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ハート ネット ピープル

はたらく地雷探知犬 1

[写真] パピートレーナーを見つめる地雷探知犬候補の子犬。(撮影=大塚敦子)
[写真] パピートレーナーを見つめる地雷探知犬候補の子犬。(撮影=大塚敦子)

カンボジアの地雷のことを書くのは、これが3度目になる。先月半ば、「地雷のない世界へ はたらく地雷探知犬」 という写真絵本を出したので、今回は "地雷探知犬" について書きたい。

盲導犬、介助犬、災害救助犬、麻薬探知犬など、私たちの社会には、人間のために働いてくれる犬(Working Dog) がたくさん活躍している。そのなかでも、私が究極のWorking Dogではないか、と思うのが、地雷探知犬だ。地下に埋められ、人間の目ではなかなか見つけることのできない地雷を鋭い嗅覚で探し出してくれる地雷探知犬。彼らが懸命に働く姿を見ていると、地雷を埋めるという人間の行為の愚かさが、ひしひしと胸に迫ってくる。

私が初めて実際に地雷探知犬が働くところを見たのは、2005年。ボスニア・へルツェゴビナの平和構築を取材していたときのことだ。ボスニアでも地雷は戦後復興の大きな妨げとなっていて、国中で地雷除去作業がおこなわれているが、その現場のあちこちで地雷探知犬が活躍していたのだった。

人間を助けてくれる犬はたくさんいるけれど、これほど危険で大変な仕事をしてくれる犬たちは他にいないのではないか。ボスニアでもカンボジアでも、地雷を見落として地雷探知犬が事故にあったことは一度もないそうだが、それだけの能力を身につけるためにはいったいどんな訓練を受けるのだろうか。もっと知りたくなった私は、ボスニアで生まれた子犬たちがカンボジアで活躍するようになるまでを追うことにした。

ボスニアには、ノルウェーの国際援助団体Norwegian People's Aidが運営する地雷探知犬の訓練センターがある。そこで生まれ育った犬たちは、訓練を終えると、カンボジアの他に、エチオピア、コンゴ、ヨルダンなど、地雷の被害に苦しんでいる国に送られ、地雷探知犬として働く。

地雷探知犬となるのは、どんな犬たちだろうか。中心になっているのは、マリノア (ベルジアン・シェパード) といって、日本でもおなじみのジャーマン・シェパードよりひとまわり小さく、毛も短い種類の犬たちだ。訓練センターでは、地雷探知犬の両親から生まれた子犬、つまり地雷探知犬としての素質を持った子犬たちを繁殖し、幼いころからていねいに育てる。

子犬たちは、パピートレーナーたちからたくさんの愛情を受け、人との絆を育んでいく。また、タオルを噛んで引っぱったり、振りまわすなど、もともと持っている狩猟本能を刺激するための遊びをとおして、獲物の匂いを嗅いで追う、という狩猟行動を強化していく。

地雷探知犬になるのは、何よりも、その仕事が好きで、それに向いている犬でなければならない。匂いを嗅いでものを探すのが得意なマリノアのような犬にとって、地雷探知は楽しいゲームみたいなものだ。でも、ペットとして家で寛ぐのが好きなチワワのような犬にとっては、苦痛でしかないだろう。仕事を選ぶ際に適性が大事なのは、犬も人間も同じなのだ。

犬によっても違うが、訓練センターで過ごすのはだいたい1年半ぐらい。そのあとは実際に地雷探知犬として働く国に移動し、2ヶ月ほど仕上げの訓練を受けた後、地雷原に出ていくことになる。ほんの小さな子犬のときから育ててきたボスニアのトレーナーたちにとっては、名残惜しい別れのときだ。カンボジアに送り出した犬とは、おそらく二度と会うことはないだろうから・・・。

                                                                                 (次回に続く)


※大塚さんの自著『地雷のない世界へ はたらく地雷探知犬』(講談社)で詳しく綴られています。

 

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