本文へメインメニューへ
ここから本文です

ハート ネット ピープル

はたらく地雷探知犬 2

[写真] 二人三脚で地雷原を歩くハンドラーと地雷探知犬。(撮影=大塚敦子)
[写真] 二人三脚で地雷原を歩くハンドラーと地雷探知犬。(撮影=大塚敦子)

ボスニアで訓練を受け、カンボジアに送られた犬たちはその後どうなるか。
舞台をカンボジアに移そう。

カンボジアでは、内戦時代に埋められた地雷が、400万から600万個も残っていると推定されている。ベトナム戦争のとき、アメリカ軍が投下した大量の爆弾の一部も不発弾となって残っている。94年に統計を取り始めてから2007年末までの間に、およそ1万9千人もの人が地雷や不発弾で亡くなり、4万7千人近い人が手足を失った。そのほとんどが一般市民で、子どもも多数含まれている。

被害を減らすためには、一日も早く、一つでも多くの地雷を除去しなければならないが、それにはまず、地雷がどこにあるのか探さなければならない。人間が金属探知器を使って探す方法がもっとも確実なのだが、これには膨大な時間がかかる。というのは、金属探知機は地雷にかぎらず金属製のものすべてに反応してしまうからだ。掘り出してみたら、ただの鉄くぎだった、というようなことがよくある。

そこで活躍するのが地雷探知犬だ。犬は地雷のなかに仕込まれている火薬の匂いを探知するよう訓練されているので、金属探知器がまどわされてしまうような場所でも、はるかに早く、地雷だけを探すことができる。

ボスニアから来た犬たちは、地雷除去を担う政府機関 「カンボジア・マイン・アクション・センター」 (CMAC) のもとで、人間のハンドラーとペアになって働く。カンボジアでよくおこなわれているのは、人間と犬が地雷原に張ったロープに沿って、文字通り二人三脚で歩く方法だ。どこに地雷があるかわからない場所を、犬と人間がどんどん歩いていく姿を見たときは、思わず息を張りつめずにはいられなかった。でも、ハンドラーの女性に、「こわくないですか?」 と聞くと、彼女は 「自分の犬を信じているから、こわくないです」 とにっこり笑う。

その言葉を聞いたとき、ボスニアの訓練センターでの日々がよみがえってきた。犬たちは、人の手で愛情いっぱいに育てられて、人間への揺るぎない信頼を持っている。人間のほうも、犬を心から信頼している。その絆があるからこそ、危険な場所にもいっしょに出て行くことができるのだろう。

犬は、地雷を嗅ぎ当てたら、その場に座るか、横たわるかする。それが 「見つけた」 という合図だ。犬の仕事はそこまでで、そのあとは、人間が金属探知器で確認し、そろそろと掘り出す。そして、地雷が出てきたら、火薬を仕掛けて、その場で爆発させる。それで、ようやく一人の命が助かったことになる。ほんとうに大変な、気の遠くなるような作業だ。

犬たちが地雷原で、いっしょうけんめい働く姿を見ていると、地雷を埋めるという人間の行為がどんなに愚かなことか、ひしひしと胸に迫ってくる。犬は自分たちが探しているのが地雷だとは、もちろん知らない。もし知っていたら、ほとほとあきれることだろう。私たち人間が責任を持って、地雷をなくしていかなければ、と思う。


※大塚さんの自著 『地雷のない世界へ はたらく地雷探知犬』 (講談社) で詳しく綴られています。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://cgi2.nhk.or.jp/cgiblog/tb.cgi/14267