ハートネットメニューへ移動 メインコンテンツへ移動

【VR当事者会】ASDの私たちが、お金の困りごとを専門家に相談(前編)

記事公開日:2022年03月03日

発達障害のひとつ・自閉スペクトラム症(ASD)のある私たちは、VR(バーチャル・リアリティ)空間に集まり、当事者会を開いています。第4回となる今回は、多くの当事者が抱える「お金の悩み」について。お金を貯めることが難しい、先延ばし癖がありお金の手続きが苦手、特に確定申告が難しい……。ふだん誰に相談すればよいか分からなかった悩みについて、お金のプロをVR空間にお招きして聞いてみました。

専門家を招き、お金の困りごとを相談

私は、ハンドルネームで“こー”と申します。発達障害の当事者で、自閉スペクトラム症(ASD)のこだわりの強さや感覚過敏、過集中といった特性があります。司会と、記事の執筆を担当しています。

一緒に司会をしてくれたのは、みらいさんです。

みらいさん:本日はお忙しいなかお集まりいただきまして、ありがとうございます。僕は『みらいのリスト』というアカウント名で、ツイッターで一年中つぶやいています。

今までは図書館をイメージしたVR空間で行っていましたが、今回は趣向を変えまして、深海を舞台に開催いたします。本日のテーマは「お金の困りごと」です。

neneさん:ここで泳ぎたいですーーー
みらいさん:泳げたら気持ちいですね^^
りんなさん:お金。。。困ってるけど相談できる人も頼れる人もいないや

画像

neneさんが「ここで泳ぎたい」と言うVR空間には、魚たちが泳いでいます

今回はゲストに、ファイナンシャル・プランナーの岩切健一郎さんをお招きしました。岩切さんご自身も発達障害(ADHD)の当事者であり、発達障害のある人たちを専門にお金の相談を受けています。

岩切さん:みなさん、こんにちは。私も発達障害の当事者で、お金のことでかなり困った経験もあります。入って来るお金と出ていくお金の管理が上手に出来ずに、カードローン、リボ払いを含めて300万円以上の借金があったんです。いまは全部きれいになっていて大丈夫ですが。

保険や社会保障の知識で、今日はみなさんのお役に立てればと思っております。よろしくお願いします。

画像(ゲスト・岩切健一郎さんの紹介)

ご自身も困った経験のある当事者だからこそ、私たちも心理的安全性を持って相談できます。

今回は、司会とゲストの3人が声を出してお話しし、参加者のみなさんはチャットでコミュニケーションを取りました。

貯めたお金は、当事者会の仲間と会う旅のために?

画像(質問「お金を貯めることが難しいです。どうしたらよいですか?」)

最初は、お金を貯めることについてのお悩みです。

当事者のなかには、こだわりの強い特性によって好きなものにお金を使いすぎてしまう人や、見通しを立てるのが苦手でお金を貯めづらい人がいるようです。また、仕事に就くことの困難さから、お金が貯まりづらい人もいます。

岩切さん:すごく難しいところですよね。まずは、お金を貯める目的を明確にしましょう。「なんとなく貯めたいな」だと貯めづらいので、1年後に旅行に行く、10年後に家を買う、老後のためにいくら貯める、となんでもいいと思います。

画像

オレンジの花のアバターはりんなさん、3つ目の生物は私(こー)、三毛猫のアバターは司会のみらいさん

りんなさん:私は色々落ち着いたら旅行に行くため。。。
りんなさん:当事者会のみなさんと直接お会いしたいです
neneさん:横浜開催きぼー!笑
りんなさん:ぜひ愛媛で開催を・・・(無謀)
みらいさん:愛媛いいですね^^

オンラインだからこそ全国各地から同時にアクセスできるのが、このVR当事者会の良いところ。しかし、回数を重ねるごとに、直接会って交流してみたい気持ちも芽生えてきます。当事者会のためにお金を貯めるのは、良いアイデアに思えます。

岩切さん:目的が決まったら、先取り貯金という方法がおすすめです。貯金は1ヵ月の収入のうち、生活で使った残りの金額が貯金になって行くというケースが多いと思うですが、そうではなくて、先に貯金したい金額を生活費から抜いておきましょう。

りんなさん:先取り貯金してますー!収入の10%は先取り貯金してます

画像(パーキンソンの法則の説明。第1法則「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」。第2法則「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」)

岩切さん:パーキンソンの法則を紹介します。この第1法則もみなさん心当たりがあるんじゃないかなと思います。私は昨日の夕方まで、今日の資料を全部作っていました。締め切りギリギリまでやってる(笑)。

お金も同じように、支出の額が収入の額に達するまで膨張します。つまり、手元にあると全部使っちゃうんです。そこであらかじめ手元から離して分けておきましょうというのが先取り貯金ですね。

みらいさん:すごく納得 > パーキンソンさん
neneさん:締切ダッシュあるある

画像

ゲストの岩切さんは、柴犬のアバターで参加しています

手続き×先延ばし癖、対策のコツ!

画像(質問「先延ばし癖があり手続きが苦手。コツはありますか?」)

「先延ばし癖」はADHDの特性として知られていますが、ASDとADHDが併存している人も多く、大きな困りごとのひとつです。

特にお金に関する手続きでは、見通しが立てづらく、私自身も困ることが多くあります。

みらいさん:僕も先延ばし癖があり、手続きが苦手。岩切さん、これはどうでしょうか?

岩切さん:これは一人でやろうとしないことですね。意志の力は弱くて、どんどん先延ばし、後回しにしてしまいます。特に発達障害があると、目の前の刺激に反応しやすい特性の人もいて、めんどくさい事務仕事や手続きは後回しにしてしまいがちなので、誰かと一緒にやっていきましょう

友だち、恋人、家族が身近にいれば、アポを取ってください。「この日に私これやろうと思うから一緒にやらない?」「一緒にカフェ行ってくれない?」みたいな感じで。

りんなさん:だから、自習室なんてものがあったのかな
りんなさん:私は家計管理アカウントを作って、貯金している方に囲まれているようにしています
みらいさん:家計管理アカウント 名案ですね
りんなさん:自分を見てもらうのも大事ですが、みんなが当たり前に貯金している人たちに囲んでもらうと、いいかもです
sioさん:私は一人じゃないと集中できないのです。
みらいさん:1人の方が頑張れる人もいますね^^

画像

中央にはテーマが大きく映し出され、左右にチャットボードが配置されている

私も、「当事者会のなかで、手続きをみんなで一緒にやる時間があるといいかもしれません」とアイデアを出しました。

私(こー):みなさんで持ち寄ってやると良さそうですね。
岩切さん:めっちゃ良いですね、絶対それ出来ると思う、やりやすいと思います。
みらいさん:お互いを利用し合うというか(笑)。

確定申告も周りに頼って

画像(sioさんの質問「確定申告が不安です。障害のある人がサポートを受けられる窓口はありますか?)

続いて、sioさんからの質問です。フリーランスになったばかりで、確定申告が不安とのこと。

岩切さん:これは障害の有無に関係なく、税務署に直接行ってみてください。結構、教えてくれます。電話してアポイントを取って直接行くと、決算書の書き方なども目の前で教えてくれます。もちろん無料なので、個人であれば十分かなと思います。
みらいさん:なるほど、やっぱり聞いてみることって大事なんですね。発達障害があると、もう質問するのも苦手なのが染み付いていたりしますが。
岩切さん:聞くのは大事ですね。

ちなみに私もフリーランスで仕事をしていますが、確定申告は悩みの種でした。昨年は期限のぎりぎりまで提出することができず、1~2ヶ月にわたってずっと「確定申告をやらなければ」と頭に残り続けてしまっていました。これでは、仕事にも支障が出てしまいます。

そこで今回は、確定申告までに必要なタスクを分解したうえで、別の方にこまめにリマインドしてもらうことに。人を頼った結果、申告期間が始まる前に全ての準備を終わらせることができました。フリーランスになって4年目ではじめてのことでした。

税務署に聞いたり、周りの人に手伝ってもらったりすることは、私自身の体験からもとても重要なことだと感じます。

画像

質問したクリオネのアバターのsioさん、拍手する花のアバターのあおさん、黒いクリオネの松沢さん

当事者の目線に立ち、特性に合ったアドバイスをしてくれる岩切さんに、参加者のみなさんも「とても役に立ちましたー」(neneさん)、「次回も参加できたらと思っています」(松沢さん)といった感想を寄せてくれました。

岩切さんは「やっぱりみなさんがいらっしゃると、いろんな情報が出ますね。すごいです」と、当事者会の良さについて触れていました。

前編記事はここまでですが、まだまだ会は続きます。後編では、「クローズ就労している勤務先に明かさず、障害者控除を受ける方法」など、岩切さんから教わったお役立ち情報もご紹介します。

執筆者:遠藤光太

VR当時者会
(1)ASDの私たちが、お金の困りごとを専門家に相談(前編) ←今回の記事
(2)ASDの私たちが、お金のプロに聞いてみた(後編)

あわせて読みたい

新着記事