあります。



・精神疾患の親を持つ子ども

精神疾患の親を持つ子どもの場合、子どものときだけにとどまらず、大人になってからも“生きづらさ”を感じている人が多くいます。

たとえば、子ども時代には、子どもであるがゆえに、親がこころの病だと認識することが難しく、周りの人を頼ることもできずに孤立するというケースがあります。また、うつ病の親の顔色をうかがいながら生きてきたため「自分の気持ち」「自分の意見」を人へ伝えることが苦手になってしまったという人もいます。

歴史

・長期の入院、“社会的入院”

治療薬の開発などにより、精神科病院への入院期間は短縮傾向にありますが、それでも1年以上の長期入院患者は16万人を超えています。(2021年精神保健福祉資料) 

実際は1年よりも長く、30年や40年以上にわたって“社会的入院”をしている患者も珍しくありません。その背景となった国の政策は国際的な批判を受け、退院を促す方針に転換したものの状況はなかなか進展していません。


・私宅監置

精神障害者を自宅の一室や敷地内の小屋などに閉じ込め、監禁する「私宅監置」。1900年に施行された精神病者監護法によって、届け出をするなど一定の要件の下に合法的に認められ、多くの精神障害者が長年治療も受けず、不衛生で非人道的な環境に置かれていました。それから50年後の1950年。精神衛生法が施行され、「私宅監置」はようやく禁止されることになりました。しかし、近年も兵庫や大阪で精神障害者を家族が自宅で監禁する事件が発覚するなど、いまだ過去のものとはなっていないのが現状です。


相談窓口・支援団体※NHKサイトを離れます

長期入院からの退院 電話相談
精神医療人権センター

各地の精神医療人権センターでは、入院中の方やそのご家族からの相談などを受け付けています。電話相談を行っている曜日や時間帯、手紙やメールの受付については各センターによって異なりますので、それぞれのリンクからご確認ください。

受診に関する相談

精神疾患について専門的に診てもらえるのは、総合病院の精神科、精神科病院、精神科クリニック(メンタルクリニック)などです。「どこに行けばいいか分からない」「いきなり病院に行くのは抵抗がある」といった場合、お住まいの地域の精神保健福祉センターや保健所などで受診の相談をすることも可能です。さまざまなこころの問題で困っている本人や家族の相談を受け付けており、適切な医療機関を紹介してもらうことができます。


※その他、以下のような場所でも相談することができます。
・(中学生・高校生の場合) 保健室の先生、スクールカウンセラー
・(大学生・専門学校生の場合) 学内の保健管理センターや学生相談室など
・(会社員の場合) 健康管理室の産業医やカウンセラーなど

医療費に関する支援制度

精神疾患の治療は長期間にわたるため、医療費の負担が大きくなりがちです。通院医療費の補助を受けたり、入院医療費の負担を抑えたりすることができる制度があります。

自立支援医療(精神通院医療)

医療機関および薬局の窓口で支払う医療費(通常は3割負担)が1割負担となります。デイケアを利用する場合も適用されます。通院している医療機関で診断書をもらい、お住まいの市区町村の担当窓口に申請します。

高額療養費

1か月にかかった医療費が一定金額以上になった場合に、超えた分が戻ってくる制度です。上限額は所得に応じて異なります。
【申請窓口】
・国民健康保険(学生、自営業、無職など)の場合: 市区町村の担当窓口
・健康保険(会社員)の場合: 加入している保険組合の窓口
・共済保険(公務員)の場合: 加入している共済組合の窓口

※自治体によっては、独自の助成制度や貸付制度などを設けている場合もあります。お住まいの市区町村の担当窓口や、病院のソーシャルワーカー(精神保健福祉士)に相談してみましょう。

生活を支援する制度・サービス

精神疾患の治療は長期間にわたるため、治療を継続しながら病気と「ともに」生活していくことになります。その際、さまざまな制度・サービスは大きな支えになります。積極的に活用しながら精神疾患とうまく付き合っていくことが大切です。

精神保健福祉手帳(障害者手帳)

精神疾患により、継続的に日常生活・社会生活への制約がある人が対象です。障害者枠での雇用、税金の減額・免除、交通機関運賃や公共施設利用料の割引、公営住宅への優先入居などのメリットがあります。病院に初めてかかった日から6か月以上経った日から申請可能です。お住まいの市区町村の担当窓口(障害福祉課など)で申請します。(担当医師の診断書が必要です)

障害年金

国民年金、厚生年金、共済年金に加入している人(被保険者)が、精神疾患によって日常生活や就労に制限を受けており、初診から1年6か月後の時点で、その程度がある一定の状況に達していると認められた場合に受給できます。1年6か月後の時点では該当しない場合でも、その後障害の程度が重くなったときには申請できます。
【申請窓口】
・国民年金(学生、自営業、無職など)の場合: 市区町村の担当窓口
・厚生年金(会社員)の場合: 社会保険事務所
・共済年金(公務員)の場合: 加入している共済組合の窓口

ホームヘルプサービス(居宅介護)

精神疾患によって家事などの日常生活に不便がある人に、ヘルパーが訪問して支援を行うサービスです。食事作りや片付け、掃除、洗濯、買い物、服薬管理などを手伝ってくれます。利用にあたっては、障害福祉サービスの利用申請を行い、訪問調査を経て認定を受けることが必要です。お住まいの市区町村の担当窓口(障害福祉課など)か、委託を受けた指定相談支援事業所で申請します。

※他にも、住まいに関すること、金銭管理に関することなど、さまざまな福祉制度・サービスがあります。自治体によっては独自のサービスを行っているところもあります。お住まいの市区町村の担当窓口や、病院のソーシャルワーカー(精神保健福祉士)に相談してみましょう。

働くことに関する相談窓口・支援機関
ハローワーク

障害者の職業相談部門を設置し、専門職員や職業相談員が、職業相談や紹介、就業指導などを行っています。

地域障害者職業センター

専門の障害者職業カウンセラーを配置して、職業相談・評価、専門的な職業リハビリテーションプログラム、就労準備支援、職場適応支援などを行っています。また、事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助なども実施しています。

障害者就業・生活支援センター

障害者の就業と、これに伴う日常生活・社会生活上の相談・支援を一体的に行っています。

※全国の障害者就業・生活支援センターの一覧は、以下のホームページに掲載されています。

※「障害者就業・生活支援センター」一覧をご覧ください。

就労移行支援事業

一般企業等での就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練や支援を行います。利用の手続きやお近くの事業所については、お住まいの市区町村の担当窓口にお問い合わせください。

就労継続支援事業

一般企業等での就労が困難な人に、働く場を提供するとともに、知識及び能力の向上のために必要な訓練や支援を行います。利用の手続きやお近くの事業所については、お住まいの市区町村の担当窓口にお問い合わせください。

地域活動支援センター

創作的活動や生産活動の機会の提供、社会との交流等を行います。利用の手続きやお近くのセンターについては、お住まいの市区町村の担当窓口にお問い合わせください。

民間の情報サイト・当事者団体やネットワークなど
◯精神疾患全般
NPO法人 地域精神保健福祉機構COMHBO(コンボ)

機関誌の発行、セミナー/フォーラムの開催、ピアサポートグループの支援などを通して、精神障害のある人たちが主体的に生きていくことができる社会の実現を目指しています。治療の上手な受け方、知っておくべき病気や薬の知識、症状とともに生きる上での工夫など、当事者の視点を中心に据えた豊富な情報提供を行っています。詳しくはホームページをご覧ください。

公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会「みんなねっと」

精神に障がいのある人の家族が結成した団体です。機関誌を通した家族同士の交流、フォーラム/シンポジウムの開催、相談支援活動などを行っています。

精神障がいの親と暮らす「親&子どものサポートを考える会」

精神科での臨床経験を持つ看護師や、精神科医師、保健師、臨床心理士、精神保健福祉士などで運営しています。精神障がいの親と暮らした経験を持つ"子ども"の立場の人を対象に、交流会の開催や掲示板での交流等を行っています。詳しくはホームページをご覧ください。

こころの情報サイト

こころの健康や病気に関する総合サイトです。こころの病気についての知識や病気になったときの治療法、身近にある様々な相談先、生活への支援やサポートなどを掲載しています。

こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~

厚生労働省が作成している、若者向けのこころのケアに関するサイトです。こころとの上手な付き合い方、病気のサイン、困ったときの相談先などを調べることができます。

◯統合失調症
JPOP-VOICE

統合失調症の当事者、家族、医療者・支援者の体験談を動画で見ることができます。

◯うつ
一般社団法人日本うつ病センター(JDC)

うつ病や関連する病気について、最新の情報を提供しながら、その予防法、早期発見法、診断の仕方、治療の仕方などについて紹介し、軽症の心理的障害に悩む方々や、医師、医療関係者へ、適切なアドバイス・支援の方法を伝えることを活動の目的にしています。

MDA-Japan(うつ・気分障害協会)

精神保健の専門家による当事者・家族のための支援グループ。うつ病に関する正しい知識と情報を提供し、メンバー同士の交流の中で回復を目指しています。心理教育、職場復帰支援プログラムなども行っています。

◯双極性障害(躁うつ病)
双極性障害委員会|日本うつ病学会

患者さんとそのご家族に双極性障害を正しく理解してもらうための解説書「双極性障害(躁うつ病)とつきあうために」を作成しています。サイトからダウンロードできます。

躁うつ病(双極性障害)のホームページ

理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チーム・チームリーダーの加藤忠史先生による、双極性障害の研究・啓発サイトです。患者さんやご家族による手記も掲載されています。

NPO法人ノーチラス会

双極性障害の当事者を中心に、家族や医療関係者なども参加している団体です。当事者・家族・支援者による"集い"の開催、会誌の発行、専門相談員による電話相談などを行っています。

◯強迫性障害
OCDの会

強迫性障害に悩む患者と家族のサポートグループです。月例会の開催や、研修会、ワークショップなどを行っています。

強迫症など精神疾患・健康の情報、心理カウンセリング OCDサポート

強迫性障害についての相談や、症状をかかえる人や家族が他の患者さんや家族と交流し、情報交換をしています。

強迫友の会OBRI(オブリ)

強迫症状のある当事者とその家族、支援者が集い、お互いの体験を分かち合い情報交換をしている自助グループです。

◯てんかん
公益社団法人 日本てんかん協会(波の会)

てんかんに対する正しい理解を求めるための活動をしています。診断や治療について、発作の際の対応についてのほか、利用できる福祉制度や自動車運転についての情報も掲載しています。

<<電話相談>>
「てんかん相談専用ダイヤル」お一人30分以内を目安としてください
03-3232-3811 月・水・金 正午~午後5時 ※平日のみ
全国から相談があるため、つながりづらいことがあります。その際は、少し時間をおいてお掛け直しください。

(民間の支援団体等については、番組の取材先を中心に掲載しています)

「メンタルヘルス」に関する
コンテンツ