
2010パラリンピックへの挑戦 「クロスカントリースキー」
2010年3月12日よりバンクーバーで開催される冬季パラリンピックに先駆け、活躍が期待される出場選手をご紹介していきます。今回ご紹介するのは日本選手団の主将を務めるクロスカントリースキーの新田佳浩 (にったよしひろ) 選手。パラリンピックには、長野から今回のバンクーバーまで、4大会連続の出場となります。
どこまでできるのかやってみたい
クロスカントリースキーは雪原のマラソンとも呼ばれ、登り下りの激しいコースを、スキー板とストックを使って滑走する過酷な競技です。
新田さんは3歳の時に事故で左手を失いました。右手一本でストックを押し、滑らかなフォームで進むのが持ち味です。
新田さんがクロスカントリーを始めたのは小学3年生の時。はじめて参加した大会で優勝するなど、すぐに頭角を現しました。しかし、中学生になると次第に勝てなくなりました。両手でストックを使う障害のない選手のスピードに追いつけなくなったのです。そして中学3年生の時、スキーをやめてしまいました。
「結果が出ないのがすごく悔しくて、これだけ頑張ってもダメだったら、やめちゃおうって思ったんです」
しかし、スキーをやめた新田さんを奮い立たせる出来事が起きます。テレビで見たパラリンピックで、新田さんと同じ左手を失った選手が活躍する姿を目にしたのです。当時世界最強と言われた、ドイツのトーマス・エルスナー選手。障害をものともしないスピードと力強さで数々の金メダルを獲得しました。
「同じ障害があっても、僕より何十倍も速く走っている選手がいることを知り、もう一回、自分が本当にどこまでできるのかやってみたいと思って、このパラリンピックを目指すようになりました」
再びストックとスキー板を手にした新田さん。17歳ではじめてパラリンピックに出場。2002年のソルトレーク大会では銅メダルを獲得し、日本のエースに成長していったのです。そして金メダルの大きな期待のかかった2006年トリノ大会。当時新田さんは25歳、肉体的にも円熟期を迎え、万全の仕上がりで挑みました。
しかし、スタート直後、悲劇は起こりました。力みからバランスを崩し、まさかの転倒。
「やっぱり平常心じゃなかった部分があったと思います。もう、金メダルだ、金メダルだって思い詰めていて、本当のパフォーマンスを出せなかった。すごく悔しいパラリンピックになりましたね」
仲間に支えられて
新田さんは敗戦のショックから家に閉じこもることが多くなりました。スキーを一度もすることなく毎日が過ぎ、引退を考えはじめた頃、言葉をかけてくれたのがスポーツクラブで知り合った仲間たちでした。自暴自棄になる新田さんを励まし、時には叱ってくれた仲間の存在が再び挑戦する勇気を与えてくれたといいます。
仲間に支えられ、再び金メダルを目指すことを決意した新田さん。練習に明け暮れる毎日ですが、辛いことがあっても今では心強い味方ができました。競技を通じて知り合った知紗子さんと2年前に結婚。いつも傍で支えてくれる妻の存在は、それまで一人暮らしを続けてきた新田さんに大きな変化をもたらしたといいます。
「落ち着きますね、やっぱり。走っている時は自分ひとりなんですけども、それまでにいろいろな方が僕を支えてくださっているので、そういう思いを持ちながら滑るようにしています」
祖父にささげる金メダル
岡山県北部、中国山脈に抱かれた西粟倉村。新田さんはここで代々続く米農家の長男として生まれました。
今年92歳を迎える祖父の達 (とおる) さん。障害と戦いながら世界に挑む孫の姿を複雑な思いで見続けてきました。
おじいちゃん子だったという新田さん。3歳の時、達さんが運転するコンバインに腕を巻き込まれ左手を失ったのです。達さんは孫の障害のことで自分を責め続けてきたといいます。
祖父 達さん
「田んぼで作業をしていた時やね。ああ、えらいことしたと思ってね。ほんまに憂鬱でしたよ」
パラリンピックで世界の頂点を目指す新田さんは、ある思いを抱くようになりました。「祖父の達さんに金メダルをかけてあげたい」。
「祖父の言動や行動から、責任を感じているなっていうのはすごく感じるので、僕はすごく申し訳ないっていう思いがあるんです。だから、"おじいちゃんは、最高のおじいちゃんだよ"って言ってあげることが、一番おじいちゃんにとっても嬉しいことなのかなって。バンクーバーでは、いい笑顔でおじいちゃんに金メダルをかけてあげたい。それが僕のひとつの夢の達成かなと思います」
最後にバンクーバーパラリンピックに向けての意気込みを。
「トリノの時に転倒してしまったところで、僕のパラリンピックが止まっているので、それを取り戻しに行く大会がバンクーバーでもありますし、止まってしまった時を刻む大会になると思います」
(2010年1月12日放送・福祉ネットワーク 「パラリンピックへの挑戦 第2回 クロスカントリースキー」 より再構成)




新田選手の不屈の闘志とおじいさんに対する深い愛情に強く、感動致しました。
是非とも、おじいさんに胸に金メダルをかけてあげて下さい。
応援しております。
新田選手、金メダルおめでとう!
夢がかなって本当によかったですね。
お祖父さんもお喜びのことだと思います。
本当におめでとう。
新田選手、二個目の金メダルおめでとうございます。「おじいちゃんにかけてあげたい」と言っておられたとおり金メダルを手にされたこと、本当に勇気づけられました。これからの人生もきっと不屈の精神で乗り越えられると思います。本当におめでとうございました。