
NPO法人マミーズネット 恐るべし!

第1回の番組が放映され、少しホッとした。ただ、その半面で、取材時に「おおっ! これは紹介したい!」と思って取材したことのいくつかが、VTRで全てカットされているではないか。そこで、そのいくつかをこのコラムで紹介することにした。
今回はその第1回目。上越市のNPO法人マミーズネットの組織と運営の柔軟性についてである。
番組では、行政とNPOの連携・協力について取り上げているが、これがうまくいったことの背景に、マミーズネットの組織づくりや運営体制の工夫がある。
1.上越市こどもセンターができるまで
マミーズネットのすごいところは、行政にただ要求を突きつけるのではなく、提言をおこなうところ。現在の問題課題を整理し、それを解決するための具体的な提言を、とても細かいことから、大きな計画に至るまで、それぞれの場面で提起していたことだ。
番組にも登場した上越市こどもセンターも然り。
市内国道沿いの便利な場所にあった大型ショッピングセンターが撤退。その土地と建物をどう活用するかということが地元で話題になった。マミーズネットでは、あそこに子育て施設があるとよいね・・・という声があがったそうだ。それはやがて、実際どんな施設があったらよいか、という議論に発展する。
※こちらの図版はクリックすると拡大します。
アイディアをどんどん具体的な形にしながら、子育て施設の図面まで作ってしまい、その建設を夢見ていたところ、そのショッピングセンターの跡地を市が再開発することになったとの話が。
「ええっ!私達の場所が大変なことに!」(笑)
「いつの間にか、私達の話の中では、あそこは自分達の子育てのための場となっていました。夢が非常に具体的な『計画』として形になってきていたんです。」
と中條さん。
そこで、再開発の際に、自分達の想いを形にしてもらおうと市役所に電話をかけ、子連れでゾロゾロと市役所に向かったのだという。
子どもが使いやすいトイレ。
母親が会合を開きながら子どもを見守れる空間配置。
冬でも0~3歳の子どもが思いっきり走り回れる広場。
実際に親子が利用する場面をイメージしながら作り上げた提案は、新たな施設の建設とはいかなかったものの、子育て支援のための場を設置する形として実を結ぶ。そのアイディアは、設計図のあちこちに盛り込まれることとなった。もともとショッピングセンターだった建物でもあり、スペースも十分ある。行政とNPOとの連携により、使い勝手のよい施設が生まれた。
2.「井戸端会議」から提言が生まれる
インタビューをしながら、こうした企画提言力はどのようにして育まれたのか、不思議に思って聞いてみた。すると日ごろの井戸端会議のようなミーティングだという。
もちろん、この「井戸端会議」には工夫がある。ただただ、日ごろの不満や愚痴を言うのではなく、どうやったらよくなるかを積極的に提言し、問題を解決するための情報共有や提案をする「井戸端会議」をする、というのである。仮に誰かが不満や愚痴をいっても、「じゃあどうしたら良くなるか。みんなで考えよう!」という雰囲気になるとのことである。
「井戸端会議」のよいところは、最初から議題があり、議事の流れが決まっているわけではないところ。なんとなく話をする中で出てきた不安や悩み、ちょっとしたアイディアなどなど。これをどうしようか・・と話をするスタイルは、いつでもどこでも誰でも話ができるという柔軟性がある。気軽に発言し、そのアイディアをみんなでワイワイ話しながら、少しずつ育てていくというのである。
3.母親業との両立もできる、柔軟な参加の仕組み
もう一つ驚いたのは、組織のなかで緩やかな役割分担が作られているのだけれど、その関係はとても対等で、そのときにやれる人がやれることをやっていく!という柔軟な参加の仕組みが図られていることだ。
子どもを育てている母親達の集まりである。
次の子どもの出産時には活動にあまり参加できなくなる。
両親の介護が必要となり、活動を休止する人もいる。
夫の収入が減って、パートに出なくてはならない人も出る。
突然家族の具合が悪くなれば、その日の会合に出られなくなることもある。
こうした事情は誰もが抱えうるもの。そこで、特定の人が特定の役割を一人で担うことがないよう、数名で一つの業務にあたるという運営体制を取っているとのこと。
特定の人が大きな責任を取る仕組みにしておくと、その人の不在時に組織が回らなくなる。また、その人の意見が全体の組織運営を規定してしまうことにもなりかねない。
そうではなくて、いろいろな人たちの意見を集約し、それを一つ一つ具体化し、形にしながら、子育てしやすい環境を整えていくことが大切だというのである。
このように、柔軟な組織運営とコミュニケーションのスタイルを持つマミーズネット。市内にある数多くの子育てサークルと繋がりながら、情報の提供や集約を行いつつ、交流を図ったり、意見を行政に提起したりという、つなぎ役を担っている。
また、日々の暮らしのなかで孤立してしまったまま、本当に必要なサービスにアクセス出来ない人に対してアクセスしていくことを常に意識しながら活動を行っているとのこと。
マミーズネット、恐るべし!である。
この技をどうやって体得したのか。それはまた次の機会に。
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