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ハート ネット ピープル

家のない子どもたちに人生を捧げて-ボスニアのシスターたち-

児童養護施設「エジプト」のシスターと子ども。この子の母親は行方不明だ。(撮影=大塚敦子)
[写真] 児童養護施設「エジプト」のシスターと子ども。この子の母親は行方不明だ。(撮影=大塚敦子)

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボの旧市街から、急な坂を上ること15分。息が切れ、汗がにじみ始めるころ、「エジプト」が目に入ってくる。ここはカトリックのシスターたちが運営する児童養護施設。幼いイエス・キリストが迫害を逃れてエジプトに避難したという新約聖書の物語から、その名が付けられた。1899年に設立され、 3度の戦争を乗り越えたこの施設には、戦争で親を亡くしたり、家族が離散してしまった子どもたち32人が暮らす。

養護施設というと、おおぜいで集団生活をする寮のような場所をイメージしがちだが、ここでは子どもたちを4つのグループに分け、8人の子どもとシスター1人から成る疑似家族をつくっている。どの家族にも、リビング、キッチン、ダイニング、寝室があって、それぞれが独立した家のようだ。

「エジプト」にあふれる何ともいえない温かい雰囲気をどう表現すればいいだろう。シスターたちはたえず子どもたちを抱きしめ、ほおずりする。いたるところに季節の花や手作りのクラフトが飾られている。立派なものは何もないけれど、優しさと温もりを感じさせるものばかり。

「ここに来る子どもたちは、みんな重荷を抱えています」と、代表のシスター・リベリヤがこんな話をしてくれた。ある10歳の男の子は、父親が死んだあと母親が養育を放棄したために、妹と二人で引き取られた。母親が恋しくてたまらないのに、居所さえわからない。男の子は、背の高い家具の上に登るなど危険な行動を繰り返した。

「ある日、どうしてそんなことをするの? と聞くと、逃げたいから、と言うのです。でも、罰したりしないから逃げる必要はないのよ、と話すと、その子は泣き出しました。私はただ彼を抱きしめて、言いました。私があなたの母親になれたらいいのに、と・・・」

シスターの思いが通じたのか、その日を境に落ち着き始めたその少年は、いまはサッカーに夢中だという。「エジプト」では、9人いる男の子でサッカーチームを作っている。オシム監督の故郷サラエボの少年たちにとって、サッカーほど熱くなれるものはない。いろんなつらい思いを吐き出せるよいアウトレット(編集部注;「はけ口」の意)ともなっているようだ。資金難のため、チームが続けられるかどうかむずかしいそうなのだが・・・。

「私たちの仕事は、この子たちを守り育て、将来に備えさせること。いつか自立できる日が来ることを願っています」
そう話すシスター・リベリヤに両手でしがみつき、ずっと離れない少女がいた。愛に飢える子どもたちに、シスターたちは全人生を捧げる。24時間そばにいて、この子たちを抱きしめ続ける。無宗教の私だけれど、このシスターたちを心から尊敬せずにいられない。

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