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ハート ネット ピープル

太田さんのできること

[写真] 太田さんの心が荒れているとき、家族もきっと同じ状態だね。といったら、「こんな顔?」と・・・。

文/上村真紀(作業療法士)
「私はね、できないことだらけになって・・・」
そんなことないでしょう。
「いやあ、なんかね、(認知症の症状が)すすんでいるのが、すごく速く感じるんだけど」
「できることが、どんどんなくなってきて」
「しょうがないんだけどさ」
そうか・・・。
しようと思うことが、できないって歯がゆいよね。
「そう。言おうとしていたこととか、しようとしていたことが、記憶がなくなるんで、プツン、プツンって切れるんよ。どこかいっちゃうんよ」
「歯がゆい!悔しい?い!って感じ」

ここしばらく、太田さんとゆっくり話す機会がなく過ごしていました。
今日は、久しぶりに横に座ったら、堰(せき)を切ったように話し出しました。
生活する上で、難しいことがずいぶん増えました。
不便で、窮屈な思いって、「狭い壁の間を身体をくねらせながら、抜け出そうとする感じ」なんだそうです。太田さんが身振りで教えてくれました。
わたしも一緒に、身体をくねらせて、抜け出せるかどうかやってみました。
わたしは、壁をこじ開けることを知っているけれど、
太田さんには、その術がないことに気がつきました。
気づかれないように、太田さんのその壁をこじ開けることが
太田さんの望む「やさしい」ケアなんだろうなあ。

[写真] 太田さんが穏やかだったら、太田さんも周りも穏やかな顔だよ、といったら、くしゃっと笑ってくれました。
「もう、できないのはしょうがないんだけどさっ」
ちょっと、あきらめたように言います。
そんなことないよ。
講演会で自分の気持ちを話して、皆に伝えることが出来ているじゃない。
認知症をもつ人が話すって、そうそう誰にでもできる事じゃないと思うけど。
「そうかな」
そうよ!すごいことができているんだから。
そして、できることは、まだ、あります。いまは、内緒にしておくけど。
「わっははははは! そう? まだあるの?」

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