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ハート ネット ピープル

肉親をみとるとき

がんになった母との日々を綴ったドキュメンタリー映画『チーズとうじ虫』。ビデオを撮ったのは娘であり、映画監督の加藤治代さんです。


[写真] 母ナオミさんについて語る加藤治代さん。

「最初お医者さんに母の命は余命1、2年と言われた。しかし3年目になり、もしかして奇跡が起きて治るかもしれないと思って、カメラでずっと撮ってみようとしたのがきっかけです」

がんと聞いて想像しがちな闘病記録や涙はこの映画にはありません。ナレーションもなく、母のナオミさん、祖母のフクさん、治代さんが暮らす実家の何気ない日常が日記のように続いていきます。

たとえば、がんの保険金で新車を購入するシーン。ナオミさんは家族の楽しみのためにそれを使ってしまいます。
「母らしいと思いましたね。気持ちをおちゃらけてしまうようなところがあった。楽しくやらなきゃって。自分で自分を励ますような感じだった」

しかし次第にがんは進行し、ナオミさんは衰弱していきます。

「3年間撮り続けて、最初は病気が治るという奇跡を期待して始めたのに、いつしか、だんだん理由を見つけられなくなっていた。そんな矢先母が急になくなってしまい、逆に終われなくなった」


[写真] 病床でも明るく笑って見せるナオミさん。(『チーズとうじ虫』より)

ナオミさんが亡くなって病院から戻ったときもカメラは回っていました。
「あのときは泣きながら。いろいろしなければいけないこともありましたからくたくたでしたが、撮らなければと思った」

このシーンでは、孫がけげんな顔でナオミさんの死に顔を見ていたり、死と生というものの対比が際立って見えます。

「こういう風に家族って循環していくのかもしれない」


[写真] ナオミさんの死に顔をけげんそうにじっと見つめる孫。(『チーズとうじ虫』より)

母のために戻った故郷。しかし、加藤さんはその後もこの地で暮らし続けることにしたと言います。

「それまで東京でいましたが、看病をきっかけに実家に帰った。そこで母と祖母と3人で暮らすようになって『あ、幸せ』ということに気づいた。たとえば母がご飯をたくさん食べたとか、そんなちっぽけなこと。でも抗がん剤の副作用でご飯を食べられなかったのを見ていたから。幸せというのはこういう特別なものではないんだなと、見えてきた気がします」

(2006年10月3日放送 福祉ネットワーク「肉親をみとるとき?映画『チーズとうじ虫』より?」より再構成しました)


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