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ハート ネット ピープル

「慈しむ心」を教える動物たち

[写真]ヒナから育てたエミューの「ニモ」を散歩に連れ出すカール。(撮影=大塚敦子)
前回に引き続き、「閉ざされた心も開いてしまう、動物の力」について書きたい。今回の舞台は、アニマルセラピーをとおして子どもたちの心のケアに取り組んでいる、アメリカのグリーン・チムニーズという施設。こんな場所が日本にもあったらどんなにいいかとずっと思っている。まずは、どんなところか説明しよう。

グリーン・チムニーズは、ニューヨーク州北部の豊かな自然の中にある。敷地のなかに学校があり、畑や農場があって、子どもたちはここで寮生活をし、動物たちの世話をしながら、心の回復をはかっていく。 ここに来るのは、極度の情緒不安定や、他の子に暴力を振るうなどの問題行動のため、家庭や一般の学校にはいられなくなった子どもたちだ。多くの子が、虐待を受けたり、崩壊家庭で育ったり、学校でひどいいじめを受けるなどしている。親から愛された経験がないために、人と絆を結ぶことがむずかしい子、怒りや不満を言葉にできず、暴力的な態度でしか表せない子もたくさんいる。

忘れがたい子どもの一人が、11歳のカールだった。母親に養育を放棄されたためにいくつもの里親家庭を転々として育った彼は、いつも下を向いていて、なかなか人と目を合わせられない子だった。そのカールの一番のお気に入りだったのが、ニモという名前のエミューだ。ニモは、生まれたばかりのとき、どういうわけか親鳥に受け入れられず、踏みつけられそうになったため、親から隔離されたそうだ。カールはそのニモをいっしょうけんめいに世話し、立派に育て上げた。
親に捨てられたヒナの世話をしたことは、カール自身の癒しの過程で、きっと大きな意味があったにちがいない。虐待を受けた子どもは、自分自身が親になったときに、自分の子どもに対して同じような虐待のサイクルを繰り返す傾向がある、とよく言われる。けれど、カールのように、他の命をいたわる経験をすることは、この暴力のサイクルを断ち切るひとつのきっかけになると思う。カール自身は親に慈しまれずに育ったけれど、自分の中に「慈しむ心」があることを知ったのだから。
いつもつくづく感動するのは、動物たちは、子どもたちのいちばん優しい部分を引き出してくれることだ。表向きはどんな問題行動のレッテルを貼られた子であっても、それは変わらない。
慈しむ心。それは、誰もが内に持っている宝物で、動物たちはそれを見つけ出す手伝いをしてくれる。

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