
閉ざされた心も開いてしまう、動物の力
皆さんは、「アニマル・セラピー」と聞くと、どんなものを思い浮かべますか? たいていの人は、動物とのふれあいをとおして心を癒す何か、とイメージしているのではないだろうか。その言葉を聞くだけで、自分の好きな動物の姿を思い浮かべ、心が温かくなる人もいるだろう。
日本で「アニマル・セラピー」と総称されているものは、厳密には動物介在療法(Animal Assisted Therapy = AAT)と動物介在活動(Animal Assisted Activity = AAA)に分類される。医師や療法士が関わって治療の一環としておこなわれるものはAAT、老人ホームや病院への訪問活動などはAAAだ。多くの人が漠然と抱いているアニマル・セラピーのイメージは、このAAAのほうだろう。前回の「ディロン〜運命の犬のもとになった・・・」で書いた動物とのふれあい活動は、20年前日本で最初に始まったAAAだ。
私はこのアニマル・セラピーを、ここ12年ほど取材し続けている。自分が大の動物好きだから、というのもあるが、一番のきっかけになったのは、前々号でも紹介したビアトリス初め、エイズとともに生きる人たちを支える動物たちの姿に感動したからだ。
アメリカで、ある末期のエイズ患者の友人のそばに付き添っていたとき、私は苦しんでいる彼女に何と声をかけていいかわからず、同じ部屋にいることさえいたたまれない思いをしていた。ところが、彼女の犬と猫は、来る日も来る日もベッドの上で、彼女にぴったりと寄り添い続けたのである。
私たち人間は、言葉に頼るあまり、言うべき言葉が見つからないとどうしていいかわからなくなってしまう。でも、言葉を持たない動物たちは、全身全霊で、「ただそこに、いる」という、人間にはとてもむずかしいことを見事にやってのけるのだ。
動物にしかできない愛し方、というのがあると思う。それは、相手が何者であろうと、自分をかわいがってくれる人を無条件で受け入れ、愛することだ。そんな動物たちの愛情が人の心を癒していく様子を、アメリカの最重警備女子刑務所で見た。ワシントン州にあるその刑務所には、受刑者たちが捨てられた犬たちを引き取り、介助犬に育てあげて障害者のもとに送り出す、という先進的なプログラムがある(※)。人を傷つけただけでなく、自分自身も深く傷ついている女性たちの固く閉ざされた心を、一度は人間に捨てられた犬たちが開いていくのだ。犬という動物のすばらしさと、アニマル・セラピーの可能性の広さを感じずにはいられない。
動物たちの話をし始めると止まらなくなる私ですが、この続きはまた。今度はニューヨークのアニマル・セラピー施設の話をしようと思う。
※大塚さんの自著『犬が生きる力をくれた?介助犬と人びとの物語』(岩波書店)で詳しく綴られています。
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