
日本とイギリスでどう違う!? LGBTの人々をとりまく環境
1.なぜユース? なぜイギリス?
現在、日英LGBTユースエクスチェンジプロジェクトという、日本とイギリスのLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の若者を交流させようという企画が進行中です!
LGBTユースとは? レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーである10代から20代前半の若者、またこうしたアイデンティティがはっきりしなかったり、自分の性的指向あるいは性自認に悩んでいる若者のことをいいます。
自らの性のありようを肯定する助けとなる情報や人になかなか出会えない苦しみ、学校や家庭での多様な性に対する進まぬ理解。LGBTの問題を考えるうえでは多感な思春期の若者のためのサポートがまず欠かせないという当事者たちの共通した想いがあります。そこから発したのが今回の国を超えてのユース支援プロジェクトです。
なぜイギリスなの?それには、社会のなかのLGBT の人々に対する公のサポートが充実しているという背景があります。イギリスではあらゆる場において性的指向による差別を禁止する法律が制定され、シビルパートナーシップ制度により同性パートナーにも結婚と同等の法的権利も認められています。今回の取り組みはイギリス・ブリストル市役所のなかにある、ユース・アンド・プレイ・サービスというセクションの職員と、国際基督教大学(ICU)ジェンダー研究センターとのあいだで、「イギリスと日本のLGBTの若者の交流プログラムができないか」と話し合われたことがきっかけとなって生まれました。ICUは人権委員会が学内にあるなど、かねてより人権や性差別に対する取り組みに積極的なことで知られています。
なおブリストルはイギリス第6の都市。イギリスの主要な都市では、ロンドンを筆頭にこうしたLGBTの人たちの基本的人権を擁護する公的支援が充実しているということです。
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2.日本とイギリスの違い
こうした経緯の元、2008年5月18日に代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターでエクスチェンジ・プロジェクトの第1弾となる、ブリストル市役所職員と日本の若者グループによる、両国の現状を発表しあう会が催されました。
イギリスからはユース・アンド・プレイサービス課の職員が、日本側はLGBTの当事者の大学生が中心になって作るインカレ・サークル「Rainbow College(以下RC)」のメンバーが発表者として立ちました。
これは挨拶代わりのプレイベントで、本格的には8月、ブリストルから当事者の学生が来日し、2週間滞在するそうです。また09年には逆に、日本の若者がブリストルに滞在して、現地事情を肌で学ぶ予定だとのこと。
18日の発表内容ですが、まず日本側の発表。RCの遠藤まめたさんは「日本のLGBTの若者は多様な性に対する理解の低さから学校や家庭でいかに精神的に 追い詰められているか」を指摘。ゲイとバイセクシュアルの男性6000人を対象に行った2005年の調査(出典/日高庸晴ほか 2007 厚生労働省エイズ対策研究推進事業 ゲイ・バイセクシュアル男性の健康レポート2(※別ウインドウ クリックするとNHKのサイトを離れます)によると、 うち65パーセントが自殺を考えたことがあり、14パーセントが自殺を試みた経験を持つとのこと。岡山大ジェンダークリニック(注1)に性同一性障害で受 診した人たちに聞いた数字でも、「自殺で悩んだことがある」68パーセント、「不登校」4人に1人、「自傷・自殺未遂」3人に1人。また周りからのいじめ に悩んでいる当事者も多いといいます。
ちなみにRCはそうした状況から、人と情報の絆を結ぼうと2006年5月に始まったセクシュアルマイノリティの学生のための自主的な学校横断ネットワーク。そこにはいろんな大学の学生が参加し(あるいは大学生でなくても良い)、またゲイにもレズビアンにもバイセクシュアルにも、と開かれたコミュニティになっています。
次に、ブリストル市の職員による発表。発表に立ったバブス・マクフェイルさん、カズ・ウィリアムスさんのお二人は市職員としてLGBTユースをサポートしています。
ブリストル市は、「イクオリティーズ・ポリシー」として、gender(ジェンダー(注2))、sexual orientation(性的指向)、age(年齢)、race(人種)、faith(宗教)、disability(障害(注3))など個人の違いによって不利益や差別を受けることなく、すべての人が平等を達成するための指針を定めているとのこと。
またこの憲章にうたわれている平等への積極的な取り組みとして、LGBTの若者の支援グループ「Freedom Youth」という組織の運営サポートを行っています。ブリストル市においてLGBTユースのサポートに使われる予算は年間約2000万円であり、対象年齢13歳から21歳に向けた活動です。この場にはLGBTカウンセラーがいること、学校教師やユースワーカー向けのトレーニング・カリキュラムなども行っていること、「セルフヘルプ(自助)」を基本として若者自身が中心となり、LGBTについての知識を広めるためのブックレットやポスター、ウェブサイトなど情報発信を積極的に行っていることなどが話されました。
日本の参加者からは、「13歳という早い年齢のうちから知識・方法を学んでいける環境は羨ましい!」と、下限年齢の若さに注目が集まりました。
(この日のラウンドテーブルでも、できるだけ早い年齢の時点で、正しい情報にアクセスできるようにするためのツールや場をつくることの大切さに議論が集中していました)。
もっとも、そんな環境整備が進んでいるイギリスにおいても、性的少数者に対するいじめは激しく、イギリスのLGBTの人々の65パーセントが学校でいじめを経験しているということです。LGBTの若者にとって、国は違ってもやはり生きづらさは存在しています。
ブリストル市でのLGBTの人々に対する公共サポートが進められてきたのも、イギリスにおけるLGBTの人々の権利を保障する法制度の進展を反映しています。まず、1999年、職場におけるトランスセクシュアルの人々の権利を護ろうという呼びかけがなされました。2003年には、EUでの議決を踏まえて、職場で性的指向を理由とした差別を禁止する法律の制定がされ、その翌年にはトランスの人びとが自分の望む性別を公的に申請することができるようになりました。2005年には同性カップルに結婚と同等の権利を認めるシビルパートナーシップ制度ができ、2007年には、あらゆる場所で性的指向を理由に差別をすることが禁じられました(たとえば、ホテルでレズビアンカップルがツインの部屋を借りようとして断られたら法律違反となるなど)。このように、法整備が進められてきたことで、LGBTの人びとの生活もだいぶ変わりました。
しかし、環境を変えていくために、カズ・ウィリアムスさんが、もっとも大事だといっていたこと、それは「若者自身がプロジェクトの主導者となって推進していくこと」でした。そして、バブス・マクフェイルさんからこのプロジェクト、および日本のマイノリティの若者たちすべてに向けてのエールです。
「Never give up. Keep fighting!(あきらめないで。闘い続けて!)」
まだプロジェクトは始まったばかり。
ハートネットでは今後の経過もご紹介していきます!
(記事構成=編集部)
(注1)岡山大は1999年に、精神科神経科、産科婦人科、泌尿器科、形成外科が協力してジェンダークリニックを設立。ホルモン療法や性別適合手術を行っている。
(注2)社会的性役割や文化的な身体のとらえ方によって形成される性のありよう。また、自分の性別をどのようにとらえるかというアイデンティティ、主体の構成要素。
(注3)健常者にあわせてつくられた社会のしくみから発生する障壁や差別のこと。身体の器官や機能が損傷を受けていることからくる制約は、impairment(インペアメント)という。
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