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わくわく 発見にあふれる毎日~ハート展2020より vol.7~

記事公開日:2020年08月05日

何気ない家族とのおしゃべり、いつもと同じはずの暮らし・・・ひとたび想像の翼を広げてみると、実はこんなにもわくわくするような発見にあふれていた―
障害のある人たちが、日常風景や家族への思いなどをつづった詩を紹介する展覧会「NHKハート展」。25回目となる2020年の入選作品から、作品に込められた思いや作者の人となりなどをお伝えするシリーズ。今回は、「発見にあふれる毎日」を感じられるような詩を6作品ご紹介します。

「わたりろうかにいたバッタ」細見悠尋くん

画像(詩「わたりろうかにいたバッタ」)

「わたりろうかにいたバッタ」

朝、わたりろうかにバッタがいた。
帰りにはいなくなっていた。
お母さんが、
「ごはんたべに行ったんじゃない?」と、いった。
いいなあ、
外食ばっかりで。


学校で、お母さんと交わした何気ない会話を詩にした細見悠尋くん。神奈川県平塚市の小学校に通う4年生です。

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祖父と囲碁をする細見悠尋くん

悠尋くんは、両親と姉との4人家族。お姉さんの影響で、小学校1年生の時に囲碁を始めました。週2日ほど、囲碁教室に通い、四級を目指しています。しかし、コロナの影響で教室がお休みに。今はアプリで勉強したり、AIと対戦したりしながら昇級を目指しています。

「ぼくが今がんばっていることは、いごです。今は、六級です。いご大会で勝てると、とてもうれしいです。負けてしまうと、とてもくやしくて、次がんばろうと思います。もくひょうは、四年生の終わりまでに四級になることです」(悠尋くんメッセージ)

学校では理数系、特に計算が得意な悠尋くん。
コロナ禍でPCRの検査技師が足りないというニュースを見て、将来は検査技師になりたいと思っています。

「たね」和久津結乃さん

画像(詩「たね」)

「たね」

わたしは、まえにたねのけんきゅうをしていました。
おじいちゃんからたねを、もらいました。
まず、たねのいろをくらべました。
カビがはえているのもありました。


和久津結乃さんは、祖父母と両親との5人家族。埼玉県三芳町に住んでいます。
観察や実験が好きな結乃さん。テレビで、種をまいて成長を観察するという理科の番組を見ました。種が変化していく様子がおもしろくて、結乃さんも種を観察することにしました。

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和久津結乃さん

一緒に住んでいる祖父は、家庭菜園を楽しんでいます。その祖父からキャベツやピーマン、なすなどいろいろな野菜の種を一粒ずつもらいました。画用紙に貼って色や形などを観察すると、ピンク色の種を発見。「これ、かわいい!」と叫ぶと祖父から「それはカビだよ」と教えられびっくりしたそうです。そのときのことを書いた詩が、入選しました。

「ともだちと、いっしょに、いろいろなしを、かきました。その中のたねのしが、えらばれて、とてもこうえいに、おもっています。たねを、くれたおじいちゃんも、よろこんでいます」(結乃さんメッセージ)

結乃さんは、詩や物語など創作するのが大好きです。今、学校の友だちと作っているものがあります。クラスのテーマソングです。

学校が再開した6月、学級活動の時間にクラスの目標を決めることにしました。全員で話し合って決めたのは“虹のようなすてきな3年生”になること。結乃さんは、みんなで歌を作ることを提案しました。

クラスは7人。歌のタイトルは「ななにんのいろ」にしました。キーワードを出し合い、結乃さんが歌詞にまとめました。クラスメートの1人がそれに曲をつけ、今は振り付けを考えています。あと少しで完成。できあがるのが楽しみです。

「やなおしり」古田圭さん

画像(詩「やなおしり」)

「やなおしり」

バスのなかで
おならしちゃった
すごくくさくて
こまってる
やなおしり。


古田圭さんは、愛知県豊明市で両親と一緒に暮らしています。
平日、圭さんは、同じ市内にある福祉事業所で働いています。9時半から午後4時半まで、13人の仲間とネジの組みつけなどの作業をしています。

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古田圭さん

圭さんは、ひょうきん者。圭さんがいるだけで、場が明るくなるといいます。入選作にも詠んだ“おなら”は、圭さんの鉄板ネタ。その話がおもしろくて、職員がハート展への応募を勧めたのが「やなおしり」です。

「作業中でも運動中でもおならがでちゃう。なるべくガマンするけどとめられない。やなおしり。にんげんだからしかたがないね。でもなるべくガマンしようかな」(圭さんメッセージ)

そんな圭さんの一番の楽しみは、父との晩酌。桃の酎ハイを休日の前夜、父と飲むのが至福の時。両親も、今回の入選をとても喜んでいます。

「おふろ」小田島煌楽さん

画像(詩「おふろ」)

「おふろ」

ラッコになって
おふろにプカプカ
シャワーのザーっていう
音がいいんだよね
本物の海に
うかんでるみたい
ながされないように
体に海草をまこう


小学4年生の小田島煌楽さん。
明るくて、おしゃべりが大好きな女の子です。入選作も、母親とのおしゃべりから生まれました。

「わたしは、泳いだり水にもぐることがこわくてできません。だけどお母さんにささえてもらっておふろにうかぶのは大すきです。まずは、おふろに顔をつける練習から始めようかな」(煌楽さんメッセージ)

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小田島煌楽さん

学校では、図工の時間が一番好き。工作や絵を描くことが得意で、家でも時間があると絵を描いています。

そして、もう一つ好きなのは動物です。動物の番組を見たり、ペットショップで子犬や子猫を見たり。可愛くて癒やされるそうです。入選作で、お風呂に浮かんでいる自分をラッコに例えたのも、好きな動物番組で見たラッコを思い出したから。コロナが収まったら猫カフェに行きたいという煌楽さん。将来の夢は、ペットショップのオーナーです。

入選作「わたりろうかにいたバッタ」の作者・細見悠尋くんとは幼なじみです。3歳から同じ発達教育のクラスに通っていました。今は、同じ小学校のクラスメートで、頼れる友だちです。

お互い切磋琢磨しながら、学校生活を送っています。

「すうがく」秋元那由汰さん

画像(詩「すうがく」)

「すうがく」

たしざんすうがく
うきうきかぞえる
ひきざんすうがく
わくわくかぞえる
とけいすうがく
ドキドキよんでる
たのしいすうがく
ピーンとのびる


秋元那由汰さんは、両親と3人で富山市で暮らしています。今、那由汰さんがはまっているのは、勤務表作り。放課後に行くデイ・サービスで見た勤務表をまねて、自分でスケジュール表を作り、経営者の気分を味わっているのだそうです。

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秋元那由汰さん

明るくて真面目な那由汰さん。何事にも積極的に取り組み、できないことはできるまでコツコツ頑張ります。

入選作は、「自分の好きなものを詩で伝えよう」という国語の授業で生まれました。
好きな数学の時間を詩に詠みましたが、できないことができるようになるとうれしいという那由汰さん自身がよく表現されています。

「国語で詩を勉強しました。好きなことを考えました。学校が好きです。勉強が好きです。数学が好きです。答えがわかると、うきうきします。苦手なことができるとわくわくします。難しい問題は、あっているかドキドキします。背筋を伸ばすともっと勉強できるようになります」(那由汰さんメッセージ)

那由汰さんは、今年、新しいことに挑戦する予定でした。
学校で先生がお茶をたてるのを見て、自分でもたててみたいと、茶道部に入部しました。
しかし新型コロナウイルスの影響で、残念ながら一度も活動しないまま茶道部は休止になってしまいました。

そして那由汰さんの将来の夢は、体操のお兄さん。心臓の疾患や右半身の麻痺があるため、はげしい運動はできません。だからこそ、元気に動き回る体操のお兄さんに憧れているのだそうです。

「海」岩科愛琉くん

画像(詩「海」)

「海」

歩いていくとザブン
大きな なみの音
海と空がかがみみたいに にていた
海に入るとつい
遠い所まで行っちゃう


岩科愛琉くんは、両親と弟、妹と静岡市に住んでいます。
愛琉くんは弱視です。授業では、単眼鏡やルーペ、拡大読書機などを使って勉強しています。

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岩科愛琉くんと弟の琉輝くん

入選作は、去年の国語の授業で生まれました。毎年家族で行く伊豆の海を詠んだ愛琉くん。どこまでも続く広い海、日光が当たるとキラキラする海面。自分が好きな海をどう表現するか。「海と空がかがみみたいに にていた」という表現にたどり着くまで、いろいろ考えるのが楽しかったと言います。

「ぼくは、毎年、夏休みに、おばあちゃんとおじいちゃんと家族で、いずに旅行に行きます。
ぼくは、いずで海で泳ぐことが好きです。今年、いずに行って見た海をイメージして、この詩を書きました。読んでいる人に、海の不思議さや美しさを伝えたいです」(愛琉くんメッセージ)

愛琉くんは、算数など、難しい問題を解くことが好きです。そんな愛琉くんが、今、夢中になっているのは、囲碁です。4年生のとき、学校の先生の勧めで始めました。月に1回、教室に通ったり、先生に紹介してもらった人にインターネットを通じて囲碁を教えてもらっています。

今年6月、「世界盲学校・視覚障がい者囲碁大会」にアプリを使ってリモートで参加しました。10~80代の16人が参加し、愛琉くんは、4位になりました。もっと強くなりたい。そのために、強い人ともっと対局して、実力をつけたいと思っています。そしてつい先日、将棋の教室にも行ってみました。とても面白くて、将棋にもはまりそうです。

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