本文へメインメニューへ
ここから本文です

ハート ネット ピープル

T先生には、愛があった。

前回に引き続いて、大橋さん自らがLDと向き合ってきた子供時代を振り返って語ってくださいます。中学時代にお世話になったT先生。その存在は非常に大きかった、と大橋さんは言います。


[写真] 地元のテレビ番組で司会をしています。

小学校も高学年になると、いじめにNoと言えるようにもなった。だんだんいじめられなくなっていった。 本を読むこと、映画を見ること。裕福ではなかったが、僕の好きなことに親は寛大だった。日曜日に1人で映画館に行く子供なんて、普通は変だが、母ちゃんは「行っておいで」と言ってくれたし、父ちゃんも「本を読むなら小遣いをやろう」と言ってくれた。 みーんな、今の僕にとって、肥やしになっている。こうやって書く仕事ができるのも、父ちゃんと母ちゃんのおかげである。 でも、ひどい先生ばかりでもなかったんだな、これが。中学校時代の校長、T先生。中学3年のときだ。校長室の掃除をしていたら、T先生が「君が大橋君か。君、面白い生徒なんだってね」と言う。「面白い」と言われても、自分で自分が面白いかどうかは、分からない。「はあ」なんて曖昧な受け答えをしていると、T先生は驚くべき提案をしてきた。「君の志望校は定員割れを起こしているから、少々成績が悪くても大丈夫だろうが、数学が0点じゃ、合格はできないよ。せめて式の計算ぐらいできないと…。君は知らないだろうけど、僕は山口県でも数学ではかなり有名な先生だから、明日から毎日、校長室に来なさい。僕が教えてあげよう」という。 びっくりである。校長先生である。校長先生と言えば、学校で一番偉い人である。授業をしている姿など、見たことがない。その校長先生が、勉強を教えてくれるという。それから、T先生は、式の計算の仕方を、グラフを書きながら、ゆっくりと教えてくれた。頭では計算できないが、グラフを書いてえんぴつで数をなぞれば、僕でも何とか計算ができるようになった。

[写真] 大橋さん親子。


校長先生、本当に感謝である。おかげで高校に進学できたのだ。その先生が、最後のマンツーマン授業で僕に言ったことがある。 「大橋君、君に教えたのは、テストに受かるための勉強だ。本当の勉強じゃない。本当の勉強は、もっと奥が深くて、深遠なものなんだ。成績などで測れるものでもない。いつか、そのことを分かってほしい」。この言葉は、僕の大きな胸に突き刺さった。僕が高校から大学に進学できたのも、この先生の言葉があったからである。 T先生は、僕が高校に入ってからもいろいろ気にかけてくれ、電話で学校に様子を聞いてくれていたらしい。僕が新聞記者になったことを人づてに聞き「彼の個性が生かせてよかった」と心から喜んでくれたらしい。今回、「ハートをつなごう」番組出演のことをお知らせしようとT先生を探したが、7年前に亡くなられていた。先生の奥様から聞いたが、今になっても教え子たちが定期的に集まっては偲ぶ集いを開いているそうだ。僕のような生徒は、どうやら僕だけではなかったようだ。 特別支援教育と言っても、結局は教える側の「愛」なのかなあ、と思う。 T先生には、愛があった。


関連ページ:
福祉コラム
発達障害と特別支援教育

コメント

大橋様
私立高校の養護教諭です。大阪で教員・医師の有志と「関西特別支援ネットワーク」を作って、遅ればせながら発達障害について学んでいるところです。大橋さんの「特別支援教育は愛」という言葉に胸が熱くなりました。T先生のように愛のある教職員が増えてほしいと切に願っています。 障害の有無に関らず、未来を担う子ども達がたくさんの愛を実感しながら育つことができるように、養護教諭として、また子どもを育てる親の一人として、一社会人としてもっとたくさんの方々とつながり、成長していきたいです。大橋さんぜひ大阪にもいらしてください。

大阪・・・いいですねえ。USJや食いだおれなどなど、魅力がいっぱいです。何度か行ったことはありますが、いつ行ってもエネルギッシュで、元気をもらう街です。

そんなエネルギッシュな街だからこそなのでしょうが、教員と医療関係者の方々がスクラムを組むなんて、素敵ですね。素晴らしいと思います。

いつか縁があったら、皆さんの活動をのぞかせてください!

私も中学のころの先生には愛がありました。自分で言うのも恥ずかしいんですが音大付属の中学だったんです。私は場の空気が読めないことからクラスでいじめられていました。ピアノのS先生がいじめのことでいつも相談にのってくれました。S先生がいなかったらきっと私は学校を登校拒否していたと思います。
S先生には今も感謝しています。

メロンさん、ずいぶん遅い返事になってしまいました。申し訳ありません。

こまめに返信するのは苦手で・・・。

今、メロンさんに返事をしようとして、コメントを頂いた日が、僕の誕生日だったことに気づき、ちょっと嬉しかったです。

本当に、感謝できる出会いがあったこと、嬉しいですよね。その出会いって、きっと偶然ではなく、メロンさんの“優しさ”や“頑張り”が呼び寄せたものだと思います。

僕も、そんなT先生のように、なかなか難しいのですが、今度は自分が愛をもって人に接し、感謝できる出会いを作りだしていきたい、と思うきょうこのごろです。

パソコンのメンテナンスの合間に、ふらっと見ただけのいいかげんな訪問だったのですが・・・。
大橋さんの文章を見て、涙が出ました。
T先生とか、奥様のような、愛ある人間にならないとなぁ・・・、とつくづく感じました。

はじめまして。
自宅で小さな塾をしております。
一人、計算の学習障害ではと思える男の子がいて、調べ始めたところでこちらを見つけました。
どうしたらいいかわからず、挫折しそうでしたが、勇気をいただきました。
ありがとうございました。

先日、大橋さんのご講演をお聴きしました。
「T先生が、B4の白い紙を机の上に置いて、といめんではなくて、私の横に座って、私の手をとって、-1+6の計算を教えてくれたのです。」とお聴きした瞬間、ひとりの子どもをなんとかしてあげようとしているひとりの教師の姿がありありと浮かんできました。T先生の愛のある姿だと思います。そこから、後は、私も涙を流しながら、大橋さんのご講演をお聴きしました。すばらしいお話をありがとうございました。また、いつか、大橋さんのご講演をお聴きしたいと思います。私も、それまで、少しでも、愛をもって、目の前にいる子どもたちに接していきたいと思います。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://cgi2.nhk.or.jp/cgiblog/tb.cgi/671