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この人と福祉を語ろう 汐見稔幸 男の子育て

福祉ネットワーク2007年12月17日放送「この人と福祉を語ろう」でご紹介した、教育学者で白梅学園大学学長の汐見稔幸さん。汐見さんは3児の父親として、積極的に育児に参加してきた経験を持っています。

教育学者 汐見稔幸氏
[写真] 教育学者 汐見稔幸氏

男も子育てから学ぶべし
『汐見稔幸さんは大学生のときに保育士のかずえさんと結婚。すぐに長女が誕生し、仕事を抱える妻と二人三脚の子育てが始まりました。その後、大学の専任講師に就任。同じ年に長男が生まれ、仕事と子育ての両立を続けます。さらに2年後に3人目の子どもが誕生、週に2日は「子育ての日」と決めて子どもとの時間を意識的につくりました。働き盛りの時間を子育てにかけ、結局、保育園の送り迎えは13年続けました』

汐見さん/
私は子育てを手伝うというより、自分の仕事の一つと考え、母親と変わらないようにやってきたと言えます。

戦後第一世代、男女の平等が大事と言われて育った世代ですから少なくとも自分の家族くらいみんなが平等だという家庭にしたかったんですね。妻が働いて自己実現するのは当然と思ったし、それなら自分が育児するのも当然だろうと。

以下が、「子育ての日」の、私のスケジュールです。7:00起床 7:30朝食 8:30子どもたちと保育園へ 9:00通勤 9:30大学で研究 ?17:00大学を出る 18:00保育園にお迎え 18:15夕食の買い物 18:30帰宅・夕食づくり 19:00夕食 19:30子どもと遊ぶ 20:00子どもと風呂に入る 21:00子どもが就寝 夜中・本を読むなど研究・ゼミの準備。

大学の専任講師に就任した年、2人目が誕生。仕事と子育てを両立する日々が続いた。 
[写真] 大学の専任講師に就任した年、2人目が誕生。仕事と子育てを両立する日々が続いた。

子育てをしてみて感じるのは、手伝うのと、母親と対等にするのとでは体験できるものがかなり違うということです。子どもが喜ぶ瞬間がありますよね。仕事から帰ってきて、パパーと抱きついてこられると父親は嬉しいでしょう。あの瞬間の数が違う。結局のところ、父親として子育てをずっとやり続けた一番の原動力はそれですね。また、子どもからそう見てもらえるためには自分自身も常に向上しないといけないわけです。男も子育てをすることで、本当はいろんなことがもっと学べるはずなんですよ。

昔は子どもを地域に「放牧」できた 
[写真] 昔は子どもを地域に「放牧」できた

子どもを地域に放牧する
今は子育てが親だけでぜんぶ背負わされている。特に母親ということになるかと思いますが「全部自分でしなければいけない」という孤立感にさいなまれている。でも考えてみれば過去、子育てを親が全部やっていたという歴史はなかったんです。たとえば今から50年前、昭和30年に日本の女性は家事時間が一日13時間半だったというデータがあります。それだけの時間働いている人がどうやって3?4人の子どもを育てられていたんでしょう。でも昔は、邪魔になったら「おばあちゃんのところへ行っておいで」「○○ちゃんのところで遊んどいで」。かつては子どもは地域社会に放牧できたんですね。また、そうした地域社会のなかで子どもたちの社会性も自然と培われていった。

では今風に放牧するにはどうすればいいんでしょう。
東京世田谷区に「アミーゴ」という、助産師の人が始めた子育て支援グループがあります。メンバーの多くは妊娠中からここに通って、顔なじみのメンバー同士で子育ての悩みや不安を共有しています。
子育て支援グループ「amigo(アミーゴ)」(別ウインドウ)
※クリックするとNHKのサイトを離れます。

東京江戸川にあるNPO法人「東京ベーテル」。ここでは、アパートの一室に近所の母親が集まってきます。利用料は1人100円。通ってくるお母さんとボランティアがみんなで手分けして子どもの世話をみます。手の空いたお母さんたちは隣の部屋でパン作りやビーズ教室など自分の得意なことを教え合う。母親もちゃんと自分の時間を持てるんですね。
特定非営利活動法人 ファミリーセンター 東京ベーテル(別ウインドウ)
※クリックするとNHKのサイトを離れます

これらは新しい「放牧できる場所」かもしれません。

東京・世田谷の子育て支援グループ「アミーゴ」  
[写真] 東京・世田谷の子育て支援グループ「アミーゴ」
東京・江戸川のNPO法人「東京ベーテル」  
[写真] 東京・江戸川のNPO法人「東京ベーテル」

仕事と子育ての両立
仕事を抱えながらの育児。仕事か育児か、二者択一になってくるのではないか。私もそれで悩んだ1人です。子育てで一番大変な時期は、同時に社会的には一番仕事で自分の評価を上げなければいけない時期にあたることが多いから、矛盾します。

私にしても研究者だから、論文書かなければいけない。本来、1週間くらいどっぷり研究に没頭しないとなかなかできないんです。でも育児を放棄はできない。悩みました。しかし、育児は今しかできない。研究は一生できる。育児をしながら「今できるレベルの」研究にしておく、と決めて悩まないようにしました。

周りを見ていても、上手に両立している人は、育児中はあまり仕事を広げないでテーマを絞ってそれに集中するという点が共通しているようです。私も、育児時代、本音では自分の視野を広げるためにいろんな論文を読んだり興味範囲を広げたいが、いったんそこは犠牲にすると決めた。その代わり、このことについて論文を書くと決めたら、もうその関係の文章しか読まないと決めて効率的に論文を生産していく。そういう風にして上手に切り抜けていったんです。

確かに子育ては大変でしたが、それ以上に自分の人生を充実させてくれたという気持ちの方が大きい。もっと男が子育てについて語りましょう。それは仕事にも生きてくるはずです。僕は男がもっと子育てを語らないと、世の中が歪んでくる気がしているんですね。

(2007年12月17日放送・福祉ネットワーク「この人と福祉を語ろう ?教育学者・汐見稔幸? 男子 子育てと向き合う」より再構成)
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