「テンションがあがる」「働く意欲があがる」など、みんなを元気に前向きにさせてくれる“あがるアート”。もっとあげるためには、どうすればいいのか。今回は、生み出されたアイデアに対して全国のリモート参加者が「アガったボタン」で判定。次々と提案される妙案は賛同を得るのか、白熱の「あがるアートの会議」が始まります。
どうすればもっと「あがるアート」をあげていけるのかを考える「あがるアートの会議」。
最初の相談者は、NPO法人の米田昌功さんです。富山県でアートを通じて障害のある人や高齢者など、さまざまな人をつなぐ活動をしています。米田さんからは、「現在、取り組んでいるプロジェクトをもっと盛りあげたい」という相談です。
米田昌功さん
「『ポフ(PO-FU)アートプロジェクト』と言って、箱形ギャラリーという、たたむと箱になり、開くと4メートルのギャラリーになる仕掛けを作ってます。それを郵便局にお渡しして、郵便局さんが自分たちの裁量でどんどんいろんなところに運んで展覧会をやっていく。特に山間の村とか、見たことのない作品が登場すると、おばあちゃんとかおじいちゃんが喜んでくれる。用もないのに郵便局に来て、その絵の横で一日、世間話して帰ったり、『ほっとした』みたいな感じがあって。関わる人をどんどん増やしていきたい」(米田さん)
富山を中心に郵便局で行っている展覧会をもっと広めていきたいという相談。実業家の遠山正道さんからすぐに提案がありました。
実業家 遠山正道さん
「郵便局でホワイト・キューブ(展示空間)ができたら、そこで買った作品は展示が終わった時に、郵便局から裏に切手を貼って、消印が押されて、そのまま絵ごと家に届く。袋にも入れないで。そうすると、後ろに『何年何月どこで買った』と郵便局の印として押されるし。大事に郵便局の方がお届けする。それを、家の玄関で受け取る瞬間いい感じだなと」(遠山さん)
福祉事業所で施設長を務める原田啓之さんと、病院でアート活動をしている森合音さんもこのアイデアに大賛成です。
障害福祉サービス事業所代表 原田啓之さん
「多分それだと二度あがるというか。買ってそのまま生で絵が届くという経験はなかなかできないので。高揚とかなりつながりやすいかもしれないですし」(原田さん)
ホスピタルアート・ディレクター 森合音さん
「宅配している人も楽しめますよね。袋に入ってないから運びながら。手渡しするまでにいいですね」(森さん)
「郵便局の展覧会で購入した絵に直接切手を貼って送る」というアイデアについて、リモート参加者はどう思うのでしょうか?
ここで、「アガったボタンタイム」!
「アガったボタン」の仕組み
テンションが「アガった」人は「アガったボタン」を押します。参加している233人のうち、6割の140人がボタンを押したら、番組がアイデアの実現に向けて応援するというシステムです。
結果は、108人が賛同。残念ながら140人には達しませんでした。
「多分、作品がかわいそうっていう感じが。ちょっと雑に扱われという感じがするのかも 」(遠山さん)
続いての相談者は、障害者施設でインターンをしている吉井望さんです。
吉井望さん
「『もっと人と人で交わろうぜ!』みたいな。そういうので人々が豊かになったり、子どもたちも人と人の違いを変じゃなくて、面白いと思えるようになったら、一人ひとりが変わっていくんじゃないかなって」(吉井さん)
「アートを中心に人が集まれないか」という、吉井さんからの相談。ここで、最初の相談者の米田さんから提案です。
「障害のあるなしに関係なく、いろんな方が集まって創作体験を共有できるような、アートの寺子屋みたいなのを展開していけたら、障害者アートという見方を飛び越えて、アートが生活の中に定着していく場を作れるんじゃないかな」(米田さん)
人を巻き込むためのアイデアとして、映画監督の安藤桃子さんは「盆踊りのやぐら」をイメージします。
映画監督 安藤桃子さん
「音楽が鳴っていて、円形に集まれる(場所)。要は盆踊りのやぐらがあるだけで、踊ったら『みんな同じだった』というのが人の感覚だから、あまり考えすぎないのがすごく大事なのかなと。いきなり音楽がかかって、誰かがいつでも踊ってますみたいな、そういう場所」(安藤さん)
踊りもアートだという考え。障害がある人もない人も一緒に交わるというアイデアに対して、米田さんと吉井さんも乗り気です。
「すごく楽しいと思います。踊りというのもみんなをつなぐひとつの手立てで、物作りだけじゃなくて、盆踊りみたいな形のパフォーマンスのワークショップというか」(米田さん)
「そういう生を楽しむような、生の人とか生のつながりにこだわりたい部分があって。『もっとみんな飛び出しちゃえ』と思っていて」(吉井さん)
この「踊りでみんなが一緒に交わる」というアイデアに対して、リモート参加者の反応は?
「アガったボタンタイム」の結果は101人が賛同。今回も残念ながら140人には達しませんでした。
「意外といった!すごくない?こんなに踊りたい人がいる。なんかよく分からないけれど、踊りたいって(笑)」(安藤さん)
目標には届きませんでしたが、多くの人から「このプロジェクトに参加したい」というメッセージが届きました。
夜に踊るの、楽しそうです!
引っ込み思案なので顔が見えるのがブレーキになりますが、色のつく影や白黒の影、色と光と音と、ごちゃ混ぜになるのは楽しそうと思います。
(とうま10さん・21歳/千葉県)
私は脳性まひですが、手が不自由でも楽器を弾ける方法を自分で編み出し音楽活動をしています。ぜひ参加したいです。
(ユウタさん/鳥取県)
続いての相談者は、文化庁に勤める林保太さん。日本のアートを世界に発信し、評価を高めていく仕事をしています。林さんは、「日常生活の中でもっとアートを身近なものにしていきたい」という相談です。
林保太さん
「もともと日本人って、自分たちの生活の中に自然をうまく取り入れてきたと思うんですね。江戸時代だとふすまに絵を描いたり、掛け軸をしたり。ですけど、戦後に生活が洋式化して、日常とはちょっと違う、(アートを)神棚に上げてしまったというか。生活とは離れたものになった面があるんですけど、それぞれの生活にアートが普通にある状態にしていきたいと思っています」(林さん)
この相談に対して、視聴者からメッセージが来ています。
もっと街中に絵を飾る空間が日常化したら、企業の受付やオフィス、官公庁や図書館などにあがるアートを「すてき」に展示する仕組みができないでしょうか。
(セイヤさん・53歳/会社員)
ここで、病院の壁にアート作品を展示している森さんからのアイデアです。現在行っている新しい取り組みを教えてくれました。
作品にバーコードをつけた病院
「うちの病院がやっている新しい取り組みは、作家さんの作品にバーコードをつけてます。気に入った方は『ピッ』とバーコードから作家さんの情報に飛べるというのを、試験的にやっています。そうすると買ってもらうこともできるし、その方の物語とか背景、その世界へ扉を開ける」(森さん)
これを聞いた遠山さんが、アイデアを加えます。
「待合室に作品があって、そこにQRコードがあって。それやるとその作品を見て、『あなたはどんなストーリーを思う?』みたいな(問いかけがあって)、一人ひとりが物語を待合時間の間に200字ぐらいで書いて。それがサラリーマン川柳みたいな感じで」(遠山さん)
アイデアが出そろったところで、実現可能か「アガったボタンタイム」です。
リモート参加者の結果は145人!6割以上の賛同者を得られました。
さらに、視聴者からもアイデアが届きました。
QRコードの件、プラスでその人の制作風景とか、お人柄などが分かる映像もつけてもらえるとよりコネクトできると思います。
(ばたこさん/埼玉県)
リモート参加者からの賛同を得た「QRコードでアートをもっと身近にするプロジェクト」。番組では実現化に向けて、今後も応援していきます。
各界4人の論客と、全国233人の視聴者による「あがるアートの会議」が終わりました。興奮さめやらぬ4人が会議を振り返ります。
「本当のアートの力って、なんか分からないから、分からないからこそ魅力。ひとつひとつが生み出す苦労というか、つなぐ苦労もありますし。それをこういう場所で共有できるこの時間自体が、すごく意味があると思います」(森さん)
「いわゆる『あがるアート』というものが、完成品というよりかは、人との関係性みたいなものが盛りあがっていけると、もっとあがっていく。いろんな形でつながっていけると嬉しいなと思いました」(原田さん)
「今日、出会った方々と通じながら、良い作家と出会いたいな。ちょっと偉そうですけど、キュレーションするのが楽しみ」(遠山さん)
「各カテゴリーを越えて『感性』で話し合うところが、私たち人の自然の姿かなと感じました。誰も区切ってなかったじゃないですか。『自分の立場はこうだから』ということがなかった。みんな『アート』を中心にして話す。これが心、ハート、『ハートネット』やね(笑)。『感性』『心』『命』を中心に議論したことで立場とか関係なく、全体の幸せを願う。そういった会になれたと思いました」(安藤さん)
ハートネットTVでは、これからも「あがるアート」プロジェクトを広げていきます。
あがるアートの会議
(1)アートのチカラを考えてみた
(2)アートで世界を変えちゃおう! ←今回の記事
※この記事はハートネットTV 2021年1月6日(水曜)放送「あがるアートの会議 後編 アートで世界を変えちゃおう!」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。