
2010パラリンピックへの挑戦 「アイススレッジホッケー」
バンクーバー・パラリンピック特集、最後にご紹介するのは、アイススレッジホッケーです。日本代表チームの中でも中心的な選手として活躍が期待される選手、遠藤隆行さん。10年に渡ってチームを牽引してきた日本のエースプレイヤーです。
アイススレッジホッケーの"スレッジ"とはソリのこと。選手それぞれの障害にあわせて作られています。このスレッジに乗り、両腕の力だけでリンクを滑走します。氷上の格闘技と呼ばれ、激しいぶつかり合いで繰り返しゴールを狙います。日本代表の武器は小柄な体を活かしたこのスピード。中でも、チーム1、2のスピードを争うのが遠藤さんです。
遠藤さんは生まれた時から両足がありません。子どもの頃から体を動かして遊ぶのが大好きな活発な少年でした。遠足や運動会には車いすで参加。できる限り自分の力で、友人たちと変わらない学校生活を送ろうとしていたといいます。
「階段も、教室の移動も、自分で手を使って行わなければいけなかった。大変でしたけど、すべて足がないっていうことのせいにはしたくなかったです。足がなくても、やりたいことはやろうと思ったし、なるべく自分の力でやりたかった」
負けず嫌いの遠藤さんはスポーツでは同級生と競い合えないと、吹奏楽部に入部。サックスの練習に明け暮れました。
楽器をホッケースティックに持ち替えたのは、大学生の時。知人のすすめで試しにホッケーを始めた遠藤さんは、氷の上を自由に滑走する競技の魅力にとりつかれます。それまで周りとは違う自分の体に引け目を感じていたという遠藤さん。しかし、ホッケーで出会った仲間たちが、互いの障害を笑いながら話す姿を見て変わり始めたといいます。
「本当に強いなと思って。逆に、自分が弱いというのも思い知らされた。今まで自分の体にコンプレックスを感じていて、触れたくないって思っていたので、もう人生がガラッと変わるくらいの大きな転機だったと思いますね」
遠藤さんにはもうひとつ、ホッケーを通して大きな出会いがありました。たまたま練習を見に来ていた良子(よしこ)さんと知り合い、3年前に結婚したのです。さらに去年、新しい家族が増えました。息子の大誠(たいせい)くんです。
遠藤さんにはパラリンピックでメダルをとって、大誠くんに伝えたいことがあります。それは、自分が自信をもてる何かを見つけることの大切さです。
「自信って、"生きる力"ですよ。友達に自慢できるお父さんになりたいなって思いますね。あとはやっぱり、息子にメダルを見せてやらないとっていうのもあるので。息子の存在が力になります」
スピードで世界の強豪と肩を並べる遠藤さんですが、これまで出場したパラリンピックではメダルを獲得できませんでした。2006年に開かれたトリノパラリンピック。遠藤さんはキャプテンとして出場しました。日本代表はスピードを活かした攻撃を仕掛けましたが、体格で勝る外国人選手にブロックされ、ゴールにつなげることができず、結果は8カ国中5位。
スピードだけでは世界に立ち向かえない。得点力不足を解消し、メダルを獲得するためにはどうすればいいのか。バンクーバーでは新たな戦略で立ち向かおうとしています。敵陣のゴール前でスペースをつくり、そこに飛び込みゴールを狙う。それは日本人選手がもつスピードを最大限に活かすための戦略です。この新しい戦略に、遠藤さんは手応えを感じているといいます。
「自分が相手選手を引きつけて、たぶんそこで痛い思いをすると思うんですけども、僕が厳しいボディチェックを受けて、仲間を活かすというのが、自分に求められていることだと感じています。パラリンピックではメダルを持って返れるように、がんばりたいと思います」
(2010年2月4日放送・福祉ネットワーク「パラリンピックへの挑戦 第6回 アイススレッジホッケー」より再構成)
コメントを送る



