「視線恐怖」基礎情報・支援情報

もくじ  

視線恐怖とは

アメリカの精神疾患の診断基準で、世界的にも広く用いられている“DSM-5”によれば、視線が怖くてたまらないという「社交(社会)不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)」の症状のひとつとされています。日本では古くから“対人恐怖”として研究が進められてきました。 

 社交不安には、視線の恐怖以外にも、様々な症状があります。食べているところを人に見られるのが怖い「会食恐怖」。人前で字を書こうとすると手が震えてしまう「書痙(しょけい)」など。すべて人と接する場面での不安です。 

画像(さまざまな社交不安)

不安や恐怖の感情は、人間が生きていくために大事なものです。ただ、程度がひどくなり、恐怖感や、不安感が大きくなりすぎると「病気」の症状になっていきます。 

 

不安や恐怖を感じる脳のしくみ 

  不安や恐怖を感じるとき、「扁桃体」と呼ばれる脳の中枢が活発に動いています。不安に敏感な人は、この扁桃体への刺激がちょっとしたことで伝わりやすくなり、次のような“不安の悪循環”に陥ります。 

画像(不安や恐怖を感じる脳のしくみ)

人と接する場面でネガティブな体験をする。「また同じようなことが起きるのではないか」と悪い予想をしてしまい、不安が増大します。人を避けていくうちに、ますます不安になってしまう。こうして、不安の悪循環から抜け出せなくなってしまうのです。

画像(不安の悪循環)

 

さまざまな種類の視線恐怖

視線恐怖には、さまざまな種類があります。 

人に見られているという「他者視線恐怖」。自分が人を見る視線が相手を不快にしているのではないかという「自己視線恐怖」などがあげられます。 

「自己視線恐怖」の中でも多いのは、正面を見られず、代わりに周りをチラチラ見てしまうという、「脇見恐怖」です。人と会話をしている時に目線をそらすために横目で見るので、視線の先にいる人にはにらんでいるように見えてしまい、相手から変に思われてしまうことがあります。本人は自分が視線をそらさなければ、周りの人が嫌な思いをせずに済むのにと罪悪感を抱いてしまいます。

 

苦しい時には専門家に相談を

視線恐怖症は知られていない症状でもあり、周囲が理解してくれないことも多くあります。そのような場合は、専門家に相談をしてみましょう。 

不安になっているときや気持ちが落ち込んでいるときなど、いわゆるネガティブな感情に支配されていると、考え方もネガティブになっていきます。そういう不安が強いときには、精神科医や心療内科医に相談してみてください。学校に通っている場合には、スクールカウンセラーに相談してみる方法もあります。

 

認知行動療法

治療法には、対話によるセラピー「認知行動療法」があります。専門家と対話をしながら症状を改善していきます。ネガティブに偏っている「ものの見方」や「行動」のクセに気付かせ、バランス良く治していく方法です。社交不安症だけでなく、うつ病などの治療にも効果があると注目されています。

画像(認知行動療法)

とくに“視線の恐怖”の場合には、「外に注意を向ける」ことが重要なポイントになります。

話している相手の視線が苦しいと感じた場合、あえて相手の服装を観察してみるなど、注意を自分の内側から外側にシフトしていきます。誰でも自分が見られていると思うと、自分のほうに注意が向いてしまいます。それは受け止めつつも、注意を移動させて外に向けることができるようになれば、楽になっていきます。

 

 

相談窓口/支援団体/サービスなど

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