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ハート ネット ピープル

生活保護の先にあるもの



生活が成り立たなくなった人が持つ権利として、生活保護は受けてよい。しかし本当に大事なのは、そこからの「回復」である。受け止めるだけのセーフティー「ネット」ではなく、もう一度バネの力を得させて復帰させることのできる「トランポリン」のような社会が今求められている、と湯浅さんは語ります。

――もやいは連帯保証人になるということですが、生活保護受給者が失踪した場合は、当然連帯保証人に責任がかかってくるわけです。リスクはどうなのですか?
この活動を始める前は、絶対うまくいかないから止めておけとさんざん言われましたし、私も10%くらいは覚悟が必要と思っていました。ですが、実際始めてみて、今1400世帯の人に保証人提供しているのですが、トラブルは5%です。95%の人は保証人に面倒をかけることもなくアパート生活をされている。ですからアパート生活をしたくないとかできないと言うことではなく、できるのです。社会がサポートしてこなかっただけなのです。

――生活困窮者へのサポートとして、生活保護は第一ステップとしてあって、その後はどういう社会復帰のプロセスになっていくのですか?
基本的には生活保護から抜けて、自ら収入を得る方法を模索しますよね。しかしそれは、生活保護を受けるまでがどういう状態だったかによって、道のりも変わってきます。ずっと大丈夫で、少し生活が落ち込んだだけの人はすぐに社会復帰することもできるでしょう。しかし、その前の過程でいろいろなことがあって、落ち込みが深くなってしまっている人の場合は、復帰までのプロセスも長くなります。ですから生活保護から抜けるのに時間がどれくらいかかるかは、人によって違ってきます。たとえば、19歳の男の子が生活保護を受けることになったのですが、彼は高校に行っていなかったので、夜間の定時制の高校に通いたいということで、今、定時制の試験を受けています。そういう場合は、定時制の高校を出るまでは生活保護で、ということになります。

このように学歴やスキルを身につけることもそうだし、他にはメンタルな部分の回復ですね。病気を持っていたり虐待を受けて育ってきた人は、いろいろ困難を抱えているので、生活保護を受けた翌日から24時間戦えますか、と言えばそうではなく、ある程度時間をかけていかないといけない。その意味で、実は、生活保護を受けた後のプロセスをいかにスムーズにもっていけるかに力を注がないといけないわけですが、それがまだなかなかできていないのが現状です。

イギリスでは生活保護をセーフティー「ネット」ではなくセーフティー「トランポリン」と位置づけているそうです。受け止めるだけはなくて、そこからバネの力をその人に得させて社会へと帰していかなくてはいけない。日本の場合、そういう運用がまだできていない点が問題だと思います。

――生活的に自立できるようになって、もう生活保護は受けなくて良いという判断は誰がするのですか?
基本、福祉事務所のケースワーカーが行います。その人の状態を見ながら、ケースワークをやっていく。これが生活保護制度が指定しているやり方なのですが、さっき言ったように、ひとりのケースワーカーがキャパシティ以上に抱えてしまうと、そういうことができない。だからこれは悪循環になっている向きがあります。

――生活保護を受けないとやっていけないんじゃないかという人たちへメッセージをお願いします。
生活保護を受けることを、あまり恥ずかしいとは思わないでほしいということですね。偏見が強い制度ですが、収入が足りない時にちょっと利用して抜けることもありだと思います。失業手当をもらうのに抵抗感がある人ってあまりいないですよね。それと変わらないと思って利用してもらいたい。それが憲法25条に書かれた「生存権保証」、健康で文化的な最低限度の生活が保証されるという、国民の権利だと思っていますから。

(2008年3月10日 インタビュー収録)

コメント

 私はセーフティーネットとは生活保護、自殺対策なのだと考えます。
命の網の目から一歩二歩前進して“セーフティートランポリン”にしてゆくためには、個人の生きる力を引き出すこと、社会が寛容であることを「形」にする必要があるのだと思います。実際に形としてあるのかもしれませんが、トランポリンとして―職業訓練を受けられるようにすることや就職先を紹介したり、自分の可能性と向き合えるようにすること(啓発セミナーやメンタルの支援)、そして再び戻る社会の偏見を変えていくことはとても必要なことでしょう。
 いろんな事情で衣食住を奪われることはありますし、生活保護を受ける人、過去に受けた人への偏見を持たない日本を築きたいです・・・・・生存権を保障していくことは国家の役目です。そしてそれと同じように、生活保護を受ける人も含め国民ひとりひとりが国家レベルの目線を持って生活保護のあり方であったり、その後の社会復帰を共同社会として考える必要があると感じます。

 
 生活保護は自治体の抑制も問題になりましたが、将来の超高齢社会到来、ニート支援、続く不況の煽りで更に多くのセーフティーネットが求められることが予想されます。労働人口が減少していく傾向対策もいわれていますが、国家財政が逼迫する中でいかに月々の生活保護費用とそこからのバネとなるための支援費を捻出するかを政治家や官僚だけでなく私たち国民からもアイディアが得られるといいと思います。
ただ自分たちは受身になるだけでなく。

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